エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第5章 最強の女流剣士

第148節 堕ちた英雄共

 ディブラウドは別の部屋から現れた、3人の甲冑を身にまとった帝国兵たちの背後に回った。
「こいつらは本土軍では数少ない俺のそろえた精鋭共だ。 こいつらに勝てないようでは俺の相手は務まらんだろう。 だからせめてこいつらを倒してもらいたいものだな」
 ディブラウドはその場所で何やらモニタを眺めながらそう言った。どうやら外の状況を見ているようだ。
「おうおうおう、もうじきお前らのお仲間とやらが来るようだぞ。 それにしてもなかなかいい船に乗っているようだな、どこぞのセレブ様だあ?」
 なんだか余裕の態度だった。そんなのを相手にイールアーズは苛立っていた。
「あの野郎――俺らをコケにしやがって――」
 するとイールアーズ、真っ先に攻撃を仕掛け、 格下の兵士を無視してディブラウドめがけて突っ込んだ。だがしかし――
「何!?」
 なんと、格下のハズの帝国兵によってその勢いは止められていた!
「今の話を聞いていなかったとは流石はシェトランド人、ただの屑の石っころの知能はその程度ということか!」
 帝国兵にそう言われながら、イールアーズはそいつに思いっきり攻撃を弾かれていた――
「ぐぉっ! なんだこいつは!」
 イールアーズはなんとか受け身の体勢を取りそのまま態勢を立て直した。 ディブラウドはため息をついていた。
「ただの屑の石っころには俺の話が通じなかったということだな。 仕方があるまい、そいつにもわかりやすいように教えてやれ」
 そう言われ、帝国兵たちはそれぞれ兜を外した。 すると、クラフォードは目の前の真ん中の帝国兵の顔を見て酷く驚いていた。
「何!? お前、レイビスか!?」
 彼は”閃光のレイビス”、名のある存在だった。 しかもそれだけではない、そもそもイールアーズの攻撃を受け止めたやつも、 やはりエンブリアにて通った名のある存在だった。
「”堅牢なるゾレアム”……」
 となると、最後の一人ももちろん――
「”怒涛のブロスト”! 何故通り名持ちが集まっている!?」
 スレアは驚くとディブラウドが答えた。
「全員ちゃんと知っているようで感心だな、それでわからなければどうしたもんかと思ったぞ。 で、何故という問いに対する答えだが、ただの暇潰しさ」
 そんなまさか、ただの暇潰しのためだけに!?
 ゾレアムが口を開けた。
「暇潰しというよりは憂さ晴らしってやつだな。 この世界はどうも平和になりすぎちまったせいで傭兵である俺としてはどうも居心地がよくないもんでな。 そこでディブラウドが俺に声をかけて下さったってワケよ」
 なるほど、そういうことか――イールアーズはそう言うと続けざまに言った。
「――くだらないな」
 ゾレアムは言い返す。
「くだらない?  ほう、最近になって戦闘狂とか言われている鬼人の剣サマが、まさかそんな戯言を抜かすとは面白いじゃねえかよ!  つってもまあ、天下の鬼人の剣サマも所詮は若造、お年頃だもんだから仕方がねえってワケか!」
 ゾレアムは完全にイールアーズのことをバカにしていた。
「こいつ! 言わせておけば!」
 さらにブロストも追い打ちをかける。
「ようボウズ! お前もそういえばそう言ってたよな!」
 しかし、その対象はレイビスだったようだ。レイビスは言い返した。
「黙れクソジジイ、ボウズって呼ぶのもやめろ」
 レイビスは若く、年齢的にはクラフォードらと近い感じだ。 しかし、そんな彼が何故ここにいるのだろうか、こんな通り名のある連中の中でも大層な存在の中に――
「……なんでもいいが、一応仲良くやってくれよ、面倒ごとは嫌いだからな。 傭兵は傭兵らしく、まずは目の前の敵を倒すことに専念してほしいもんだ」
 ディブラウドは呆れながら愚痴っぽく言うと、3人は気を引き締めてかかってきた。
「それもそうだ、悪かったな、これも契約だ! だから安心しろ! すぐに殺してやるぜ!」
 ゾレアムは不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
「どうせ殺すのなら楽にやりたいからな、下手に抵抗して面倒かけさせるんじゃねえぞ――」
 ブロストは少々得意げな表情でそう言った。
「ったく。まあいい、他にやることもないんでな、仕方がないから相手してやるよ」
 レイビスは少し不満げにそう言った。
 こうして――戦いの火ぶたは切って落とされたのである。

「オラオラァ! どうしたァ! それでも天下の鬼人の剣サマって言えんのかよ!」
 ゾレアムは大きな剣を振りかざし、ものすごい技を用いてイールアーズを圧倒していた。
「くそっ、こいつ――」
 イールアーズはゾレアムに歯が立たなかった。
「ま、所詮はこの程度ってこった。 確かにシェトランド人といえば、”暴君リオーン”も”雷虎ワイズリア”も”手練れのシャト”も強かったが、 それ以外は口ほどにもねえ連中だからなぁ、正直がっかりしていたところだが―― やっぱりテメーもその程度だってことだな!」
 ゾレアムはそう叫ぶと同時にイールアーズを勢いよく吹き飛ばした!
「ぐああああっ!」
 さらにゾレアムは調子よく話を続けた。
「だが、リオーンもワイズリアもシャトも最近の噂じゃあどうなってるかあんまり聞かねえしなあ。 リオーンは王様になってノンダクレているだけっていう話は聞くからなぁ!? ヤツはもう過去の存在かあ?  でもシャトはイイ女だったよなあ! 戦う機会が全くなかったのが残念だが、今頃どこで何をしているんだろうなあ!」
 シャトといえば――一緒に居合わせているティレックスとユーシェリアは知っているハズである。

 クラフォードとレイビスは剣を交えながら話をしていた。
「久しぶりじゃないか、閃光。お前、今度は何をしている?」
「久しぶりだな、万人狩り。見ての通り、戦ってる」
「相も変わらず変な勢力の下で働いているのか?」
「らしいな、どうやらそういう性分らしい。 だからいつもいつもお前とは敵対するハメになるみたいだな」
 2人は顔見知りだった。 いつも互いに敵対する勢力同士の陣営の下にいて、 いつもこのように剣を交えているような関係、さしづめ腐れ縁といったところだろう。
「傭兵ってのも因果な商売なんだな」
「お前のほうこそ、自衛団のリーダーなんて引き受けるようなヤツとは思ってなかったけどな。 それともティルアは人手不足なのか?」
 お互いにそれぞれ激しく剣をぶつけあい、 そしてお互いの隙をついて大きく剣を振りかぶると、お互いに強烈な一撃を放った!  その反動でお互いに強く弾かれ、互いに距離を取り直すと剣を構えなおしていた。
「人材は不足していないな。 もっとも、俺は”優秀な人材”だったようだからな、リーダーの後任は俺にしか務まらなかったようだ」
 クラフォードのそのセリフ、やはりどこかの誰かさんに影響されていた。