ティレックスらを乗せたボートはフロレンティーナの操縦によってラヴィス島へと向かうこととなった。
波は穏やか、敵が接近してくる気配もなく順調にラヴィス島へと到着したのである。
「それにしても、誰もいないってのも不気味だな」
イールアーズがそう言うとティレックスが説明した。
「この島はアルディアスの領土だからな、
リオメイラやリジアルと同じで事を荒立たせて目立つようなことを避けた結果なんだろう。
それに正直、この島についてはアルディアスの領海内にあるというぐらいで実はあまりよく知られていない。
だから、存在自体はわかっていてもそれ以上話題に上ることはないんだ」
さらにユーシェリアが説明した。
「場所がね……。
昔はこの海峡をアルディアスとルダトーラとの交易のルートとして使ってたって言うけど、
今はディスタードとの戦争でアルディアス民も気軽に行くことができないみたいだしね」
そこを利用されたということか。
一方でガレアの軍本部にて、ラミキュリアとウィーニアはデスクに向かって仕事をしていた。
その2人の様子をルヴァイスがじっと見ていた。
「ウィーニアさん、わざわざ手伝ってもらってすみませんね――」
ラミキュリアがそう訊くとウィーニアは楽しそうに答えた。
「そんなこと、気にされなくたって大丈夫ですよ、ラミキュリアさん!
とにかく、なんとしてでもディスタード本土軍の暴挙を止めましょう!」
各国に働きかけてディスタード本土軍を本格的に包囲し、
さらにディスタード本土軍をそのまま壊滅させようという計画の元、作業を遂行していた。
「これが全部終わったらラミキュリアさんと一緒にお酒が飲みたいな♪」
と、ウィーニアは嬉しそうに言った。
「あら? ウィーニアさんってお酒は飲めるほうですか?」
「ええ飲めますよ、クラフォードからは酒豪って言われているんですよ♪」
その話を聞いていたルヴァイスは絶句していた。
「コンピュータに強い女性陣はお酒にも強い、ということか……」
そこへウィーニアがルヴァイスに訊いた。
「ルヴァイスさん! バルナルド国からこのような内容でメールが届いていますが、いかがなさいます?」
ルヴァイスは慌てて反応した。
「えっ、バルナルド!? ああ、それは私に任せてくれ――」
「それじゃあ転送しまーす♪」
さらにエイジ……ヒュウガのことだが、彼は研究所にこもってガレア兵たちに何やら指示しながら作業を進めていた。
「エイジさん、これもですか?」
ジェタはエイジに指示を仰いでいた。
「ああ、そこにあるもの全部だ、全部それぞれの船に設置してもらいたい。
設置が終わったらどうするかはまた後で指示を出したいと思う。
とにかく、なる早でお願いしたい」
「はい、エイジさん! その様にいたします!」
ジェタはそう言いながら作業に戻っていった。
それに対してエイジは端末をいじりながら自らを皮肉っていた。
「ったく、他人に指示をだすとか柄にもないことを――まあ、今に始まったことじゃないが」
クラウディアスではいよいよディスタード本土軍が上陸し、戦闘を開始していた。
「アリエーラ様! 敵の数が予想以上に多いです!」
アリエーラたちは既にアクアレアに到着しており、兵隊たちから報告を受け取った。
「とうとう来ましたね、それではみなさん、よろしくお願いいたします!」
アリエーラはそう言うと、一緒に戻って来た人に呼びかけた。
「こんな状況で不謹慎だけど、昔を思い出しますね――」
フェラルは剣を取り出すと、そのまま敵陣へと突っ込んでいった。
もちろん、その勢いに他の面々もついていく。
敵陣の目前までやってくると、フェラルに対して銃撃が――
「あら、ご挨拶ですね――」
ついクセでバリアを張ったのだが、そもそもクラウディアスのシステムにより、
銃による攻撃は威力が激減されるのである。それについて彼女は――
「私としたことが――忘れておりました」
それに対してディスタードの兵士が暴言を吐いた。
「なんだこのババァは?」
しかしフェラルは特に怒るわけでもなく、冷静に言い返した。
「この私をババァ呼ばわりですか、
かつては白銀の貴公子と呼ばれたこの私をババァ呼ばわりとは、私もずいぶんと地に落ちたもんですね――」
「はぁ? 白銀の貴公子? なんだそれは? 第一、ババァが貴公子なわけないだろ?」
それは確かにごもっともなのだが、彼らはこの後、彼女にそう言ったことに対して後悔することは明白である。
「彼らにはきついお仕置きが必要ですね――」
無類の白銀の貴公子ファンであるシャナンは彼らの発言にいらだっていた。
「いずれにせよ、敵であることに変わりはありません、敵とあらば倒すだけのこと――」
そんな2人のやり取りに対し、アリエーラはぼそっと呟いていた。
「やっぱり、天の裁きを打ち込んだ方がよかったのでしょうか――」
フェラルは自らの剣を振りかざし、敵を攻撃していった。
「なんだこの女! やばいぞ、一旦引け!」
しかしフェラルは――
「逃がしはしませんよ、このクラウディアスの地を踏みにじるものは何人たりとも容赦はしません」
敵に対してエーテル弾を放って足止めをさせた。だが、そこへ――
「喰らえ!」
全身鎧を身に着けていた重剣士が剣を振りかぶってフェラルに襲い掛かってきた!
「いけません!」
シャナンがとっさに反応し、フェラルの元へとすぐさま駆け寄った、だが――
「心配には及びません!」
そう言いながらフェラルは無理な体勢から身体を捻って攻撃を避け、重剣士の横側からきつい一撃を見舞った!
「ぐはっ! くそっ、やりやがったな――」
「すっ、すごい! 流石は白銀の貴公子――」
その身体能力にシャナンは絶句していた。
「この程度でやられるような私ではありません。それにあなたは――」
重剣士はそう言われると、兜を脱ぎ捨てた。その顔には凄惨な傷の後が――
「白銀の貴公子、よもやこのような場所で相まみえることとなろうとは――」
えっ、知り合いなのか、シャナンはそう訊くとフェラルは答えた。
「違いますよ、この人は私の土地に無断で立ち入ったただの不法侵入者です、それ以上でも以下でもありませんよ――」
それに対して重剣士は――
「ふん、そんなこともあったな。しかし、俺の目的は白銀の貴公子、貴様だけだ――」