エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第6章 連合軍の作戦

第159節 クラウディアス軍の作戦

 リリアリスは次の作戦をティレックスに見せることにした。
「次はこんな感じの作戦、既にガレア軍にも伝えていて、どう実現するか検討しているところよ。 前と違って全力で叩き込む作戦でいるけれども、敵戦力もすでに衰えているハズだから以前と比べれば少し控え目よ。 ただ――敵もこういう時に備えて最期の悪あがきというか隠し玉を持っているハズだから、これが予定通りに行くとは限らないけれどもね。」
 リリアリスはモニタに映し出されている次の予定である”チャート”というものを、 実際に動かしてティレックスに軽く説明していた。 それに対し、ティレックスは指摘した。
「これはなんだ? 本土軍からクラウディアス側とガレア側とアルディアス側のそれぞれに出港しているこれは?」
 リリアリスは答えた。
「これが本土軍の隠し玉のつもりよ、実際にはどれか1つを考えているけれども、 3つあるのは最悪または、どれが来ても大丈夫なように想定してのことね。 長距離用の主砲を搭載した船を考えているんだけれども、 これまでの例ならそれぐらいのものがあってもおかしくはないかなと思って。 ガレアの場合は既にその対策はされていて――というか、 場合によってはガレアを放棄する予定でいるから、それはもうみんなで覚悟を決めているところね。」
 ガレアを放棄だなんて――それに既に覚悟をしているとか、なかなか穏やかでない計画だった。
「でも、実際、ガレアに向けてやってくる可能性は低くて、来るとすればクラウディアスにやってくる可能性が濃厚ね。 なんといっても連中の狙いはやっぱりクラウディアスなわけだから、戦力が衰えているのによそ見している暇はないわよね、 それこそ、向こうとしてはクラウディアスさえ取れば力を改めて確保できると思い込んでいるわけだから、 やっぱりクラウディアスを狙ってくるのは当然なワケよ。」
 そうまでしてクラウディアスを狙ってくるのか。 改めてになるけれどもそれはどうしてなんだろうか、ティレックスは訊いた。 それに対してアリエーラが答えた。
「一つに召喚壁、つまり、力のパワーソースとなる”幻界碑石”があるからですね。 そして、クラウディアスは資源が割と豊富な国です。 これだけのリソースがある国はこの辺りでは結構珍しいですし、 それこそ大昔はクラウディアスを狙っている国は多かったハズです。ですが――」
 クラウディアスは強国、強力なリソースがあるせいで敵対する勢力はなすすべなく敗北していく。 結局、クラウディアスと友好関係を築く国のほうが多く、狙う国は少なくなっていったというのが実情だったという。 そして時代は変わり、新たに我こそはと声を上げてクラウディアスを進撃することを企てたのがディスタード帝国である。
「そんな時代背景があるにも関わらず、ディスタードはクラウディアスを攻めようとしているわけか――」
 ティレックスがそう言うとリリアリスは答えた。
「まあ、ディスタード帝国自体がよその国を攻めるべきとクーデターを起こしてまで成立している以上、 後には退けなくなっているのかもしれないね。」
「止める人はいないのだろうか?」
「止める人がいるぐらいならランスタッドが解体した時、マウナが解体した時、 そして、本土軍自身が数年前にクラウディアスに攻めて負けた時に辞めているハズなんだけれどもね。 私らが関与していないランスタッド以前の話についてはともかく、 他はディスタード帝国に対しては徹底的にけちょんけちょんにしてやったハズだから、 その反省を生かす意味でも帝国自体解体したってバチは当たらないもんなんだけれどもね。」
 ティレックス的には、いつもいつも感心するリリアリスのこの異常な行動が不思議でならなかった、 大帝国を徹底的にけちょんけちょんにするような行動を――。

 ティレックスはふと思った、そう言えば、リファリウスからこんな話を聞かされたことがあった。 それは、”戦争はゲーム”から端を発する話である。
 ”戦争はゲーム”というのは戦争を行おうとする権力者たちの考えであり、 実際に戦地に送り込まれる者や、戦争が行われる現地の者たちにとってはたまったもんじゃないということから、 この世に戦争というゲームほどバカバカしいものはないという話で締めた話題である。
 そんなバカバカしいものについて、リリアリスはどう考えているのだろうかティレックスは訊いた。
「まあそうね、確かに、戦争というゲームほどバカバカしいものはないわよね。だけど私の行動を見てよ――」
 彼女が今、これからディスタード本土軍を攻めるためのプランを立てているのである。 それこそ、最悪、ゲーム感覚と捉え兼ねられない行為である。
「私がやっているものこそ、まさにそのバカバカしい行為そのものよ、皮肉なもんだけどね――」
 そっ、そんなこと――ティレックスはそう言うが、リリアリスは首を横に振った。
「同じことよ、それこそ、あなたたちの国を含むいくつかの国を巻き込んでいるし、 ディスタード本土にだって、本来なら巻き込まないでもいい一般人がいるハズなのよ。 つまり、私がやっている行為も結局は誰かに非難されても仕方がない行為ってわけよ。 何をどう繕おうとも、そういう行為であることには変わりはないわね――」
 さらにリリアリスは続けた。
「だから私は――作戦の責任者の一人として、直接戦うことを選ぶのよ。 この作戦で他の誰かが手を下すんじゃなく、私自身が直接手を下すつもりよ。 言っても、当然、1人でかなえられる作戦なワケないからさ、 誰か信頼できる人にもお願いして一緒に戦ってくれる人を募るのよ。 もちろん、誰もいなければ、その時は――」
 それに対して、アリエーラが言った。
「そんなことありません! リリアさんが行くのなら私も行きます!  1人で行くなんて無茶言わないでください!」
 さらに、城内のほうから4人ほど出てきた。
「ここまで私らの面倒を見ておきながら――それは流石に反則じゃないかしら?」
 フロレンティーナがそう言うと、フラウディアも続けざまに言った。
「そうですよ! それに、リリア姉様の作戦だったら誰だって賛同するに決まっています!」
 そして、スレアが言った。
「なんだ? もう作戦はできたのか? だったら早いところ教えてくれよ。 アンタの作戦はいつもうまくいくからな、安心して実行できるってもんだ」
 最後に、フィリスが話を締めた。
「だそうよ。ま、そんなワケだから、水臭いのは抜きにして、リリアはいつも通り得意げにしていればいいのよ」
 みんな――リリアリスは感動していた。そして態度を改め、フィリスの言う通りにした。
「そっか、みんな、私に期待してくれていたんだ。 じゃあみんな、私についてきなさい! 当然、大船に乗ったつもりでね。」
 それに対し、ティレックスは思った――この人に任せておけば大丈夫だろうと。 そう、ティレックスもまた、彼女に救われ、そして彼女を信頼している一人なのだ。
「大船はどうやら余程の豪華客船らしいわね、次はマダム・ダルジャンIIIかしら?」
 フロレンティーナが嬉しそうに言うと、リリアリスの態度は得意げだった、 なんだこの2人の謎のノリは、フロレンティーナはマジで第2のリリアリスとか言わないだろうな――男性陣は危惧していた……。 かなりの美人さんなのに、そうなったら至極残念である。