ブロストの攻撃にはフロレンティーナが相手をしていた。
「どうせだったら美人のネエチャンの相手がしてえもんだと思ってたら、
俺の願いを叶えてくれるとはネエチャン、イイ女だなぁ!
それにやるじゃねえかネエチャン! これが終わったら俺に酒を注いでくれれば言うことねえぜ!」
「悪いけど、あんたみたいなオッサンは好みじゃないから遠慮しておくわ。
でも、美人でイイ女って言ってくれるのなら誉め言葉として受け取っておくわ。
希望に添えたのなら冥途の土産として受け取っておくことね!」
フロレンティーナは左手に逆手で持っている短剣を振りかざし、
ブロストの中くらいの剣の技を受け止めつつ、ブロストの隙をついて攻撃を加えていた。
「やるなあネエチャン! マジでイイ女だぜ、何食ったらそんな身体になるんだあ?
というかネエチャン、さっき下で思いっきり電気食ってたよなあ? あれはどういうカラクリだあ?」
ブロストは不敵な笑みを浮かべていると、フロレンティーナは身体から電気を放出した。
「これのことかしら?
教えてあげてもいいけれども――その代わり、触れたらあんたなんてイチコロよん♪ うふふっ――」
フロレンティーナは得意げに言うと、ブロストは少し真面目な態度で言った。
「いいねえ! 是非ともその御身に触れてみたいもんだぜ!
だが……そんな女にはお仕置きが必要そうだな――」
すると、ブロストは強烈なオーラを発した! そのオーラは何と――
「電気の力!?」
そう言うフロレンティーナに対してブロストは不敵な笑みを浮かべていた。
「フヘヘヘヘ! 実は俺は電撃の使い手なもんでよぉ!
相手の電撃の力も吸収しちまうんだよなぁ、くぉるぇぐぁ(これが)!
つまりネエチャンの身体も触りたい放題ってわけよお! いくぜぇ!」
そう言いつつブロストは再び振りかぶるとそのままフロレンティーナに一直線! 襲い掛かってきた!
フロレンティーナは軽い身のこなしを生かして難なく避けた。
「いいぜェネエチャン! この俺をもっと楽しませてくれよォ!」
そんなゾレアムに対し、
「はぁあ、まったく……イヤラシイオッサンね、頭きちゃったわ――」
フロレンティーナは呆れていた。
イールアーズ、クラフォード、そしてフロレンティーナの3人が通り名を持つ実力者たちをそれぞれ相手をしているのと同時に、
ティレックス、ユーシェリア、そしてスレアとフラウディアも、その場にいた帝国兵たちを相手にしていた。
「くっそ、こいつらマジで強いな――」
「ティレックス、どうしよう――」
ティレックスとユーシェリアは2人で1人の帝国兵を相手にしていた。
「本土軍の帝国兵にこんなやつが紛れ込んでいたのか、
それともやはりあの3人と同じくスカウトした者なのか――」
スレアが言うとフラウディアが答えた。
「私も本土軍の兵隊にこのような者がいることを把握しておりません。
ですから恐らく外部の者だと思いますが――」
そんな状況の中で1人、ディブラウドはあくびをしながらモニターの画面だけをじっと見ていた。
「なんだなんだ、船に乗っているのは女だらけだな、
ディスタード本土軍と違って華のあるところだな、ガレアもクラウディアスも。
だから本土軍はクラウディアスが欲しいのか。
ん、待てよ、そういやベイガ・ゲラは女嫌いだったか、つまりは――女の国を蹂躙したいっていうのが狙いか?」
彼もまた、ほかの本土軍の者とは違ってまったく忠誠心のない存在である。だからこその厄介な敵ということか……
すると、ディブラウドは周りに注意し始めた。
「うるさいぞ、なんでもいいからさっさと始末しろ。
もういい加減いいだろう、次はこいつらがやってくる。
今度は変な小細工は不要だ、真正面から殺してやれ」
だが、そんな彼の足元にブロストの身体が転がり――
「おい、どうしたんだ、寝っ転がってないでさっさとその女を――」
ディブラウドはそう言いながら振り返ると、そこにはなんと――
「ぐはあっ!」
なんと、フロレンティーナの両手には大きな雷の剣が握られており、その剣はゾレアムの胸を貫通していた!
「なっ、何がどうなっているんだ――」
と、イールアーズは力なく言った。
イールアーズはゾレアム相手に戦い続けていたがもはや瀕死も同然の状態で、
ゾレアムに殺られる寸前のところだったらしく、既にその場に崩れていたのである。
だが、イールアーズにトドメを刺そうというすんでのところでフロレンティーナの剣がゾレアムを――
「ばっ、ばかな、この俺が――こんなところで死ぬのか……?」
フロレンティーナは剣を引き抜くと、ゾレアムはその場に倒れた。
「さて、次は――」
フロレンティーナは不敵な笑みを浮かべつつ、
今度はクラフォードと対峙しているレイビスのほうへとゆっくりと向かった。
それにはクラフォードも呆然としていた。
「フロレンティーナさん――一体、何がどうしたというんだ?
さっきの装置といい、そして今の技もやっぱり――レイビス、お前どうする?
もはや俺には何が何やらでさっぱりわからん、身内の問題のせいでもはやお手上げだ」
フロレンティーナの存在はもはやクラフォードの理解を超えていて、
自分自身の力でレイビスをどうにかすることを放棄したのである。
それに対してレイビスも――
「……契約だったら相手にしているところなのだが――
ゾレアムもブロストもやられるとなると流石にパスだ、白状だろうとなんだろうと関係ない。
そもそも俺の目的にはないことだからな」
そう言いつつ、剣を納めてしまった。そしてフロレンティーナに言った。
「俺はあんたに殺されるのか?」
そこへディブラウドがため息をつきつつ口を開けた。
「フロレンティーナ、お前が強いことは分かった、その小僧には手を出すな――」
それに反応したフロレンティーナはディブラウドのほうへと振り返り、
身体もディブラウドのほうへと向き直った。
「その小僧とは傭兵契約を結んではいない、ただの俺の同行者だ。小僧はもう下がってろ」
レイビスは申し訳なさそうに答えた。
「すみません、ディブレスさん――」
すみません? ディブレスさん?
クラフォードはレイビスに対して何やら違和感があった、こいつら実際どういう間柄なんだ?
「気にするな、そもそもお前を戦わせる契約はしていないからな。
それで……進捗はどうだ? 目的は果たせたか?」
「まだ剣を抜いただけだろ、戦ってすらいない――」
「フッ、確かにその通りだ――」
そして、ディブラウドはまた他方に目をやると、
そこにはボロボロになってまで帝国兵2人を打ち負かしたティレックスら4人の姿があった。
「ちっ、あいつらには役不足だったか、どうやら数に圧されたようだな――」
そう言うながらディブラウドは剣を再び取り出しながら言った。
「茶番に過ぎんということか、いいだろう。
いずれにせよ、結局はこの俺の手自らお前らを、
そしてフロレンティーナ、お前を殺すことになるわけだな!」
ディブラウドが真の力を引き出して襲い掛かってきた!