エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第5章 最強の女流剣士

第144節 デジャヴ?

 装置の放電が収まると、フロレンティーナはその下でうずくまり、動くことはなかった――
「フローラ姉様! しっかりして! お願いだから目を開けて!」
 ユーシェリアとフラウディアはそれぞれその場で立ちすくんで泣いていた。 ティレックスもスレアも、もはや言葉もなかった。
「くそっ、こんなことが――」
 クラフォードはとても悔しそうにしていた。
「俺がついていながら――あの野郎、本気でやりやがったな――」
 イールアーズは怒りむき出しだった。
「この私としても残念だよ、あれほどの女はいなかった。 だが、これも彼女が望んだこと…… ふん、そもそもこの私のもとから去ったことがすべての間違いだったのだ――」
 ところが――装置の中で死に絶えているハズのフロレンティーナの身体がその場でゆっくりと起き上がった!
「よいしょっと、ふう……なかなか痛いことしてくれるじゃない――」
 え、まさかあれほどのものを受けておきながらそれでもなお生きている!? その場にいた全員はその光景に目を疑った。
「なっ、どうなっている!?」
 ドズアーノは驚きながらそう言うと、操作盤のレバーを確かめていた。 それは間違いなくあの装置から高電圧の電撃を発生するための非常用レバーだった。
「そう、だから私は……元カノに対してこんな酷い仕打ちをするアンタを捨てることにしたのよ――」
 そう言いながらフロレンティーナは自分の身体からものすごい量の電気を放出した!  すると、彼女を閉じ込めていた装置はショート、機能しなくなったと同時に閉じ込めていた扉が開いた。
「なんだと!?」
 ドズアーノは驚いていると、操作盤から慌てて離れた!  その操作盤からは放電し、そしていきなり爆発した!
「おい、まさかあの女、あれだけの電気を浴びて、それを――」
 イールアーズはフロレンティーナを見ながらそう言うと、 ティレックスとクラフォードには何やら思い当たるものがあった。
「あれ、見たことがあるな、どこかの誰かさんが得意になって使うやつ」
「お前とはよくよく話が合うな、実は俺も同じことを思った。アレはまさにあの時のアレのようだな」

 ティレックスについては修行の一環としてよく見るものだったが、 クラフォードについては、今のフロレンティーナの行動について、 つい最近に見た光景がすべてを物語っていたように思えた。
「てっ、敵襲! 撃て撃て撃て!」
 その時、リリアリスはシオラたちと一緒に戦いの真っ最中だった。
 すると、重兵士は小型兵器からレーザーを発射したのである。
「死ねっ!」
 そのレーザーはまさに殺人レーザーと言わんばかりの超高出力の兵器だった。だが――
「ようし、こいやあっ!」
 リリアリスはそのレーザーを引き受けたのである、レーザーに含まれている魔力を吸収し始めたのだ。
「よっし、これでこっちのもんよ! さてみんな、言うまでもないけど、このレーザーに触れない程度に好きに暴れまわって頂戴!」
 その時はそんな感じで事なきを得たのである。

 そして、今度は敵のアジトが見える見晴らしのいい丘の上にて。
「そんなことより、お休みしてなくて、大丈夫ですか……?」
 シオラは心配そうにリリアリスにそう訊くが、リリアリスは不機嫌そうではあるものの、大丈夫と言って返した。 その時はリリアリスの様子がとにかくおかしく、立っていることさえままならない状態だったのである。 だが、それでもリリアリスはとにかく、 敵のアジトがちゃんと見えるところまで連れて行ってほしいと懇願するため、 クラフォードとウィーニアの2人に抱えられて連れてきてもらったのである。
 すると、周囲は急に不気味なぐらいに暗くなり、そして、そのうち激しい雷鳴が轟いた!
「あっ、見て、お姉様の頭に何か出てきたよ!」
 ウィーニアが見たもの、それは、まぎれもなく、リリアリスが魔法を一点に集中している状態だった。
「まさかお姉様、大魔法かなんかで、あのピラミッドを!? ダメだよ、そんな身体で無茶したら!」
 ウィーニアはリリアリスの行動を止めようとした。 いや、待って! シオラはウィーニアを止めた、そう、殺人レーザーと対峙していた時のことを思い出したのである。 それを簡単に説明すると――
「えっ、あれ? その吸収した魔力って、どこに行っちゃったの? まさか、そのまま還元してマナに返したとか――」
 ウィーニアはシオラにそう訊き返した。 いや、違う――あれだけの魔力、還元するのはかなり膨大な時間をかけるハズであり、 それまでの道中、そんな時間はどこにもなかったハズである。
 そう思った次の瞬間――
「おっ、おい、まさか――」
 クラフォードは息をのみながらそう言った、リリアリスが展開している魔法の力は異様なほどに増大していた――
「そういえば、魔法的な力を受けても大して痛くないって言ったけど、 でも、不安定な魔力が体に堆積し始めると、頭が痛くなるって言ってた気が――」
 クラフォードはこれから何をするつもりなのかを予感しながらそう言った。 セラフィック・ランドが消滅する際のリリアリスと言えば、 なんとなく覚えている人ならわかるだろう、あれはまさしく、そういうものに類推するものである。 あれについてはさらに磁場にも影響するものらしく、まさしくマナが不安定となり、魔力も歪んでいる状態である。 そして、それはセラフィック・ランドが消滅する前段階から発生するものであり、だから、 セラフィック・ランドが消滅する予兆としてリリアリスやアリエーラは頭が痛くなる、頭痛持ちのつらいところである。 もちろん、彼女らだけではない、多くの生物が、ティレックスまでもが嫌な感じを受けるわけである。
 そして、この時のリリアリスは魔力を吸い続けた、それによって、身体に不調をきたしている、つまり――
「あっ、あの赤い光は――」
 リリアリスは、強大な魔力によるレーザー状のエネルギー波を鉄のピラミッドめがけて発射した!
「ったく、とんでもない女だな、敵から奪った力を敵めがけて全部ぶちかますとは――」
 クラフォードはまさかとは思いながら、驚きながらそう言った、 なんていうか、今まで奪った力をそのまま蓄え続けていたのか、 リリアリスの放ったレーザーと共に、その行為自体をその場にいた全員が驚愕していた。
 そのあと、鉄のピラミッドは見るも無残な姿に、まさしくあっけなく壊滅した。 その姿、大爆発して粉々になったかと思えば、そのあとはすべてが超高温のレーザー光線により完全に融解し、 塵一つ残ることはなかった。
 そして、その後のリリアリスの機嫌のよいことよいこと、 この時、クラフォードはこの女の恐ろしさを改めて味わうこととなったのである。