エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第6章 連合軍の作戦

第158節 第2のリリアリス

 その日、フロレンティーナは上機嫌で帰ってきた。
「ただいま♪」
 フロレンティーナはリリアリスに抱えられながらテラスの5階に戻ってきた。
「まったく、世話の焼けるお姫様だこと。」
 リリアリスのセリフはやっぱり得意げだった。
「それで、デートはどうだったの? フェライトっていい子でしょ。」
 リリアリスがそう言うと、フロレンティーナははぐらかそうとした。
「ちょっと! 何言ってるのよ、リリアったら!」
 しかし、フロレンティーナははっと気が付かされた。
「あーっ! そっか! そういえばフェライトに私の居場所を教えたのってあんただったわね! つまりはそう言うこと!?」
「ふふっ、大正解。 なんだかやたらとあんたのこと気にしていたから、好きなんでしょって聞いたら案の定そうだったみたいでさ。 どうせだからそのまま相談に乗ってあげたってワケよ。 まあ、自分の思ったことをそのまま伝えればいいんじゃないかって思ってさ、背中を押してあげただけよ。」
 しかしその割には――フロレンティーナは話をした。
「あらら、やっぱりそうだったのね、 だってフロレンティーナみたいなタイプの女性に告白するのってずいぶん勇気がいると思うよ。 言ってしまえば遠い世界にいる女優みたいな印象あるじゃない?  そんな女相手に、”俺はお前のことが好きだから付き合ってください”なんて言えると思う?」
 そんな、自分がそんな印象の人間とは――フロレンティーナは得意げだった。
「私ってそんな? 上等じゃない。でもさ、それってさ、リリア、あんたもいい線いってると思うよ?」
 それを聞いたリリアリスはもっと得意げだった。
「ええ、もちろんよ。私は大女優だからそりゃそうよ。 そんな私が言うんだから、あなたは見込みのある女であることはまず間違いないわね。」
 フロレンティーナは呆気に取られていた。
「……上には上がいるってわけね、参ったわ、降参よ。 リリア相手ならそう言われたら素直に降参するわ――」
「えへへへへ♪」
 クラフォードはそれを見ながら何の話だと思っていた。

 その後、フロレンティーナとフィリスがリリアリスの話をしていた。 そこへクラフォードが気になって話をしに来た。
「なあ、ちょっといいか?」
 なんだろう、2人は訊くと、クラフォードは話をし始めた。
「いや、俺の思う女同士の間柄って、結構衝突があるのかなと思ってな。 それこそ、リリアリスとフローラさんって、喧嘩しそうな気がするんだが。特にさっきの話し合いとか――」
 それに対してフロレンティーナから苦情が。
「何よ、なんでリリアばっかり呼び捨てなワケ? 私も呼び捨てにしなさいよ、クラフォード♪」
 最後はなんだか楽しそうだった。ここの女性陣は――クラフォードは心中複雑だった。
「私はむしろ、あんまり喧嘩はしたくないわね。そもそも女の園でマウントを取るのは向いてないしさ。 それに――リリアにはとてもお世話になっているし、変わっているところがあるからね、つかみどころがないというか――」
 それについて、フィリスが話をした。
「リリアは比較対象にする相手がいないのも要因じゃないかな?  それでつかみどころがなく、あんな風に変わった性格って言われたら、戦いようがない気がするわね。 正直、勝てそうな要素もなければ、敵に回したところでリスクのほうが勝っている気しかしないのよね。 フローラもそう思わない?」
「そうね、むしろリリアは仲間にしておくべきね、大体、リリアと一緒のほうが絶対に得するに決まっているし。 それこそ、私なんかはリリアがまさに目標の人間像ね。 まあ、性格まで真似るのはなかなか難しいけれども、でも、ああいう人間になってみたいと思うわね。」
 クラフォードは頭を抱えていた、第2第3のリリアリスが生まれるのは勘弁してくれ、と。
「ねえ、クラフォード」
 フィリスはそう訊いた、いきなり呼び捨て――
「私もそう呼ぶからさ、私のことも呼び捨てでいいよ。 そもそもフィリスさんって呼ばれる柄じゃないしね」
 確かに、わからないでもないが、問題はこちらの御仁……
「もちろん、私のことも呼び捨てにしてくれるわよねぇ♪」
 クラフォードは頭を抱えて悩んでいた。

 ある日――
「リリアさん、ティレックスさんがお見えになりましたよ?」
 アリエーラはいつものテラスで端末を眺めながらくつろいでいるリリアリスに対してそう言った。
「ティレックス? どうしたの? 用事があるのなら電話でもすればよかったのにさ。」
 ティレックスはその場所までやってきていた。
「いや、あのままディスタード本土軍を撃破する予定だったんじゃないかなと思って、ちょっと気になっただけだ。 それに、ここに来たのにはちょっとしたワケがあってな、別に言うほどのことじゃないんだけどな」
 すると、リリアリスは意地悪く言った。
「そっか、いよいよユーシィにプロポーズしようと、そのためのプレゼント選びのために私に聞きに来たってワケね!  もうティレックス君ったら! わざわざ私に相談しに来るだなんてカワイイところあるじゃないのよ♪」
 それに対してティレックスは全力で否定した。
「だから! なんでそうなるんだよ! てか、本土軍を倒す予定はどうしたのか訊いてるの!」
 それに対してリリアリスは残念そうだった、ティレックスはその態度に辟易していた。

 閑話休題、ともかく、リリアリスはティレックスの問いに答えた。
「敵も一旦大人しくなっているし、ちょっとした休暇ってところよ。 前回の戦いでこっちもそれなりに消耗しているから、次に備えて準備中ってとこ。 それこそ前回はディスタード本土軍の侵攻が思った以上に速すぎて、 戦力揃えるのが追い付かなかったところもあるから、ちょっと反省しているところよ。」
 そう言いながらリリアリスはティレックスに端末のモニタを見るように指で合図した。
「前回の戦いはこんな感じ、展開があまりに急すぎてちょっと大変だったでしょ?」
 それに対してティレックスは言った。
「その割にはこっちの対応は結構早かった気がするんだが」
 それについてはリリアリスが得意げに言い放った。
「ったり前でしょ、誰が考えた計画だと思ってるのよ。 それに、あれほど対応が早くできたのは私やヒー様の技術のオカゲ、 それがなければ絶対に間に合ってなかったハズよ?」
 確かに――ガレア軍の軍備、クラウディアスのフィールド・システム、マダム・ダルジャン号といい、 これがこの人たちの技術力なのか、ティレックスは改めて尊敬というか感心していた。
「ま、とゆーコトで総じて私のおかげってワケなのよ、お分かり?  そんな美人で素敵なおねーさんに憧れちゃうでしょ?」
 確かに、素直にそう言えれば申し分ないのだが、 それを自分で言わなければ……その点だけが実に惜しい、ティレックスはそう思った。 いや、その惜しさがあるからこそ、この人物の魅力が余計に引き立っているのかもしれない、 だって、完璧すぎるのもねぇ……なるほど、等身大の美女というわけか、 リリアリスの美人ブランドは決して高嶺の花ではないということを表しているようだ、いや、高嶺というより斜め上なんだが……。