エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第5章 最強の女流剣士

第142節 黒幕

 3人は扉の隣についてある操作パネルを操作し、扉を開けた。するとそこには――
「ユーシィ!」
 なんと、そこにはギロチン台を機械化したような大掛かりな機械の上にユーシェリアが磔にされている光景が!
「やっと来たか、ずいぶんと時間がかかったようだが何をてこずっていたのだ?」
 そして、その上のほうには偉そうな男の姿が!
「お前がドズアーノか!」
 ティレックスはそう叫ぶと男は答えた。
「いかにも……私がディスタード帝国軍のベイダ直属の部下、ドズアーノだ」
 よくありそうな研究所の実験室内部にティレックスたちは出てきた。 右手にはユーシェリアが捕まっているギロチン台、左手には何かの実験装置が置いてあり、 頭上には大きな窓があり、そこからドズアーノがこちらを見下しながら話をしていた。
 しかし、ドズアーノはこれまでのベイダの直属の部下にしては少し違和感があった。
「ベイダ――呼び捨て?」
 ティレックスはそう訊いた。 忠実なやつなら”ベイダ・ゲナ様”と語るはずなのだがこいつは違うようだ……ドズアーノは答えた。
「なんだ? 何かおかしかったか?  ベイド・ゲソ様とでも言えばいいのか? それともベイズ・ゲス様だったか?  いずれにせよ、ディスタード帝国など私にとっては通過点にすぎんのでな、 覚えていようがいまいが同じことでしかないのだ。 とはいえ、私の理想に近づくには最も適している場所でな、今はこの座に甘んじているだけなのだ」
 ドズアーノは迷惑そうに言うと、クラフォードは皮肉った。
「甘んじてからどのぐらい経っているんだろうな」
 しかし、それをイールアーズが遮った。
「なんだ、どうした?」
「あの男、どこかで見たことがある――」
 イールアーズはドズアーノをにらめつけていた。

 そこへ――
「フロレンティーナさん!」
 ティレックスはそう叫んだ。 フロレンティーナは別のところから男たちに担架で担ぎ込まれ、その場所へ運び込まれていた。 彼女は気を失っていた。
「ん? なんだ、お前たちは彼女と知り合いなのか、 いつの間にやら外部の知り合いを作ったものだな」
 ドズアーノはそう言った、フロレンティーナはそのまま何かの装置の中へと入れられていた。
「何をしている!」
 ティレックスはそう言うとドズアーノは注意した。
「おっと、そういえば言ってなかったな。 下手な動きをすると私の手が滑ってそっちの女のギロチンを落とすかもしれんぞ、よく考えることだ――」
 くそっ、やはりそうか、ユーシェリアは……ティレックスは悔しそうにその場で踏みとどまらざるを得なかった。
 そしてフロレンティーナはその装置の中へと閉じ込められた。
「妖魔の女とはそうそうないサンプルなのでな、不本意ながらこの際、分析にかけることにした。 大人しくするまでにだいぶ手こずったが、こうなれば――」
 不本意とは? ドズアーノはそう言うとフロレンティーナは意識を取り戻した。
「ここは!? みんな無事!?」
 ティレックスは「フロレンティーナさん!」と叫ぶとドズアーノは驚いていた。
「ちっ、もう気が付いたのか、流石は元暗殺班の女、チュリンカこと、フロレンティーナ=メレストスだな」
 その声にフロレンティーナはすぐさま反応した。
「その声はまさか――ドズアーノ!?」
 ドズアーノは少し嬉しそうに言った。
「ああ、そうとも、私の愛しいフロレンティーナ!」
 愛しい!?
「ドズアーノ! 本当に久しぶりね――」
 ティレックスたちはそのやり取りに困惑していた。するとフロレンティーナが言った。
「ドズアーノは私の元カレよ」
 な、なんだって!?

 ドズアーノはまさかのフロレンティーナの元カレだった。
「フロレンティーナ、お前はいつ見ても美しい女だ――」
「あなたのほうこそ相変わらずね、ちっとも変わらなくて安心したわ――」
 すると、ドズアーノはおもむろにフロレンティーナに訊いた。
「なあフロレンティーナ、私のもとに戻ってこないか?  お前はとても美しい、この場で亡き者にしてしまうのは実に惜しい――」
 それに対してフロレンティーナは――
「ふふっ、なかなかいい話ね。いいわよ、あなたのもとに戻ることにするわ――」
 ティレックスら3人はさらに困惑していた。しかし――
「そうと決まったら私をこんなところに閉じ込めないで、あなたのそばに置いて頂戴な――」
 だが、ドズアーノは笑っていた。
「ははははは! 流石だなフロレンティーナ、女はあざといとはお前の弁だがまさにその通りだ!  そしたら妖魔となったお前の術で私を取り込むつもりだろう?」
 フロレンティーナは調子よく答えた。
「ふふっ、最初からヨリを戻すつもりもないクセに。当然、私も端っからそんなつもりもなくってよ♪」
 フロレンティーナはドライだった。
「ええっと、どういう――」
 ティレックスは理解が追い付いていなかったようだ。クラフォードが仕方なく説明した。
「つまりは2人は別れ、関係を断っているってことだ……なんで俺がこんな説明――」
 フロレンティーナは調子よく話した。
「別れたっていうより、こんな男だから捨てたのよ♪  もっとも、歳が結構離れているし、趣味が全然違うから話が全然合わないし、 それに自分が気に入らないことがあるとすぐに手を上げるしさ。 さらに言ってしまうと浮気性だから、その時はしっかりとビンタをさせてもらったわ♪」
 そんなフロレンティーナに対してティレックスとクラフォードは呆気に取られていた。 付き合っていた時に不満が爆発していたようだ。
「ビンタ……フロレンティーナさんってちょっと怖い――」
「……女は得てしてそういう生き物だからな、特に例のおねーさんを見ていると大体わかるだろ」
「言われてみれば確かに。覚えとく」