エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第5章 最強の女流剣士

第132節 情報取得

 そして、秘密工場から持ち帰ったデータを洗っていたヒュウガたち、 他に戻ってきた者も頼り、さらにデータ解析を急いでいた。
「ティレックス、何か出た?」
 ユーシェリアは訊くとティレックスは首を横に振っていた。
「メモリーカード類は全滅、ヒュウガがさっき言っていたようにあくまでデータ移動用でしか使ってなかったのだろうな――」
「データ復元もできそうだが復元するには結構時間がかかるし、 復元できるとも限らないからな、だから既存のデータから探すっていう原始的な方法で探していくしかなさそうだな」
 ユーシェリアはウィーニアとしては割と珍しく操作が遅かったため、どうしたのか聞いていた。
「あっ、ユーシェリアちゃん、一つずつ確認するのも面倒だし飽きちゃったから、探すのが楽なようにスクリプトを作っていたのね。 で、今はきちんと動くのか動作確認しているのよ」
 ユーシェリアはワクワクしていた。
「すごーい! お姉様、そんなことができるんだ! なんだかリリア姉様みたーい!」
 そう言われたウィーニアは楽しそうに答えた。
「そうなのよ、リリア姉様みたいになりたいなと思ってちょっと勉強したのよね。 で、趣味で作ったモジュールがあるから今それを流用しているんだけど、これで多分うまくいきそうね」
「へえ! すごいですね! お姉様、私にもそのスクリプトをください!」
「もちろんよ♪ ちょっと待っててね♪」
 ヒュウガはその2人をぼーっと見ていた。
「あの2人はどういう話をしているんだ?」
 ティレックスがそう訊くと、同じく、作業をしているアリエーラが答えた。
「スクリプトということですので、 話の流れから恐らくファイル検索をしやすくするためのプログラムを作っているのでしょう。 ウィーニアさんってスキルアップが早い方ですよね!」
 ヒュウガは頷いた。
「もう片方の神の手の持ち主もだな。それにアリエーラさん、あんたもだな」
「私もですか?」
 アリエーラは続けた。
「私の場合はシンクロの影響ですかね? 私にはもともとこういうスキルはなかったハズです。 ですが、今はリリアさんから知恵を文字通り”借りている”ような感じです。 難しいことはさっぱりですが、それでもある程度のことはわかっているような感じがします。」
「技術もシンクロで修得してしまうとか本当にやばい能力だよな。 でも、俺が言いたかったのは、それこそ男女差別みたいなことを言うのは申し訳ないんだが、 こういうのって比較的男のほうが得意だと思っていたんだ―― ほら、エンブリアって全体でもIT技術者って割と男のほうが多いだろ?  だけど、うちらの場合はどういうわけか女性陣のほうが得意な人が多いんだよな――」
 そう言いながらヒュウガは後ろのほうにも目を向けると、 そこにはフロレンティーナが黙々と作業をしている光景があった、 彼女はちょうどラミキュリアみたいな秘書張りの様相で端末を相手にしていたのである。 ちなみにフェラルはこの手のものについてはさっぱりのため、 フロレンティーナの作業をただ黙ってじっと見つめていただけである。
 クラフォードは頷いた。
「それ、俺も思った。言ってもうちでは男性陣でアトラストというがそのあたりをまとめているんだが、 ガレアやクラウディアスも含めると、女性のほうが多数派ってことに驚いたな。 俺なんか配線したり端末を設置したり、あとは電源を入れてマシンを動かすまでが精いっぱいで、 それ以上のことはちんぷんかんぷんだ。 とりあえず、文房具的な使い方まではできるようになったが――せいぜいそれぐらいだな」
「……そもそもガレアは女性が多いからガレア含めたら女性のほうが多数派になるのは当然のことなんだが」
 いや、もちろんそういう意味ではないのは分かっているのだが、それでもそう言いたくなったヒュウガである。
「ほら! どう、アリ? 見れる?」
 フィリスは大がかりな端末本体を一つ一つ接続しながらアリエーラにそう訊いていた。 そこへクラフォードが――
「あんたさあ、さっきすごい能力を使っていたじゃないか、 それ使えばいいと思うんだが何故そんな力仕事をしているんだ?」
 と指摘すると、フィリスは答えた。
「あれ、結構自分に負荷がかかるのよね、だから乱用したくないのが一つ、 もう一つは使う対象にも負荷がかかること、 精密機械が相手だから下手にあれをやると壊しちゃうと思うのよね」
 何でもかんでも都合よくいかないという典型的な例だった。 それにはアリエーラも申し訳なさそうに言った。
「フィリスさん、力仕事を押し付けたみたいでごめんなさい――」
 フィリスは得意げに答えた。
「いいよ、むしろ力仕事は得意な方だし。 アリがちゃんと作業しやすければ私はそれで充分よ」
 フィリスはさらに続けた。
「それより、ウィーニアとユーシィが触っている端末と、私らが確認している端末とで何が違うの?」
「ウィーニアとユーシィが触っているのはデスクの上に設置されていた、いわゆる”使われていた端末”だ。 使われているからデータもいろいろあるんじゃないかと思ってみていたんだが、想像以上にデータがあってな。 一方であんたらのは保管庫という場所に置いてあったもので、 置いてあったのは端末本体よりもハードディスクが平済みにしてあったぐらいだからな。 で、当然ながらデータを保存しておくのならメモリーカードよりもそっちだろうな」
 ヒュウガはそう答えると、ティレックスは驚きつつ訊いた。
「えっ、じゃあ、俺のやっていることってムダだったのか!?」
 ユーシィがなだめるように答えた。
「誤解しないでティレックス! メモカにももしかしたらデータが残っているかもしれないじゃない?  だから念のために確認してもらっているんだよ!」
 さらにヒュウガがフォローした。
「それに、ディスクはメモカのような半導体に比べて劣化しやすく最悪読み込めない場合もあるし、 半導体と比べてディスクはデータを読むまでに非常に時間がかかるからな、特に古いディスクの場合はな。 だから、俺たちとしてはメモカにデータが残っていたほうがそれに越したことはないって言うことでもあるんだよな」
「じゃあ、なんでわざわざディスクにデータを保存するんだ?  聞いている限りだとメモカのほうが何かとよさそうにも聞こえるんだが?」
 ティレックスが素朴な疑問を訊くと、 また別の女性が得意げにその問いに答えた、得意げ……誰なのかは言わずともわかるとは思うが――
「保存データあたりの値段、つまりデータ単価が安いからよ。 それを言い換えると、半導体よりもディスクのほうが膨大な量のデータを保存するのに向いているってこと。 ディスクの難点はいろいろあるけれども、最大の利点は何といっても大量のデータが保存しやすいことこれ然りよ。 一方で半導体はデータの書き換えもしやすいし、ディスクに比べれば劣化にも強くてデータの読み出しも比較的早いけれども、 残念ながら保存容量はディスクにはるかに及ばないわね。」
 その声にアリエーラはすぐさま反応した。
「おかえりなさい!」