エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第5章 最強の女流剣士

第140節 足跡

 ラヴィス島――本当に何もないような島で、ティレックスたちは迷っていた。だが――
「新しいタイヤ痕があるな、少なくとも何かがあるのは間違いなさそうだが」
 クラフォードは地面を観察していた。
「だけど、どこに行っても全く何も見当たらないってのがな――」
 ティレックスは力なくそう言うと、ユーシェリアが励ますように言った。
「大丈夫、絶対に何か見つかるはずだよ! だからティレックス、絶対に見つけるよ!」
 ユーシェリアはやる気満々だった。

 それから30分経ち――
「これは本当にヤバイな、マジで何も見つかんない」
 スレアがそう言うとフラウディアが言った。
「あれからずいぶんと時間が経ってます、一旦戻りましょう!」
 スレアは頷いた。2人でそこへ戻ると、ティレックスたちが先にその場所にいた。
「あれ、みんな戻っていたのか――」
 イールアーズはイライラしていた。
「俺はこんなことをしにここに来たんじゃない! なんなんだこれは!」
 クラフォードはなだめていた。
「気持ちはよくわかるが言う相手が違う。 しかし、こうも何もないとなると流石にお手上げだな。 敵がこの海域をフタしていることと、この島自体に何らかの痕跡がある以上は何かがあるのは間違いないが、 ここは一旦出直してくるしかないだろうな」
 そう言われると、ティレックスは渋々諦めざるを得なかった。 仕方なく一旦出直すことにしようかと思い、立ち上がろうとした時だった。
「ん? あのー、ユーシィとフローラ姉さんは?」
 フラウディアは2人の姿がないことを指摘した。それに対して4人は困惑していた。

 ティレックスたちはすぐさまユーシェリアとフロレンティーナが探っていた場所へとやってきた。
「確か、あの2人はこの辺りを探っていた気がするな――」
 クラフォードがそう言うとティレックスは答えた。
「ユーシェリアと最後に話をしたのはこの辺りだった。 だからこの辺りにいるかはわからないけれど、とにかく2人を探してほしい!」
 5人は頷くとそのうちの一人、イールアーズは愚痴っぽく言った。
「世話が焼けるな。ただ、それでもいきなりいなくなるというのも妙な話だな」
 クラフォードは頷いた。
「言い換えればまさに何かがあるからっていう認識もできなくはないんだが」
 するとそこに――
「なんだこの短剣は――」
 イールアーズはそれを拾い上げた。そこには鞘に納められていた短剣が投げ捨ててあったのである。
「錆びてるわけでもねえし昨日今日放られたって感じか――」
 イールアーズはそれをティレックスに投げ渡すと、フラウディアは驚いた。
「それ! フローラ姉さんの!」
 なんだって!?
「確かか?」
 ティレックスはそう言いつつフラウディアに手渡すと、彼女は間違いないとすぐさま頷いた。 ということはまさか――
「おい、あれ!」
 スレアは何かを見つけて大声でそう言うと、ティレックスは慌てて駆け寄った。
「これは!」
 ティレックスがそれを拾い上げると、それは2本の剣だった。
「それ、リリアさんが作った剣じゃないか!?」
 クラフォードがそう言った。ティレックスは答えた。
「ああ、これはユーシィの剣と、こっちは”フェザード・スティンガー”……もとい、アリエーラさんの剣だ。 つまり、フロレンティーナさんもユーシィも丸腰……もしかしたら敵に拉致されたのかもしれないな――」
 さらに――
「なあ、あれもそうか?」
 クラフォードは何かを見つけてそう言った。全員で慌てて駆け寄るとそこには――
「フローラ姉さんの花飾り! リリア姉さんが作ったデザインだから間違いないです!」
 と、フラウディアはそう言った。
「ということは間違いなく2人は拉致された可能性が高いってことか。でも、どこに?」
 ティレックスは考えるとクラフォードが道を指さしつつ言った。
「なら、その道なりに追っていけばいいんじゃないか?」

 クラフォードの言う通り、落ちていたものを辿って進むが、 そこはゴツゴツとした岩場があるだけだった。
「ここは俺も一度探しているところだが、何も手がかりはなかったんだ」
 ティレックスはそう言うと、フラウディアは岩の隅っこに何かがあることを指摘した。 それをティレックスは拾い上げると――
「これは――ユーシィのリボンだな、リリアさんに作ってもらったって喜んでいたから間違いない。 でも、こんなところに何かあるのか?」
 5人はその場所をいろいろと探し始めた、すると――
「あれ、もしかしてあれかな?」
 フラウディアは思い立ち、今度はくまなく岩を調べ始めた。すると――
「みなさん! この岩だけ人工の岩です! 見てください!」
 隠れたところに金属の何かが!
「あからさまな人工物だな、何かの操作盤か?」
 クラフォードがそう言うとイールアーズも言う。
「この配置に操作盤とくれば秘密工場の入り口の隠しスイッチか何かになるんじゃないか?  だとしたらさっさと行こうぜ」
 フラウディアは頷き、操作盤のスイッチを操作すると――
「この岩自体が入り口だったのか」
 スレアはそう言った、その人工物のような岩が割れると、中には人工的な建物内部が――
「タイヤ痕があることなどを踏まえるともしかしたら他にも入り口があるのかもしれんが―― 今はここから入るしかないみたいだな」
 クラフォードはそう言うと内部に首を少し突っ込んで様子を見ていた。
「警戒していても仕方がないか、入るしかなさそうだ。 そもそもここまでくれば敵もこちらの状況を把握しているはずだ、2人が拉致されていることだしな」
 5人は施設内部へと侵入した。

 施設内部に入ると、そこは不気味なほど静寂に包まれていた。
「どうなってる?」
 ティレックスがそう言うとクラフォードが言った。
「敵がこっちを把握しているってことじゃないのか?  それに、向こうは2人を拉致している、だから無駄な戦いをするつもりもないことになるだろう。 となると、俺たちとしてはどうすべきか考えなければならないわけだが――」
 早い話、人質か――
「気に入らないが、相手の出方次第で物事を進めないとダメってことだな。 それにドズアーノ――どういうやつだかあまりよくわからんが、 フロレンティーナさんがやたら警戒していたようなやつだから、 予め何を考えていても無駄に終わる可能性が高いしな――」
 スレアにそう言われるとクラフォードは悩んでいるようだが、イールアーズは不機嫌だった。
「気に入らねえ――敵の思い通りにしかならねえってのがすごい気に入らねえ――」
 気に入らないのは山々だが、ここは堪えるしかない。
「――イールってイメージ的に薄情なやつだとは思っていたけど、 意外にも結構味方のことを気にしてくれるんだよな」
 クラフォードがそう言うと、ティレックスとスレアは「同感」と声をそろえて言った。 フラウディアはそんなやり取りを見て少しだけ嬉しそうだった。

 さらに進むと、そこには分かれ道があった。道は3分岐、つまり十字路となっていた。 そんな中――
「右のほうから土っ気の匂いがしてくる感じだな、もしかしたら何かの採掘ポイントかもしれない」
 イールアーズはそう言うとスレアも反応した。
「逆に左のほうからは微かに草っぽいにおいがしてくる気がする、もしかしたら外に通じている可能性があるかもな」
 そこへティレックスが、
「ならばこうしよう、右と左の二手に分かれるんだ、 5人しかいないから3パーティだと1人孤立してあんまりよくないしな」
 そう言うとイールはぼそっと呟いた。
「俺は別に1人でも構わんがな」
 無論、言うまでもなく却下である。

 左のほうにはスレアとフラウディアが行くことにした、つまりお熱いカップルパーティである。 しかし、2人はマジメに工場内を散策している。 リオメイラの時もそうだったが、こういう場合は至ってマジメな2人である、そいつは安心だ。
 2人は通路を進んでいくと、次第に広い場所へと出た。 そこにはトラックのような乗り物があり、奥にはシャッターがあった。
「車庫ってところか、つまりここが工場の搬入口だな。 入口からかなり進んできたから出口として使えるかもしれないな」
「確かにそうですね。車もありますから脱出にはいいかもしれませんね」
 スレアとフラウディアは各々そんなことを言って脱出の際の行動を考えていた。