エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第5章 最強の女流剣士

第126節 謎の能力

 作戦通り早速行動に出ることにした一行、 ヒュウガたち第1チームは後方支援という通り、一旦は集会場に留まり、次の作戦のために行動していた、それは――
「インストール完了だ。 これで俺たちは司令塔としての役割が完全なものになるってわけだ、責任重大だな」
 ヒュウガはそう言うとウィーニアは渡された端末をいじりながら言った。
「このポータブルの端末、すごい便利! この作戦が終わったらもらってもいい!?」
 ヒュウガは両手を広げながら「好きにしていい」と言った。
「へえ、こうやって絵も描けるんだぁ! いいわーコレ、流行りそう!」
 そう言うウィーニアに対してヒュウガは本題をぶつけた。
「そういうツールも使って別動隊へ的確に情報を共有してくれ――」
 ユーシェリアとウィーニアは話をし始めた。
「ウィーニア姉様、絵を描くんですか?」
「まあね、リリア姉様ほどうまくは描けないけれども――」
「リリア姉様も絵を描くんですか!?」
「そうだよ! あの人の絵、すごくうまいんだから!  知ってる!? ルーティスの召喚魔法研究施設に飾ってあるあのアリエーラさんの絵、 お姉様が描いたんだよ!」
「ウソー!? すっごい上手な画家さんがいるんだなーってお姉様と話をしてたけど、お姉様特に何も言ってなかったよ?」
「だって、お姉様ってそういうところあるじゃん!」
「確かに! それもそうだね!」
 ヒュウガは改めて両手を広げていた。この2人がこういう話を始めたら、もはやお手上げである。

 リリアリスたち第2チームは早速秘密工場の目前までやってきた。
「よし、そんじゃ早速始めるわよ。」
 リリアリスはそう言いながら”兵器”を例によって何もない空間からいきなり取り出すと、 それに続いてディスティアも抜刀し、レナシエルも短剣を取り出した。
「早速来ましたよ!」
 ディスティアがそう促すとリリアリスは得意げな顔で答えた。
「ふふっ、数だけそろえてきたって無駄だっての。」
 リリアリスの姿は風の中へと溶け込むと同時に敵を1人1人次々となぎ倒していった。
「ディル! 行って!」
 レナシエルは両手を頭上に掲げると、敵のほうめがけて雷撃がほとばしる!  そこへ間を縫うようにディスティアが敵に向かって突撃!
「エレイア、任せろ!」
 そんな様子を見ながらリリアリスは――
「いいわね、あのカップル。なら、私も……」
 リリアリスはさらに本気を出し、その場から勢いをつけて敵へと急接近、 さらには疾風のごとくすべての敵を巻き込むように襲い掛かった!
 そんな様子にディスティアは――
「……もはや人間離れ――精霊離れしているような能力ですね、 敵は木端微塵、もはや私の出る幕はなしですか――」
 そこへ敵の増援がばらけて登場した。
「私も負けていられませんね!」
 ディスティアは雷撃降り注ぐところへ改めて敵めがけて突撃した。
「そうよ、何人かかってきても私らには勝てないってワケよ。」
 リリアリスも再び風となって敵に襲い掛かった。

 一方で第3チーム、別の入口から秘密工場へと侵入すると、早速敵の一個隊を撃破していた。
「暴風と爆雷が敵をひきつけているから流石にこっちは手薄ね」
 フィリスは倒れている敵の近くに持っていた剣を投げ捨てながら言った。 フィリスは敵の懐に即座に接近すると、そのまま敵が構えていたハズの剣を奪って次々と敵をなぎ倒していったのである。 そんなフィリスの能力に、フェラルもクラフォードも驚いていた。
「”ネームレス”さんの力というのはすごいものですね、どれだけ敵がいたところでって感じですね――」
「あっちの暴風女も大概だがこっちの女も相当だな、世の中どうなっているのやら」
 フィリスは自分の大きな剣を引き出しつつ言った。
「敵が近づいてくる、気を付けなよ」
 2人はそれぞれ自分の大きな剣を引き出すとフィリスが気が付いた。
「あら、まさかの大剣メンバー? 奇遇じゃない、似たような得物の使い手同士、テキトーに頑張りましょ」
 クラフォードは驚いていた。
「”女だてら”っていう表現を使うべきではないと言いたいところだが、 それにしても女性陣でこんな重機みたいな得物を扱えるというのには何気に驚きだな。 それこそあの暴風女もデカイ得物を持っているときている、どうなっているんだ?」
 フェラルが答えた。
「いえいえそんな、流石にクラフォードさんのような男性が持つほどの重さはありませんよ。 確かに他の女性が持っているような得物にしては重量があることは否めませんが――」
 すると、フィリスがおもむろにクラフォードに「ちょっと貸して」と言った。 貸して? クラフォードは少々驚きつつ、フィリスに自分の大剣を差し出した。
「別に構わんが――持ち上げられなければ使うことすらままならないぞ」
 しかし、フィリスはどういうわけかクラフォードの剣を自分の頭上に軽々と持ち上げていた。
「確かに超重たいわねこれ、これぞザ・大剣って感じね。 重機って言われたら確かにその通りかもしんないわね」
 クラフォードはその光景に驚いていた。
「”ネームレス”ってのは腕力もやばいのか、よくわからん世界だな――」
 フィリスは否定した。
「んなわけないでしょ、こんな重たいもの、フツーに持てるわけないでしょ。いい、よく見てなさい――」
 すると、フィリスは剣をクラフォードに手渡しつつ、 今度はおもむろにそこにあった装甲車の元へ駆け寄ると、それに手をかけた――
「おっ、おい、何をする気だ――」
 フィリスはその装甲車を両手で持ち上げた!
「うそだろ!? いくら何でも――」
 クラフォードは驚いていると、フィリスは言った。
「ねえちょっと、隣に来て、2人共手伝ってくれない?」
 手伝えって、そんなものを人力で持ち上げられること自体が信じられないのだが。 装甲車といえば重量は10トンを超えてもおかしくないぐらいのものなのだが、それを持ち上げるとはどういう――
「いいから、あんな剣を普通にぶん回しているあんただったらこのぐらいどうってことないでしょ!」
 フィリスがこう言うのでクラフォードは渋々フィリスの隣に来て装甲車に手をかけた、すると――
「なっ!? どうなっている!? 軽い!?」
 クラフォードは驚いていた。さらにフェラルもフィリスの隣に来て装甲車に手をかけた。
「本当ですね、どうなっているのでしょう?」
 フィリスが顎で合図すると、3人は息を合わせて敵の増援口に向かって装甲車を投げ捨てた。 けたたましい音を立てながら装甲車がその場を破壊しながら転がってくる光景に敵は一度に退いていった。
「ど、どうなっているんだ、今のは――」
「まるで重さというのを感じないようでしたね――」
 フィリスは今度はその場にあった鉄の破片をつかみつつ、それをクラフォードに差し出した。 クラフォードは不思議に思いながらそれに手を出すと、今度はどういうわけか、その鉄の破片にものすごい重量感を感じた。
「うぉっ!? どうなっているんだこれは!」
 しかし、その鉄の破片がフィリスの手から離れるとその鉄の破片の重量感から解放され、 勢い余って鉄の破片を放り投げてしまった――
「ちょっ、マジかこれ――」
 フィリスは言った。
「何言ってんのよ、今のはアンタが持ってる剣の重さだからどうってことないでしょ」
 いや、そういうことじゃなくて――クラフォードは頭を抱えながらそう思った。 そこへフェラルが言った。
「なるほどです、つまりフィリスさんはモノの重さを変えることができる能力をお持ちなんですね!」
 フェラルはワクワクしながらそういうと、フィリスは頷いた。
「厳密には多分違うと思うけれども、平たく言えばそういうことね。 いくら魔法でも重さを誤魔化せてもせいぜい1~2トン程度って言われてるけど、 私の能力だとその法則には当てはまらないから純粋に魔法っていう事ではないみたいなのよね」
 なんて恐るべき力なんだ――が、彼女についてはとにかくわからない部分が多いがゆえに、 その程度でしか説明ができないことなんだろう。 確かに、高尚な使い手だと魔法で重さを誤魔化せてもせいぜい1トン程度という話は訊いたことがあるが、 その倍の2トンとか、ましてや10トンなどという話は訊いたことがない。
「それこそよくわからないんだけど、私って相手の性質を無視して攻撃を当てたりとか、 自分でもわからない能力があるみたいなのよね――」
 相手の性質を無視して攻撃を当てる? どういうことだとクラフォードは訊くとフィリスは答えた。
「今回は役に立たないと思うけれども、体のない霊体だとかエレメンタルとか、その手の類の魔物を素殴りできるのよ私。 今回役に立つもので言えば――兵士が使っている防御シールドとか貫通して殴れたりするしさ――」
 もはや何を言っているのか理解に苦しむフィリスの能力だった。 だが、どうして自分にそんな能力があるのかわからない――それもまた理解に苦しむポイントであった。
「だから私の得物はリリアが作ってくれた特別製だけど、 私が力を込めやすいようにちゃんと作ってくれているってワケなのよ」
 この人の得物もやはりリリアリスの作品なのか、それはなんとなく予想はできていたが――