フロレンティーナは電撃の力を帯びつつギロチン装置の脇にある金属の階段を上っての安全弁となっていた短剣を抜き出すと、
ギロチンはそのまま下のほうへと落下、強烈な金属音を上げていた。
その前にユーシェリアを助けられて何よりである。
そして、彼女は目の前に現れた帝国兵たちを相手に構えた。
「この程度の格下、私の敵ではないわ!」
すると、フロレンティーナはクラフォードやイールアーズが想像する以上のスピード、
ましてやティレックスなんかまったく話にならないほどのスピードで敵を一掃、
そのまま感電させて身動き取れないようにしていた。
その様を見て誰もが驚くが、まず驚いたのはドズアーノだった。
「フロレンティーナ、まさかお前にそれほどの力があるとは――
さほど戦闘向きとは言えないような能力だったハズのお前が――」
フロレンティーナは今度、ドズアーノを睨めつけていた。
「ドズアーノ、今そこに行くから待ってなさい!」
フロレンティーナは部屋の奥へと抜けると、そこにある階段から上の階へと進んだ。
それに続いてティレックスらも上へと進む。
7人はドズアーノを前にしてそれぞれ構えた。
ユーシェリアはフラウディアが預かっている剣を受け取って構えていた。
「ふん、そこまでして私を斃そうという腹か、元よりそのつもりなんだろうが……。
いいだろう、それがお前たちの望みというのならその通りにするがいい」
ドズアーノはそう言いながら懐の剣の柄に手を置くと同時に、
とてつもなく鋭い眼光で睨めつけつつ続けざまに言った。
「だが――私はお前たちが思うほど甘くはないぞ!」
そして、ドズアーノは剣を抜いた、その刃は黒く不気味に光っていた。
それを見たイールアーズは思い出しつつ驚き気味に言った。
「その黒刀――まさかお前、”常闇”か!」
ドズアーノは答えた。
「フッ、まさかこの中でこの私――いや、俺のことを知っているやつがいるとは感心するな。
知らぬ者もいるようだから冥途の土産に教えてやる。
俺の名前はディブレス=ドズアーノ=エルペーニ、かつて”常闇のディブラウド”と呼ばれていた男はこの俺のことだ――」
”常闇のディブラウド”! それを聞いた何名かは非常に驚いていた。
一方その頃――マダム・ダルジャンはラヴィス島付近まで迫っていた。
「本土軍もだいぶ大人しくなったわね。
けれども――早くしないとラヴィス島のメンバーが危ないわね――」
リリアリスはそう言った。マダム・ダルジャンはハイ・スピードを保ちながら航行を続けていた。
「ディブレス=ドズアーノ=エルペーニ、通称”常闇のディブラウド”といえば、
かの”百戦錬磨のフォディアス”を破ったとも噂される伝説のハンター――もっと早くに気が付くべきでした」
ディスティアは後悔していた。
「私もたかだか本土軍の上層部の連中だからってちょっと油断してた。で、そいつ、どのぐらい強いの?」
リリアリスはそう訊くとディスティアは答えた。
「あいつの強さは本物です、あの黒の刃を前にして私は全く歯が立ちませんでした。
イールも常闇を前にして勝てたことがありませんので厳しいかと思います。
幸い、御覧の通り命まで奪われることはありませんでしたが、
とても人間技とは思えない能力の持ち主ですね――」
そんなに強いのか、リリアリスは悩んでいた。
「となると、フローラがどこまで耐えられるかにかかっている気がするわね――」
それに対してディスティアが訊いた。
「それなんですけれども、フロレンティーナさんってそんなに強いのですか?
申し訳ないのですが、あまりそうは見えなくて――」
リリアリスは前のほうを見ながら答えた。
「フローラは無茶苦茶強いわよ。
それこそ、とても人間技とは思えない能力の持ち主って言ったら彼女だって負けてないレベルのハズよ。」
……私としてはリリアリスのほうこそ人間技とは思えない能力の持ち主と思うのだが、それは?
もとい、状況が状況なだけにリリアリスは得意げな態度をとるような余裕はなかったようだ。