一方でリオメイラ組、イールアーズとエクスフォスの2名はどうやらリオメイラの城下を囲っている城塞の空洞の中へと入っているようだった。
そこは古い時代に人々の避難路としても使われたようだが、今では全く使われていないという……
そもそも使い道自体がイマイチわからず、これを使うぐらいなら町から飛び出しているぐらいであり、無用の長物と化しているようだ。
ここでの作戦はこうだ、ガレアの援軍が明朝あたりに到着する、その少し前にこの3人が城門前あたりの広場で騒ぎを起こすという事である。
そうすれば町の警備が手薄となり、ガレア軍の上陸が楽になる。
ガレア軍の上陸でリオメイラ中がパニックに陥ると、
その混乱に乗じてリオメイラ城に潜入している2人も行動しやすくなるという寸法である。
「町の人々の声がする……つまり壁の向こうは町か外か――」
イールアーズはそう言うとフェリオースが言った。
「とりあえず一旦街に出ていろいろ確認したいところだが――」
アーシェリスが2人を促した。そこには町のほうが見える小さな穴があった。
空気の穴らしいが、むしろ使い方としてはこっちのほうが正しいのでは――
「ど真ん中にどでかいエーテル鉱石が見えるだろ?
まさに、あれがある意味リオメイラの町のシンボルと言えるだろうな」
イールアーズが言った。町の真ん中にはあからさまに高くそびえるエーテル鉱石分を含む岩があったが、
周囲はいたって普通の町といえば普通の町で、それこそ田舎町のようにも見える光景だった。
「こんな荒野にある町なんだからやっぱり貧しい国なのだろうか?」
フェリオースはそう訊くとイールアーズは首を振りながら答えた。
「悪いが俺はその手の話には全く興味がないからな、
ここがどういうところでどんななのかって訊かれてもさっぱりだ。
とにかく、予定通り事を起こせればそれでいいだろ?」
2人はため息をついた。
確かに、イールアーズは――いや、ど真ん中のエーテル鉱石を知っていただけでもよしとしておこうか。
一方でリオメイラ城に潜り込もうと向かった2人、
いよいよリオメイラ城の地下牢へと侵入したのである。
「地下牢?」
スレアがそう訊くとフラウディアが小声で促した。
「スレアさん、あそこに見張りの兵隊がいます!」
スレアはそいつを睨めつけると同時に周囲を見渡しながら言った。
「まだあの3人が暴れる前に事を起こすのは得策ではない、厄介だな。
このままここで息をひそめていても見つかる可能性もあるし、他に道はないのか?」
それに対してフラウディアは閃いた。
「ここで夢魔妖女フラウディアの力を使うべきなんです!」
2人は地下牢の中を散策し、なんとか一夜を過ごせる場所を探していた。
なお、地下牢にいた見張りの兵隊はいずれもフラウディアの放った誘惑の魔力により心地よく眠りに落ちたのである。
そんな中、スレアはちょうどよさそうな場所を探していた。
「できれば扉付きの部屋のほうがいいと思うんだが――」
そう言いながらスレアは一つ一つ扉をあけながら確認していた。
「拷問部屋か?」
その部屋は人間を磔にする柱があり、その周囲には血で黒くにじんだ跡が――
「生々しいな、隠れて過ごすにはちょうどいいが――」
スレアはそう言うが、血生臭いような、とにかく何とも言えない異臭がきつくてどうしても遠慮したかった。
そうこう言いながら、地下牢の装いは石造りの通路から急に近代的な内装の装いへと変えていった。
「ここも地下牢なのか?」
フラウディアは頷いた。
「なんだか懐かしい光景ですね、私がここを去ってもここはこのままなのですね――」
フラウディアはおもむろに自分がずっと持っていた鍵を取り出すと、とある部屋の扉を開けた、
そこの装いは先ほどの拷問部屋とは打って変わり、不思議なぐらいに綺麗な装いの部屋だった。
その部屋のやや真ん中あたりに台のようなものが――
「なんだここは? 本当に地下牢の一角なのか?」
スレアは言うとフラウディアは答えた。
「ええ、ここは地下牢の一角――というより、ここも拷問部屋ですね」
そう言いつつフラウディアはおもむろにその台のところまでいった。
「これが拷問部屋? さっきの拷問部屋とはまるで違うようなんだが?」
スレアは驚いているとフラウディアは部屋の扉の鍵をかけた。
「ここで休みましょう、誰も来ないように鍵かけておきますね――」
スレアは少し驚いた様子で「ああ――」と狼狽えたような感じで答えた。