いよいよディスタード本土軍に対する包囲網が完成することになった。
それはその日にクラウディアスとアルディアスの間で会議が行われたことで決まった内容である。
その会議で決定したことは3つで、1つ目はクラウディアスとアルディアス間の交易の再開、
ここへきて、ようやくアルディアスの大使館が本格的に機能し始めることとなるのである。
そして、それにより、クラウディアスとアルディアス間の渡航も制限なく行われることになり、
自由に行き来できるようになる。
2つ目はティレックスが抱えることになった案件で、
アルディアス側から友好の証としてソルジャー・アイリスを贈ることになったこと。
それについては事前にアルディアス側から国レベルで話をしていたこともあり、
それならばと、クラウディアスからも花を贈り返すことで話をつけていた。
当初、アルディアスとしてはとんでもないと一度は断ったものの、
友好の証だからということでこれを快諾、各々、両国間における友好のシンボルとなった。
3つ目はディスタード本土軍を包囲するための協力体制である。
これについては、クラウディアス側としてはグレート・グランドとルシルメア、
そして、セラフィック・ランドからも協力も得られるということで話をつけているため、
それにアルディアスも便乗することになった。
そして後日、そのディスタード本土軍を包囲するための会議がクラウディアスの議会場で行われることとなった。
主催国はもちろんクラウディアスで、国家元首である女王エミーリアを筆頭に、
特別執行官であるリリアリスとアリエーラが現れた。
エミーリアはいつもの可愛らしいおしゃれな服装ではなく、今回ばかりは可愛らしいドレスに着替えさせてもらっていた。
そして、その側近の2人もエミーリアに合わせたようなドレス姿となっていた。
それを見たレミーネア、議会場を見学に来ていた彼女は言った。
「エミーリア1人じゃあ心許ないけど、あの完璧な2人のお姉様がいれば本当に安心よね」
「エミーリア姫、がんばってー!」
同じく、見学しに来ていたフラウディアは小さな声で応援していた。
なお、リリアリスとアリエーラの2人もいつもながらかなり決まっている点では誰もが圧倒されていた、
それは別に、今に始まったことではないのだが。
話を続けよう。
続いて、セラフィック・ランド連合国より、連合国代表代行のグラト氏の補佐アディオ氏と、トライス自治区の局長であるカルディオ氏が現れた。
どちらもどこかの聖職者というか、法衣服みたいな服装に身を包んでいた。
「言ったらなんだけど、連合国代表代行補佐とかすごい微妙なポジションだな――」
アーシェリスはそう言う、スレアが答えた。
「連合国代表であるダレイトス氏はスクエアにいたからな、つまりはセ・ランド消滅事件で消えてしまった。
グラト氏も消えてしまっていることが判明しているが、グラト氏についてはクラウディアスとはとても関係が深くてな、
ダレイトス氏以上にクラウディアスとは掛け合っているようだ、まあ、この会についての担当という感じだな。
で、ついでにわざわざセ・ランドの一行政区の局長であるカルディオがいるのもそういった事情のため付添人として駆り出されたというところだろう」
そう言われたアーシェリスは頷いていた。
セラフィック・ランドはセラフィック・ランドでまた大変な問題を抱えているというわけである。
次にやってきたのは学術都市ルーティスのナミス市長と、ルーティス学園副理事長のガルノスがやってきていた。
ナミス市長はビジネスレディースフォーマルな服装で、ガルノスもセラフィック・ランドと同じく法衣服みたいな服装だった。
ルーティスはセラフィック・ランドと近く、文化的にも似ているところがあるため、似たような服装になってもおかしくはない。
さらに、ルーティスについてスレアが説明していた。
「ルーティスは特別独立自治区だからな、実際にはディスタードのガレア軍に保護されている状態だが、
ルーティスはどこの行政にも属さずに独立した国としての運営が認められている国だ。
こういった形態の国はこの辺りだと他にもケンダルスがあるけれども、あそこは参加していないみたいだな」
その説明に対し、ラシルが納得しつつ、さらにスレアに訊いてきた。
「ガルノス”副”理事長なんだな」
「ルーティス学園の理事長エズラルドはセ・ランド消滅事件の折にダレイトス氏と一緒にいたことが分かっている、
つまりはそういうことだな」
そして、グレート・グランド国より、バルティオスの城主、リオーンがやってきた。
一緒にいるのは大臣オルテロスとティルア自衛団のリーダーであるクラフォード、そしてその前任者であるバフィンスだった。
服装はいずれもいつもと同じ服装であり、オルテロスはやはり法衣服だが、他の3人は戦闘服だった、せめてこういう場ぐらいは――
「なーんか、あの3人がいるのは場違いな気がするんだが――」
アーシェリスはそう言った、3人というのはリオーンとバフィンス、そして、クラフォードである。
言わんとしていることはわからなくもない。
「俺もそう思うが、まあ、会議の内容に期待しておこうか――」
スレアも同意見だった。
それから次は、ルシルメアより大統領のリカルドと国務長官のライザース、
そして、F・F団のリヴァストとララーナが一緒にいた。
服装はララーナについてはプリズム族スタンダードな服装として袖の短いトップスにスカートという通称”プリズムドレス”を見にまとっているが、
それ以外はルシルメアの様式か、ローブ姿での登場である。
ただ、その中で気になるのはやはりリヴァストの存在――
「なんだよあいつ、単なるレジスタンスの一部という割に案外えらいやつなのか?」
アーシェリスは驚き気味にそう言った。
「ま、まあ――一応はルシルメア独立の立役者っていうぐらいだから、やっぱりそういうことなんじゃないのか?
それよりも何故プリズム族のララーナさんがいるのかってところが気になるな。
ルシルメアの連中たって、いくらなんでも彼女らの存在は把握しているわけじゃないんだろ?」
フェリオースはそう言うと、スレアが言った。
「多分、F・F団の一員っていう体で来ているんじゃないのか? リヴァストの補佐役的な。
それは表向きで、彼女らというか、ララーナさん自身が世界の行く末について物申したいとか、そういうことじゃないのか?」
そして、今度はアルディアスサイドの人間が入ってきた。
アルディアスからは国家元首たる大統領のローザンドと国務長官のナイシェルが登場した。
服装はどちらもビジネスフォーマルな服装である。
そして、それに続いてルダトーラ・トルーパーズの団長前任者であるレンティスと、現団長のティレックスがいつもの戦闘服で――
「あいつ、いつの間にか偉い人になっていたんだな――」
アーシェリスは茶化すようにティレックスに対してそう言った。
「だけどあいつ、ガチガチに固まってるぞ。本当に大丈夫か?」
スレアは他人事だと思いながらそう言った。
アーシェリス、フェリオース、スレアの3人は内心でははらわた煮えくりかえるほど笑い転げていた。