ディスタード本土軍との戦いから数日が経った。
各人がそれぞれの居場所へと帰る中、かつての居場所を追われた者もいれば、元々居場所のなかった者もいた。
しかし、居場所のなくなった者たちはクラウディアスにいた。
「はいフロレンティーナ、新作ができたわよ。」
リリアリスはフロレンティーナ用に作った剣を彼女に渡すと、彼女は喜んでいた。
リリアリスが言った通り、表現するのが難しい刃の武器で、派手目な装飾が光る傑作だった。
「本当に作ったのね! とっても素敵!」
それに対してスレアが皮肉るように言った。
「また危なっかしいアクセサリができたんだな」
それに対してリリアリスがすごく得意げに言った。
「そうよ。危なっかしいアクセサリだなんて、まさに女の武器って感じでしょ。
アクセサリというだけにピアス形態を実装してんのよ、いいでしょ♪」
確かに、いろんな意味でうま……また危なっかしいもの作るんじゃない。
「名付けて”カラフル・ピアス”ってところね。はい、これも持ってて。」
そして、もう一つの武器も渡した。それは当然、
「で、絶対に試作品から作るんだよなあ――」
と、ヒュウガは呆れたように言った。それに対してリリアリスは反論。
「当たり前でしょ、新しい武器の系統を作るようなレベルだから、プロトタイプから作るべきに決まっているでしょ。
こっちは名付けて……”シンプル・ピアス”ってところね。
ともかく、基本の型がイメージできなければ本チャンで凝ったものが作れるわけないでしょ。」
それに対してヒュウガは呟いた。
「いや、だからその――凝ったものを作らなければいい話で――って言ってもムダか」
イエス。その通り。
そして、いつものクラウディアスのテラスにて、リリアリスとアリエーラ、そしてフィリスはベンチに座り、
その傍らでフロレンティーナが新しい剣に見惚れているところへレイビスがやってきた。
「あら、おはよう。夕べはよく眠れた?」
レイビスは今までマダム・ダルジャン、さらにはガレアで取り調べを受けているときはガレアにて寝泊まりしていたが、
夕べは初めてクラウディアスで夜を明かしたのである。
彼についてはまだ他の所で取り調べなのか話し合いなのかとにかく忙しい身であるため、
彼にしてみればここでゆっくりしているのはある意味休息みたいな感じなのである。
「ああ、おかげさまで――」
その男を見ながらフィリスは訊いた。
「”閃光のレイビス”っつったっけ? あいつも通り名持ちなん?」
リリアリスとアリエーラが答える。
「だそうよ。まあ、クラフォードもあれで一応通り名持ちだし、
ディア様とかもそうだから、案外そういうものなのかもね。」
「でも、通り名があるのに、私たちってあんまり知らないんですよね、なんか変なの――」
その反応にレイビスは少し驚いていた。
「そうなのか、あんたたち、あんまりそういうのは詳しくないんだな」
フロレンティーナも言った。
「私はこの3人と違って知っているほうだと思っていたけれどもね。
だけど、伝説の英雄とも言われる”百戦錬磨のフォディアス”なんて存在は知らなかったわね。
あんたと一緒にいたゾレアムとかブロストとかレイビスもそうだけど、
ましてや、あのドズアーノも付き合いはそこそこ長いハズなのに、実は昔の英雄だったなんて全然知らなかったわね」
それについてリリアリスが言った。
「私もその話をディア様から聞いた時は、ふーん、そーなんだー程度にしか聞いてなかったわね。
だけど、ディア様ってば、何気に興奮気味に話すもんだから、そん時は申し訳ないけれども少し引いたわね――」
それに対してアリエーラとフィリスは頷いていた。
「確かにディスティアさんやレイビスさんには申し訳ないですが、
伝説の英雄とかそれを斃した人物とか、そう言われてもって感じですね――」
「そうそう、ぶっちゃけどーでもいーわ。
でも、そのフォディアスの名前がまさかクラフォードやディスティアことディルフォードの語源になっているって言われると、
その人は余程の人物だったのねって思うけどさ」
女性陣のあまりのテンションの低さにレイビスはむしろ圧倒されていた。
いや、だからこそ――そう思ったレイビスは意を決して話をすることにした。
「あの、ぜひ聞いてほしいことがあるんだが――」
レイビスは語った、自分がどうしてディブラウドと一緒にいたのかを。
「常闇のディブラウドは百戦錬磨のフォディアスを殺した、
その噂は本当なのか俺はどうしても確かめる必要があったんだ。
だから俺はヤツに真実を聞きに行ったんだ」
しかしディブラウドはこう答えた、真実は自分の目で確かめてみることだ、と。
それに対してフロレンティーナが言った。
「自分で確かめてみろだなんてあいつらしいわね。確かにあいつならそう言いそうね」
レイビスは頷いた。それにより、レイビスはディブラウドと一緒にいることになった、
それはこれまでも一貫して主張を覆さなかったレイビス、ここでもまた内容は一貫していた。
しかし、彼の真実はここからが本題だった。
「で、あんたたちの疑問はどうしてそれを確かめる必要があるのかということだと思うんだけれども、
ここから先はここだけの話にしてくれないか?」
そう言ってレイビスは注意を促すと、彼は話を続けた。
「俺の本当の名前はフェライト=ヘクトール、それがすべてを物語っているわけだが――」
そう言われても4人には何のことだかわからなかった。レイビスは改めて言った。
「やっぱりそうか、あんたたちは知らないのか、話してよかった。
では改めて言おう、俺の父親の名前はフォディアス=ヘクトールっていうんだ」
ん? フォディアス=ヘクトール? まさか――
「そうだ、みんなが百戦錬磨のフォディアスって言ってるその人物は俺の親父のことなんだ」
それにはリリアリスも納得した。
「なーるほど、それで父親の死の真相を探るべく、ディブラウドに近づいたってのがあんたの狙いだったってワケか。
で、その渦中の人物に訊いたところ、その答えが実際に見て判断してみろってワケか。」
それに確かに――そんな大人物の子供となると好奇の目で見られるから言えなかったと、
それがレイビスが頑なに理由をはぐらかしていたワケでもあったのか、4人はそう考えた。
リリアリスは続けざまに言った。
「フォディアスって、あんたのお父様は若くして亡くなったって聞いたけど、
結婚して子供までできていたのね、私の予想とは全然違っていたみたいね。」
レイビスは頷いた。
「それも4人兄弟の末っ子な。
兄は2人とも戦死しているし、姉もお袋も病気のせいで既にこの世にはいない。
でも、親父は――ディブラウドに殺られたというのが腑に落ちなくてな、それで確かめることにしたんだ――」
それについてフィリスは訊いた。
「それで? ディブラウドはあんたのお父さんを殺った人物だったの?」
レイビスは答えた。
「どうだろう、今でもよくわからないな。
それに一度、あいつは親父とは戦友だったって話を聞かされたこともある。
あいつ自身が親父のことを至極尊敬していたようなんだ。俺はそんな親父をもって誇りに思うよ。
もちろん、今でもまだ百戦錬磨のフォディアスだなんて言われるほどの伝説の英雄だなんて言われる親父を誇らしく思うし、
それに――やっぱりその名前が重くもあるな――」
アリエーラが言った。
「そうなんですね、すごく素敵なお父様ですね!
でも、そんな偉大なお父様という重圧を押しのけて今を生きているレイビスさんも十分立派な方だと思います!」
そう言われたレイビスは照れていた。
「で? ディブラウドはあんたがそのフォディアスの息子だって知っているの?」
フィリスはそう訊いた。
「もちろん知ってる。
ヤツに真実を聞こうとしたとき、それを聞いてどうするのかって言われたから、
俺がそのフォディアスの息子だって言ったら――ヤツは驚いていたな」
そして自分で確かめることだ――同行していた理由はそういうつながりがあってこそだったようだ。