エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第5章 最強の女流剣士

第135節 本土軍の策

 クラウディアスでは物事があわただしく動いていた。
「ひっどいわね、天の裁き被弾上等で特攻してきたわよあいつら、頭おかしいんじゃない?」
 フィリスがそう言うと、アリエーラが残念そうに言った。
「私たちは天の裁きをくだすうえでいろいろと議論していたし、それを作ったリリアさんだってずっと葛藤していました。 だけど――彼らはそんなこと気にも留めず、あれほどの兵器を前にしてもクラウディアスを狙って攻撃してくる、 どういうおつもりなんでしょう――」
 それに対してフェラルは言った。
「あの人たちはまさに人員家畜主義、上の者のためなら命も差し出せと、まさにそれを体現していますね。 ディスタード王国最期の日の彼らの行動もまさにそういう感じに見えました。 私は、その現場に手を出すことは禁じられておりましたが、あの時のことは私にとっては屈辱でしかありません。 ですからこの私の力、あの時の屈辱を晴らすため、 そして今は亡き王国の雪辱を晴らすため、今度はクラウディアスの剣となりましょう――」
 エミーリアは嬉しそうに言った。
「フェラル様、よろしくお願いいたしますね!」
 しかし、何より一番嬉しそうだったのは他でもない、シャナンである。
「それにしても、まさかあの白銀の貴公子殿にご尽力いただけるとは、とても光栄にございますね!」
「何を言っているのですか蒼眼のシャナン様、 あなたのような大きな名声を立てたお方がこの私を目標にしていただいていたなんて、 むしろ私のほうこそ恐れ多いことですわ。 それに私は一度は現役を退いた身、再び出しゃばってくるような身の程知らずでしかありませんよ」
「何をおっしゃいますかフェラル様! そんなご謙遜などされなくても――」
 シャナンのそれはもはや白銀の貴公子のファンと呼べるほどのものだった。
「ねえ、それよりさ、そうなると敵の上陸を許しての白兵戦ってことになりそうなんだけれども、 それでいいの? 砲撃とかはしないの? したくないんだろうけれども――」
 と、フィリスが言うとアリエーラが答えた。
「フェラルさんが言う通り、人員家畜主義――つまり、末端の者たちを動かしてやってきているということになるのでしょう。 言い換えれば、船に乗っている人たちはある意味人質みたいなものです、そこへ天の裁きをくだすことはやっぱり避けたいです。 副砲で牽制する手はいいかもしれませんがあくまで牽制だけにして、敵を無力化するのはやっぱりアクアレアとなるでしょう。 ですから――」
 そこへアクアレアの議員がやってきて話をした。
「皆様、エミーリア様、アリエーラ様、是非アクアレアで決着をつけてください!」
 えっ、そんな、いいのだろうか、アリエーラは訊き返した。
「話はすべて聞かせていただきましたが、恐らくクラウディアスのたどる道は他にないのでしょう。 だからぜひディスタード本土軍に鉄槌をくだしてください!  クラウディアスの強さをやつらに見せつけてやりましょう!」
 そのためならアクアレア民は――いや、クラウディアス国民は一丸となってディスタード帝国に対抗することを決断したのである。

 一方でルダトーラ、ティレックスとユーシェリアが戻ると、そこにはアルディアスのお偉方が既にいた。
「ティレックスさん、お待ちいたしておりました、早速ですが話のほうを進めさせてください」
 それについてティレックスのほうから話題を切り出した。
「ラヴィス島の件?」
 お偉方は答えた。
「すみません、実はお恥ずかしながら、ラヴィスについては一切話題にすら出ておりませんでした。 というのも、ラヴィス島に帝国軍の秘密工場があるなど、そもそも信じられなかったというのが実情なのです。 そういったものがあればもちろんこちらでも把握しているハズですが、 その事実を誰かが握りつぶしていたとしか思えないのです――」
 そう言われたティレックスには心当たりがあった、そう、少し前にあったアルディアスとマウナとの戦争である、 マウナ要塞前で起きたあの出来事、まさにあの時に居合わせたアルディアスの裏切り者たち、 恐らく、そいつらの仕業だろう――ティレックスはそう睨んでいた。それを踏まえてティレックスは話をした。
「あいつらの招いた問題はまだまだ残っていそうだな――」
 お偉方は頷いた。
「こちらではほかにもそのような問題がないかを引き続き徹底的に調べている状況です。 それはともかく、ルダトーラさんはラヴィス島の件、お願いできますか?  こうなってしまっている以上、お願いできるのは他にいません、 クラウディアスさんやガレアさん、そしてグレート・グランドさんにも協力いただけるということですが、 今回の件についても――」
 ティレックスは頷いた。
「もちろん、そのために戻ってきた。 でも、問題の海峡は本土軍ががっちりと隔離してしまっている、それを何とかしないことにはな――」
 それにはお偉方から妙案が。
「はい、海峡の西口と東口は本土軍の船でがっちりと固めていることについてはこちらでも調べが付いておりまして、 侵入が困難な状況であることは承知いたしております。 ですが、よくよく見てみると、実は西口と東口のそれぞれ入り口付近だけがブロックされているのみで、 内部に入ってしまいさえすればかなり手薄な状況であることがお分かりいただけるかと思います。 ですから、そこを突けばラヴィス島には侵入できるかと――」
 ん? どういう意味だ? ティレックスは訊くが、ユーシェリアが閃いた。
「あぁ、なるほど、そういうこと――」