エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第6章 連合軍の作戦

第160節 アルディアス軍の作戦

 数時間後、ティレックスはアクアレアの様子を見つつ、アルディアス大使館へと向かっていた。
「どうも、お疲れ様です、ティレックスさん!」
 大使館に入るとすぐさまオルザードがやってきて、ティレックスを促した。
「まあ、とにかく話をしようか」
 ティレックスはそう言いながら、2人は会議室へと入っていった。 それに続いてオルザードの部下が2人ほど入る。
 そして、会議室の扉を閉めると4人は着席、さらにオルザードは会議室卓上にある電話会議システムを起動した。 そこで、いろいろと操作し、
「アクアレア、入りました――」
 と、オルザードは声をかけると、声が返ってきた。その声の主は、
「やあどうも、アール入ってまーす♪」
 つまり、アール将軍である。
「どうも、アール将軍! 今はガレアですか?」
 オルザードは訊ねると、アールは答えた。
「ううん、今は単独行動だから、私とは別にガレアが参加予定だね。」
「なるほど、わかりました!」
 オルザードはそう言うと、マイクをミュートにした。 しかし、ティレックスはミュートを切ってアールに訊いた。
「あのさ、それよりもあんた、何やってるんだ?」
 だが、それに対してあらぬ回答が――
「私のことよりも、彼女にプロポーズするためのプレゼントをちゃんと考えたのかな?」
 だからなんでそんな話! ティレックスは焦りつつ、ムキになってそう返した。
「わはわはあはは、全員揃う前に話してよかっただろう? まあ、その様子じゃあまだまだって感じだね。 だけど、ユーシィさんは可愛いし、いい子じゃないか、射止めるんなら早めにしておかないと、誰かに先を越されちゃうよ?  んじゃ、後ほど――」
 そう言いつつ、アールは一方的にマイクをミュートにした。 それに対し、ティレックスはマイクをミュートにしつつ、アールに対して殺意を抱いていた。
「あいつめ――今度会議システム上でそんな話したらぶっ飛ばしてやる――」
 会議システム上でなくてもぶっ飛ばす予定ではなかろうか。それに対してオルザード、
「まあまあまあ、我らが偉大なる神エンブリスのもとに愛する男女が結ばれるのなら、 これほど素晴らしいことはないでしょう!」
 またややこしいのが話に――ティレックスは頭を抱えていた、彼の悩みは尽きない。

 数分後――
「もしもし――、こちら、アルディアスのニシカです」
「こちら、ルダトーラのレイガス入りました」
 会議システムにアルディアスとルダトーラが参加してきた。
「ニシカさーん! レイガスさーん! こちら、アクアレアのオルザードでーす!  既にアール将軍もおりますので、残るは――」
 すると、
「皆様お疲れ様です、ただいまガレア、入りました――」
 と、ガレアも入ったようだ。今の声はラミキュリアの声であることにティレックスはすぐに気が付いた。
「やあお疲れ、ラミキュリアさん。 始める前に業務連絡で申し訳ないんだけれども、ジェタさんいるかな?」
 アールはそう言うと、ジェタは返事をした。
「さっきメールした件なんだけれども、ティルアからの返答で”一旦待ってくれ”って返ってきたんだ。 だからちょっと申し訳ないけれども、とりあえず保留にしといてくれないかな? また後でメールし直すよ。」
 それに対し、ジェタは「承知いたしました」と返事をしていた。 そのやり取りに何やら大変なんだなとティレックスは思った。
「さて、話をいきなり脱線して申し訳ないけれども、そろったみたいだし、さっそく始めようか。」
 アールがそう言うと、オルザード、ニシカ、レイガス、そしてラミキュリアの4人は、それぞれよろしくお願いしますと言った。

 各々の拠点で会議資料を配布し、そして、会議はちゃくちゃくと進めていった。
「ところで、アクアレアはどのような状況でしょう?  クラウディアスさんにおいては先の戦いでかなりの被害を受けたと伺っておりますが、実際、どんな感じでしょうか?  クラウディアス特別執行官様におきましては毎度のように”大丈夫だ、問題ない”と仰られているのですが、 こちらとしては心配でしてね――」
 と、アルディアスからの問いが。 だが、クラウディアス特別執行官様といえば――そもそも一緒に会議に参加している人がいるんだが…… そう思うと、ティレックスは複雑な心境だった。 しかし、そう言った事情を一切知らない者については何それとなく話をしていた。 問題の問いに対して、オルザードは答えた。
「はい、町のほうは全く被害はありません。 アクアレア・ゲート付近、および、各ゲート付近での戦いが主となりましたが、 いずれもそれほど被害を受けているようではないようです」
「戦術的にはどうですか? クラウディアスの防衛の観点として、どのぐらいの情報を把握していますか?」
 ティレックスが答えるべき内容がいよいよ来たようだ。 しかし、やっぱりクラウディアス特別執行官様がそこにいるため、ティレックスは言葉に詰まっていた。すると――
「どうしたんだね、ティレックス君!  何も気にせず、ただ正直な気持ちで答えればいいだけだよ。 恐れることはない、キミが思った通りのクラウディアスの状況を素直に話せばいいだけなんだよ。」
 と、正体がそのクラウディアス特別執行官様であるその人がはっきりと言った。 当人はそう言うが、ティレックスはそれでも少し悩んでいた。 しかし、そのままでいても仕方がない、ティレックスは少々遠慮がちに、それでもなんとか答えることにした。
「……クラウディアスの被害総額的には流石にそれなりに出ているようですが、 これについては、クラウディアスさんとは情報を一部のみ開示いただけるということで話を付けました。 ついては次回のクラウディアスさんとの話し合いの場で開示いただけるとのことです」
 ティレックスは緊張しながらさらに話を続けた。
「クラウディアス・フィールド・システムの損傷については0%と伺っておりますが、 自己修復機能を搭載しているため0%を実現可能にしているようですので、ゲート自身には問題はないと思います。 確かに、私目で確認してもフィールド・システムもゲート広場も特に問題ないように思います。 はっきり言うと、クラウディアスの技術力はディスタード帝国に接見するほど、いや、 帝国をも凌駕する技術力と思います」
 それに対してアール将軍はどんな気持ちで聞いているのだろうか、 ティレックスは少し得意げな感じだった。それに対し、アルディアス側がさらに訊いてきた。
「人のほうはどうです?」
 人間のほうは――ティレックスは言った。
「詳しいデータについては次回のクラウディアスさんとの話し合いの場で出していただけるということですが、 流石に怪我人は出ており、重軽傷者も多数いますが――」
 しかし、それに対してアルディアス側、後ろで控えていたお偉方が――
「何!? やはり死傷者が多数でているというのか!  クラウディアスさんも人が悪い、ちゃんと言ってくだされば、こちらとしても全面的に――」
 ティレックスは遮って言った。
「いや、あの、死人は全く出ていないそうです、確かに重傷者はいますが、いずれも命に別状はないということです――」
 とはいえ、アルディアス側としては――
「だからといって流石にそうはいかんだろう。 こちらとしてもきちんとクラウディアスさんを全力で支援するのだ、そうだろうルダトーラの団長殿!」
 そうまで言われると、ティレックスは「はい」と言わざるを得なかった。