そして、会議の後、アルディアス側は会議システムを切断、
ティレックスは戦術会議と称してオルザードたちを会議室からなんとか追い出しつつ、
残りのメンバーで話を続けていた。
「そうか、ルダトーラの団長殿も、クラウディアスにはそれぐらいのことをしないとと思ったってわけだ。」
と、アール将軍こと、リファリウスがそう言った。何のことだろう、ティレックスは訊いた。
「なんか、ダメだったのか?」
「いや、ダメってわけではないんだけどさ。むしろ、気持ちはありがたいんだけどさ――」
それに対してティレックスは訊いた。
「なんか、やたらとクラウディアスを支援したいみたいな感じだったけれども、何かあったのか?」
リファリウスは答えた。
「実はね、アルディアス側から何度も何度も支援がしたいとの申し出を頂いていたんだけれども、
言ってもこっちはそんなに大した状態になっているわけでも……クラウディアス内で収束できるレベルだから、
それで断ったんだよね、アルディアスだってそれなりに大変なんだしさ。
でも――そしたら一旦持ち帰って何かできないか検討するっていうもんだから、もはやお手上げだよ。
で、仕方なく、この案件は姉さん面倒くさがって私にぶん投げたってわけだ。」
そして、ティレックスとしてはここからが肝心な話である。
「とはいえ、私としてもどうしていいのか困ってね、
それで結局、どうすべきかをルダトーラの団長であるキミの意見を聞いてどうするかを決めることにしたんだ。」
自分でどうするか決められないからって他人に決めさせるとはひどいやつだ――ティレックスはそう思った。
だけど、リファリウスのことを考えるといつものことなので――またしても”してやられた”とティレックスは思った。
「一旦案件を持ち帰って会議で決めるのだろうなと思ったから、
今日の会議の行く末を見てから悩むことにしようと思ったんだけれども、まさかキミがその担当になるなんてね。」
ティレックスは自分の頭を両腕で抱え、掻きむしるように悩んでいた。
「まったくだよ、なんで俺が考えないといけないんだよ、クラウディアスは要らないって言ってるじゃんかよ――」
リファリウスは説明した。
「クラウディアスとガレアとは裏向き関係が深いこと、
ガレアはディスタード・マウナ軍を退け、クラウディアスは本土軍を退けたこと、
ラヴィス島をクラウディアスの協力のおかげで奪還できたことなど――
まあ、そういった要因もあって、クラウディアスにはどうしてもお礼がしたいし、
そして、なんらかのいい形で関係を持ちたいっていうところだろう、彼らの態度はまさにそんな感じだったね――」
そのため、クラウディアスに対してとにかくよいしょしたいという態度があからさまだったそうだ。
でも、そうなった背景はクラウディアスがこれまで長いこと国を閉じていたこともあるかもしれないとリファリウスは語った。
「で、ならば聞くんだけど、そもそも支援が要らないという国に対して何かをするんだったらどういうのがいいんだ?」
と、ティレックスは出し抜けに訊いた、今回のティレックスについては最も大事になるところである。それに対し――
「さあ? 特に要らないって言っているんだから気持ち的なプレゼントでいいんじゃないかな?」
なんだそれ、ティレックスは呆れていた。
「プレゼントなんて、そんなんでいいのか?」
リファリウスは答えた。
「十分だ。なんだったら私が指定したっていい。それこそ、花が一番いいんじゃないだろうか。」
そんな、花って――ティレックスは安直すぎやしないかと反論した。
「そんなことないよ。
今、クラウディアスは各所に花を植えて土地を整備するプロジェクトの真っ最中だろう。
だからどうしても手伝いたければ、それに狙いをつけてくれればいいんじゃないかな。」
そう言うと、リファリウスはテキトーなあいさつを言いながら会議から抜けた。
それと同時にガレアも会議から抜けた。
「なあティレックス、俺ら、全然一言も発していなかったけどよかったのか?」
レイガスはそう訊ねるとティレックスは言った。
「ん? ああ、別にいいんじゃないのか?
それはそうと、聞いての通り、クラウディアスさんは花をご指名だ。
といっても俺、全然花なんか詳しくないから、どうすればいいんだ?」
「花に詳しそうな女性陣に訊いてみるか、花という点を踏まえたうえでアルディアスと相談するか。
もしくは、そっちはむしろ重鎮が女性だらけなんだろ?
いずれにせよ、そこまで訊いたのなら直接どんな花がいいのか訊いてみればいいんじゃないのか?」
確かに、ここまで訊いたのだからそれもありかとティレックスは考えた。
会議が終わり、ティレックスはリリアリスの元へと向かった。
「話は聞いたわよ。」
まさか、もう会議の話がこの人の耳に入ったのか、ティレックスはそう思うと、彼女は妙なことを口走った。
「そんなの気持ちだからさ、お花屋さんにデート用にって適当な花を見繕ってもらえばユーシェリアだって喜ぶと思うわよ。」
は? なんか違う話になっている気がしたので、ティレックスはリリアリスに訊いた。
「あれ? ユーシィにプロポーズするために渡す花を考えてるんでしょ?
いいわねえ、お姉さんもなんだかすごく羨ましくなってきたわねえ。」
あのリファリウスのヤロー、今度会ったら絶対に殺す――そう思ったティレックスだった。
とにかく、なんだか誤解というか、この人たちの伝言ゲームが間違っているようなので、
ティレックスはきちんと正した。すると――
「あっははははは! 冗談よ冗談! わかってるわよ、本当はクラウディアスに花を贈与したいって話でしょ? ゴメンゴメン――」
おい、冗談かよ、本当に勘弁してもらいたかったティレックスだった。
「どうせだったらアルディアス産のソルジャー・アイリスにしたらどう?
さっきも言った通りそういうのって気持ちだからさ、
だったら自分のところで作っているそれを”この花、どうです?”ってな感じで見せることにすればいいんじゃないのかな?」
ソルジャー・アイリス……ティレックスは悩んだ。
名前にソルジャーの名を持つとおり戦士の花ではあるのだが、
この名前が使われる背景として戦死した者に手向ける花として使われるからでもあった。
「そんな花をクラウディアスに贈るなんてどうもな。
そういえばガレアでもその花を植えていたみたいだけど、そんなにいいか?」
リリアリスは答えた。
「少なくとも私は好きだな。
何というか、ソルジャーって言う通り、勇ましくもあり、そして、花としての美しさもちゃんと兼ね備えてて――」
すると、そこへアリエーラがやってきた。
「あら、お取込み中でしたか?」
いや、そんなのとんでもない、2人はそう言うと、アリエーラも話題に引き入れた。
「ソルジャー・アイリスですか?
私も好きですね、勇ましくもあり、花としての美しさも兼ね備えてて――」
同じことを言うのか、ティレックスはそう思った。
「今でこそ戦死者に手向ける花になっているけれども、
ユーシィに聞いた話だと元々は戦地に赴く者に”はなむけ”をするほうの手向ける花なんでしょ?
だから、クラウディアスの戦士たちのために、そして、犠牲になったディスタード軍の戦士たちの弔いの意味を込めてもさ、
その花を贈るということでいいんじゃないかしら?」
そう言われると――ティレックスはリリアリスに言われた通りにした。
「まったく、面倒な事になったわね――」
「でも、アルディアスさんからのその話って蹴ったのでは?」
「蹴ったんだけど、ティレックス君がどうしてもって言うからしょうがない、
可愛いユーシィの未来の旦那が言うもんだから、お姉さんたちも根負けしちゃってね。」
「だから未来の旦那言うのやめろ」