ある日の昼下がり、フェラルは日課としている剣術で汗を流していた。
「ふう、このぐらいにしておきますかね、今日は長居し過ぎてしまいました――」
すると、フェラルは入口のほうから何やら重厚な鎧を見のまとった剣士がやってくる光景を目の当たりにしていた。
「あら? お客さんかしら?」
しかし、それにしてはなんだか物騒な印象だった。
そいつが自分の元へとやってくると、そいつは口を開いた。
「貴様が白銀の貴公子・フェラル=エスハイネだな?」
それに対してフェラルは不機嫌気味に言った。
「人の土地に入り込んでおきながらその様な態度、またずいぶんと失礼な方ですね」
すると、男は剣を引き抜きながら言った。
「白銀の貴公子・フェラル=エスハイネ! 貴様の命、このギスパールがもらい受ける!」
ギスパールはフェラルに襲い掛かった!
フェラルが持っているのは木刀、相手の剣には到底太刀打ちできない、
フェラルは軽い身のこなしを利用して防戦一方だった。
「流石は白銀の貴公子・フェラル=エスハイネ、そう簡単にはやられんか!」
「お待ちなさいな、私は木刀、あなたは真剣、これではあんまりではありませんか?
このような形で私を討てたとして、それであなたは満足ですか?」
「ここまでしなければ相手をしてくれんかと思ってな!」
確かにそうかもしれないような気がしないでもない。
「いいでしょう、そこまで言うのであれば覚悟なさい――」
そう言いながらフェラルはギスパールの腹にエーテル弾を一撃見舞い、
ギスパールがのけぞったところで隙をついて家の中へとすぐさま戻った。
そして自分の剣を取り出すと、そのまま歩いてギスパールのほうへと戻っていった。
「本当はあまり使いたくなかったのですが、この際ですから仕方がありません」
そして、その時の勝敗は――
「私の剣は壊されることとなりましたが、その剣で彼の顔に傷跡を付けたことで勝敗は決しました。
それにしても、あの時は無理なさらなくたっていいのに、あなたはそのまま去ってしまわれましたね――」
重剣士は答えた。
「情けなどいらん。
いずれにせよ、俺の目的は貴様の首! そしたら次は蒼眼のシャナン、貴様だ――」
シャナンは悩んでいた。
「下手に名声など得たところでろくなものではありませんね……」
そこへフェラルは態度を変えて臨んだ。
「そこまで言うのなら止めはしません、お好きになさいな。
その代わり、私は容赦しません――」
そして、剣を引き抜こうとすると、重剣士は得意げに言った。
「ふっ、しかし、貴様のかつての剣はこの俺が破壊した!
”セイブ・ザ・クイーン”がなくてはこの俺に太刀打ちできまい!」
すると、フェラルはため息をついた。
「残念な方ですね、武器などなくとも技があります、
武器がないというだけでこの私を見くびっておいでとは――」
そして、フェラルは別の剣を引き抜きつつ言った。
「それに、あなたに破壊された剣ですが今では御覧の通り、剣としての原型をきちんと戻しておりますよ」
そんな、まさか――重剣士は驚いていた。シャナンはその剣を見て気が付いた。
「あれ、その剣、もしかして――」
その剣の形状には特徴があった、ただ普通の剣としての形状ではなく、
どういうわけか、おしゃれなアクセサリにも見えるようにデザインが施されていたのである。
そう、ほぼ言うまでもないが、
「はい、この剣はリリアリスさんに打ち直してもらったのですよ。
それに、以前よりもとても軽いです、非常に使いやすくなっていますね」
フェラルはセイブ・ザ・クイーンを両手でしっかりと構えると、重剣士に向かって言った。
「さあ、今回は容赦しません。どこからでもかかってきなさいな!」
重剣士さん、ご愁傷さまです。もはや得物の性能は依然のそれを遥かに逸脱していることは想像に難くない……。