リリアリスはガレア軍に指示を出しつつ、フロレンティーナのところへと向かった。
フロレンティーナは自らが解放した絶大な力の反動か、その場で立ちすくんでいた。
「フローラ、大丈夫?」
リリアリスが心配しつつそう訊くと、フロレンティーナは答えた。
「ねえリリア、私、やったわ! 常闇のディブラウドを斃したのよ! 私ってこんなに強かったのね!」
フロレンティーナは感動していた。そしてその場から何とか立ち上がった。
「はいこれ、忘れものよ」
フロレンティーナはそう言いつつリリアリスにアリエーラの剣を渡した。
「あっ、そういえば”フェザード・スティンガー”のことを忘れていたわね、私としたことが――。
だけど、世の中何が幸いするかわからないわね――」
リリアリスはため息をつきつつ、ちょっとお手上げな感じにそう言った。
だが、フロレンティーナは前向きだった。
「何を言っているのよ、こういうことを見越してわざと置いていったんでしょ?
それとも――本当に天然で忘れていったというのなら、
やっぱりリリアの強運が作用した結果だったということになりそうね――」
アリエーラも楽しそうに言った。
「ホントですねー! やっぱりそこはリリアさんのなせる業だと思いますね!」
というのも、リリアリスについてはこの手のケースは初めてではない、
いつぞやの釣りの時同様、ここでもしっかりと幸運を呼んでしまっている、恐るべき強運の持ち主である。
それについてリリアリスは再びお手上げ気味に言った。
「……結局、一周回って私の知らないところで自分のファインプレイが功を奏することになっているのね、
それはそれでなんか複雑――」
世の中うまく出来すぎていることに対してリリアリスはなんだか腑に落ちなかった。
「だけど、それでも本当にすごいですよね! フロレンティーナさん、すごかったです!
まるでリリアさん――って言ったらダメなのかな、でも、とてもすごかったです!」
と、アリエーラがそう言うと、フロレンティーナは得意げに言った。
「ふふっ、ありがと、アリ。
リリアみたいだっていうのなら嬉しいことはないわね。
私の目標はハードルがかなり高いけれどもリリアリス=シルグランディアだから、そう言われるととっても嬉しいわね!」
そう言われたリリアリスは嬉しそうに得意げに言った。
「ヲイヲイヲイ、私目標って――そんなこと言うんならハードルもっとあげちゃおっかなー♪」
どこかで訊いたセリフ――なるほど、これがオリジナルか。さらにアリエーラは言った。
「だけど、私の剣をそんなに使いこなしてもらえるなんてすごいですね!
その剣は使い慣らすまでが結構大変なものなんですけれども、
もしよろしければその剣、フローラさんに差し上げます!」
リリアリスが言った。
「あ、そう言われてみればそうね、
下手すると自分自身を切りかねないような代物をよくもまあ使いこなしているわね、
私が言うことじゃあないけれども。
でも、アリの剣はアリに返すよ、アリ用に調整してあるからね。
フローラのは新しく作ることにするから、良かったら使ってね。」
そう言われたフロレンティーナは嬉しそうだった。
「あら、どんなものができるか楽しみね♪ できればすごくオシャレなものにしてほしいわね♪」
「オシャレで派手目なものに仕立ててあげるわよん♪」
リリアリスは得意げだった。
そして、一行はラヴィス島から引き揚げることにした。
「さてと、ここはガレア軍とアルディアス軍に任せることにして、私たちはさっさと帰りましょ。」
そう言うとティレックスが反応した。
「それもそうだけど、あいつはどうするんだ?」
あいつというのは――リリアリスは答えた。
「あいつね、とりあえず大丈夫よ、こっちで何とかするから。ささ、早く戻った戻った。」
ティレックスはそう言われると、施設から脱出することにした。
そして、リリアリスはあいつのいるところへとやってきた。そこにはクラフォードも一緒にいた。
「リリアリスさん、こいつはレイビスだ」
クラフォードがそう言うとリリアリスが訊いた。
「私、あんまし知らないんだけれども、”閃光のレイビス”って有名なのねアンタ?」
それに対してレイビスはどう答えるべきなのか困惑していると、クラフォードがフォローした。
「一応、万人斬りや万人狩り程度には名前は通っているな。で、こいつは連れて行くのか?」
リリアリスは答えた。
「それよりさ、ディブラウドとはどういう関係だったの?」
クラフォードも訊いた。
「ゾレアムやブロストと違って雇われではなさそうな感じに見えたんだが、一体、何があったんだ?」
どう答えるべきか悩んでいるレイビスだが、とりあえず答えることにした。
「……別に大したことじゃないが――俺はただ、
あいつが”百戦錬磨のフォディアス”を斃したのかどうか確認したかっただけだ」
確かに大したことではないように思える。
もっとも、偉大なる英雄の最期の確認という意味ではそれなりに大きなテーマだとは思えるが、
それでもあくまで一個人の、
それもハンターとか傭兵とかほぼ一般人同然の存在の最期ということで、
別に特段気にするほどの内容ではないような気がする。
そのため、リリアリスもクラフォードも腑に落ちなかった。
「本当にそれだけが理由なんだ、ただの興味本位ってやつだ――」
それに対してクラフォードは訊いた。
「じゃあ、それが理由だとして、やつは――ディブラウドはフォディアスを討ったのか?
で、それはやつの口から直接聞いたのか?」
それは――レイビスは困惑していると、リリアリスが話を打ち切った。
「それは後にしましょ。そんなことより早くしないとみんなにおいてかれるよ。」
リリアリスはそう言いながら、2人を船まで促した。