エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第5章 最強の女流剣士

第136節 連合軍の策

 ラヴィス島への上陸を実行するため、 話をつけてきたティレックスたちは再度サウスディスタードへと赴き、ガレアへとやってきた。
「サウスディスタードの西端と東端は本土軍の船がたむろしているけど中は手薄?  ラヴィス島をカバーするんじゃなかったのか?」
 ティレックスがそう訊くとクラフォードが言った。
「よくわからんが、恐らくそこまで気が回っていないんだろう。 実際、うちらはあのマダム・ダルジャンで入るのを断念している、その分には効果も絶大と思うが、 いずれにせよ、こちらの動きを予測して外からの侵入を防いでいるだけっていう感じにしか見えないな」
 それにしても、中が手薄すぎるのにもほどがあるような感じである。
「相変わらず大変だな、何がどうなっているのやらって感じだ――」
 と、ティレックスは唐突に、今度はガレアの町のほうを眺めてそう言った、 兵士たちがとてもあわただしく動いているようだ。
「リジアル島で回収したものも全部回収しきったんだね、重たいものが多いからちょっと大変かも――」
 ユーシェリアもその様子を見てそう言った。 しかし、その積み荷の中にとても気になる物体が――
「ああ! あれってまさか!」
 ユーシェリアが驚きつつ言うと周囲は驚いた。 ユーシェリアはその物体があるところへと慌てて駆け寄った。
「どうしたんだ! ユーシィ!」
 ティレックスはユーシェリアの後を追った。
「何だ? 何かあったのか?」
「さあな」
 アーシェリスとクラフォードは肩をすくめていた。
 ユーシェリアはその物体を改めて確認すると、その物体は紛れもなく――
「ほらこれ! アリエーラお姉様の剣! どうしてこんなところに!?」
 あ、そういえば――ティレックスは思い出した、 そういえばアリエーラさんが刃こぼれしているからリリアリスさんに直してほしいって言ってたっけ、 あの人、忘れていったな――ティレックスはそう思った。
 ティレックスとユーシェリアは話をしていた。
「アリエーラさんかリリアさんに返さないといけないな。 どうしようアリエーラさん、クラウディアスで戦いになったら――」
「それは大丈夫、お姉様なら同じような剣のスペアを持っているハズだから、 そんなに心配しなくてもいいと思うけれども――」
 しかしそれをリリアリスが忘れていくとは――それだけ現場が慌ただしかったのもあるけれども。
「私が持っているね。何とかして渡さなきゃ――」
 ユーシェリアはその剣を手に取り、帯刀した。

 ティレックスらの元へフロレンティーナがトラックを運転して現れた。 助手席にはフラウディアが乗っていて、そのトラックの荷台には――
「はい、ご所望のボートよ、早いところラヴィス島に行きましょ」
 サウスディスタードのやや真ん中あたりから直接ボートを出してラヴィス島へと向かう作戦である、 これでは海峡の西口と東口だけブロックしていてもどうしようもない。
 さらに、トラックの後ろからマドファルが操縦する輸送車が現れた。
「乗ってください。 ただし、ボートには人数制限がありますのでせいぜい7~8人といったところでしょうか、 向かうメンバーのみとさせてください」
 ティレックスは考えた。
「うーん、となると――どうしようかな」
 ユーシェリアは言った。
「ティレックス、私たちは行くべきだよ、でしょ?」
 フロレンティーナも言った。
「私たちも連れてって! 恐らく、ドズアーノはラヴィス島に逃げ込んでいるハズ!  私たちはドズアーノとは決着をつけなければいけないのよ!」
「ええ! ですからティレックスさん、お願いいたします!」
 フラウディアも懇願していた。ということは当然スレアも。
「フラウディアが行くのなら俺も行くぞ」
 ティレックスは答えた。
「分かった、なら行こう。 ということは、あとは3人ぐらいか――」
 ティレックスはその場にいるメンツを改めて見て言った。
「クラフォードとイール、お願いしてもいいか?」
 クラフォードは前向きに「ああ、いいぞ」と答えた。 一方でイールアーズは「ま、当然と言えば当然だな」となんだか偉そうだった。
 選ばれなかったメンツは――
「その方がいいかもしれないな。 本当はエクスフォスの魔王の件で世話になったから俺も加勢したかったんだが、 このメンツじゃあそれも止む無しだな」
「だな。くれぐれも無茶するんじゃないぞ」
 ハブられたエクスフォス2名は前向きに言った。
「悪いな2人とも。 でも、まだディスタード帝国が終わるわけじゃない、だから次回手を貸してくれよな!」
 ティレックスも前向きに言った。だが、それに対してマドファルが言った。
「いえいえ、あなた方はあくまで先発隊としていくだけですよ。 次のボートの用意ができ次第、後続の部隊を次々とラヴィス島に送り込む手はずになっているんですよ」
 しかし、クラフォードは――
「これまでの例からするとその先発隊だけで大体事を済ませているパターンになっているんだが」
 もちろんイールアーズも――
「確かにその通りだな。 だから後続の部隊を次々と送り込むつもりなら早くしろよ。 俺らがいく以上、後続を用意するだけ徒労に終わるからな」
 2人がそれぞれそう言うのに対してマドファルは冷や汗をかいていた。
「そ、そう言われましても……善処したいのは山々ですが――」
 ティレックスが言う。
「なるほど、ラヴィス島に来てもいいが人数制限されるのか。 つまり、連中の狙いは各個撃破か」
「なめられたもんだな。だが、俺がいるチームに関してはそんなことしてもムダだってことを教えてやるぜ」
 イールアーズは燃えていた。