エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第5章 最強の女流剣士

第143節 女は難解

 その時――
「ドズアーノ! そこまでだ!」
 ドズアーノのいる2階の部屋にスレアとフラウディアが飛び出してきた!
「ユーシェリアさん! 今助けます!」
 フラウディアはその場にある適当なものを投げつけて下の階層を望めるガラスを破った!  そして、それと同時にフロレンティーナの短剣をユーシェリアのギロチン台の頭頂部めがけて勢いよく投げつけた!
「何っ!?」
 ドズアーノは突然の出来事で呆気に取られていた。
「くっ、こうなれば仕方あるまい! 望み通りにしてやろう!」
 ドズアーノは何かの操作盤を操作した!
「まさか、ギロチンか!?」
 クラフォードが言うとティレックスは焦って叫んだ。
「やめろー!」
「死ねっ!」
 ドズアーノは勢いよくスイッチを押した!  そして次の瞬間! ユーシェリアの頭上のギロチンが!
「ん? どうなってる!?」
 ……ギロチンは落ちることなく、まったく作動することはなかった。 するとドズアーノの配下にいる偉そうな兵士が――
「貴様! ギロチン装置の安全弁を外すのを忘れたのか!」
 部下に対して怒鳴りつけていた。
「まさかそんな! 弁は間違いなく取り外しました!」
 それに対してドズアーノが下の様子を見ながら言った。
「待て、これはフラウディアの仕業だ。 見ろ、さっきのナイフはギロチン装置の頭頂部を的確に狙っていたようだ――」
 安全弁はギロチン装置の頭頂部につけられていたのだが、それがあることでギロチンは作動しない。 だが、フラウディアはそれを把握しており、安全弁となるよう短剣をそこに投げ込んだのである。 そのせいでギロチンは作動しなくなっているようだ。
「ティレックスさん! 早く!」
 フラウディアはそう言って彼を促すと、ティレックスは早々にユーシェリアを助け出し、 彼女の手足を縛っている枷とさるぐつわをほどいた。
「大丈夫かユーシィ!?」
 彼女は気を失っており、ティレックスは必死になって訴えかけた。すると――
「ううん――ティレックス、私――」
 彼女が反応したため、ティレックスは今度は身体を揺さぶりながら訊いた。
「ユーシィ! しっかりするんだ!」
 すると、ユーシェリアはしっかりと目を覚ました。
「ティレックス!? クラフォードさん!? みんな!」
 彼女は周囲を確認すると急いで起き上がり、状況をすぐさま察した。

 だが、ドズアーノにはまだ切り札があった、フロレンティーナである。
「フローラ姉さん!」
 ユーシェリアは叫ぶが、フロレンティーナは言った。
「いいのよ、私は。短い間だったけど楽しかったわ。 ガレアに遊びに行って、お母さんにも会えたし、クラウディアスにまで行ったのですもの。 楽しい場所だったし、みんな楽しい人で優しい人だった、本土軍にいたってあんなに楽しいこと一切なかったもの。 だからもう――私は悔いはないわ。さあドズアーノ……やるんならさっさとおやりなさいな!  そうでなければきっと後悔するわよ!」
 フロレンティーナは上の階層にいるドズアーノを見上げながらそう訴えた。
「確かにその通りだ。 だが、お前ほどの女はそうはいない、だから名残惜しくはあるが……やむを得んな」
 そう言うとドズアーノは操作盤を――
「やめてー!」
 フラウディアは必死に叫びながらドズアーノに切りかかった、だが――
「邪魔はさせん!」
 ドズアーノの背後から兵士たちが飛び出し、行く手を遮った!
「そうとも! お前がいつもいつも仲良くしていたハズの義姉の最期、その目にしっかりと焼き付けるがいい!」
 ドズアーノは操作盤のレバーを思いっきり引き上げた!
「お願いだからやめてー!」
 フラウディアは泣き叫び、兵士たちに抵抗した。
「さよなら、みんな――」
 フロレンティーナは諦めたかのように胸元で両手を合わせた。
「やめて! フローラ姉様を助けてあげてー!」
 ユーシェリアも悲痛な叫びをあげた。 そしてティレックスやクラフォード、イールアーズは――自分の無力さを悔いていた。 助け出したいのにどうにもならないこの状況、そんなもどかしさの中で自らの無力さを痛感していた……。
 そして次の瞬間――フロレンティーナが入っている装置の頭上から強烈な放電が!
「フロレンティーナ、せめてお前だけは助けたかったが残念だ―― 貴重なサンプルということ以上にお前は私にとって大切なものだった、本当に残念だが――貴様は殺処分だ!」
 ドズアーノは操作盤のレバーを最大限にまで引き上げた! フロレンティーナは放電を浴び、その場で――
「フローラ姉様ぁ! フローラ姉様ぁー!」
「いやだ! いやだぁ! やめてぇー!」
 ユーシェリアとフラウディアの悲痛な叫びが部屋中にこだまする――

 一方で、アリエーラはローナフィオルと共にリリアリスを迎えにマダム・ダルジャンでルシルメア港へ行くと、 そこにはリリアリスとディスティア、そしてレナシエルの3人が待ち構えていた。
 お互いの状況を把握しあうと、そのままラヴィス島へと向かっていた。
「ラヴィス島へと向かったメンバーはティレックスとユーシィのカップル、スレアとフラウディアのカップル、 そしてフローラとクラフォードみたいね。」
 と、リリアリスはそう言った――誰か1人忘れてはいないだろうか、わざとな気もするが。 それに対してディスティアが少し焦り気味に言った。
「急いだほうがいいですよ、リリアさん。 ドズアーノ、どこかで聞いた名前だと思いましたがまさか――」
 リリアリスは頷いた。
「ディスタード帝国本土軍の上層部にそんな男が紛れ込んでいたなんて思ってもみなかったわ。 でも――私のカンだと、フローラがいるから多分大丈夫だと思ってる――」
 えっ、それはどういう――ディスティアはそう言いかけたが、アリエーラが言った。
「フローラさんのこと、やはり気になりますね――」
「只者じゃないのは確かね――」