朝のまだ6時前――クラフォードは女性陣を見るや否や、頭を抱えていた。
「どうしたんだクラフォード――」
ティレックスが心配していると、クラフォードが答えた。
「いや、何でもない、女ってのは得てしてだいたいそういうもんだからな、
不思議といえば不思議な感じだ――あえて言うなればそれだけだ」
クラフォードはその場を去っていった。
どうしたのだろうか、そう思いながらティレックスは女性陣の様子を見ていると、
クラフォードの気持ちが何となくわかるような気がした。
「なるほど、確かに女性陣って無茶苦茶仲がいいよな、
なんであんなふうになるのだろうか、不思議だ――」
”局”とか、マウンティングする種族がいるとその限りではないが、
ここにはそういうのはおらず――というより、
リリアリスという強力なリーダーの下に仲良しの女性陣が集っているため、
このような光景が完成しているようだ。
となると、その強力なリーダーであるリリアリスという人柄が気になるところだが、
これまでの通り、変わった人というつかみどころのない不思議な性格が彼女の存在なのである。
「さあ、早いところリジアル島を解放することにしましょ。」
リリアリスが言うとフロレンティーナが答えていた。
「ええ、本土軍に嫌な思いをしてきた人たちのためにもね」
集会場に再び集まった一行、朝食を用意して済ませると、早々に会議を始めていた。
「チームは4チームに分かれるわね。
1つはヒー様とウィーニアの後方支援チーム、ユーシェリアも昨日の通りにお願いね。
ガレア軍も昼頃に着くはずだからラミキュリアと連携をとって頂戴。」
そこへクラフォードが。
「ラミキュリアさん? リファリウスのやつはどうしたんだ?」
リリアリスはすかさず答えた。
「あいつはガレア軍の後方支援よ。わざわざここにいなくたって私がいるから大丈夫でしょ。」
リファリウスにはやたらと厳しいリリアリスだった。
「で、第2チームはどうなんだ?」
ヒュウガが訊くとリリアリスが答えた。
「第2は私とディア様レナシエル様の2人の賢者様という編成よ。」
また偏ったメンバーだな、クラフォードがそう訊くとリリアリスはすぐさま答えた。
「昨日までの調査で大規模な人員が配置されていることがわかったからね、
つまり、それらを一手に引き受けようっていうのがこのチームのコンセプトよ。」
そうだとしたら敵の数が――クラフォードはそう訊くとリリアリスは答えた。
「もちろん、少人数のチームっていうのはそれなりの理由があるわけよ。
調査によるとリジアルに配置されている兵力はだいたい40万、本土軍全体でおよそ150万だから4分の1ぐらいはいることになるわね。
ガレア軍は75,947しかないから兵力差的にはちょっと厳しいことになりそうね。」
自軍の兵力数を細かい値まできちんと把握している当たり流石というべきだろうか。てか、少ないな……何その差。
「ティルア軍は全体で10万弱だが――今のところ実際にこっちに動かせたのは2万程度だ。
バルティオス全体だと100万近くあるハズだが、今回の作戦はティルア軍しか動かせていないからな、そいつは申し訳ない」
クラフォードはそう言うとティレックスも言った。
「ルダトーラも動かせたのは2万ぐらいだ。
他の軍にも掛け合っているようだけど、結局リジアルの作戦にどれぐらいの兵力を集められたんだ?」
「ええ、いろいろとかき集めた結果、40万どころかその半分以下でしかなかったのよ、
つまり、人数的には完全に負けているってこと。
で、肝心の少人数のチームの理由というのは、つまりはそこにあるってワケよ。」
そう言われたクラフォードは納得した。
「なるほど、つまりは少数による襲撃だから、やっこさんもそこまで警戒してくるハズがないって狙いか。
ということはつまり――」
そう、リリアリスは工場に正面から潜入して敵の各個撃破を狙うことにしているという訳である、
リリアリスの力量的には大人数を相手にしても大丈夫そうな気がしなくもないが――
しかし、4チームに分けるという背景にはそういうことも考えられていた、というのも――
「どのチームも第2チームのように戦闘メインになる可能性があるってことか」
ティレックスはそう言うとリリアリスが頷いた。
「この人数にしてみれば流石に数が多いからね。
だから、私らは先発隊として百戦錬磨のフォディアスばりの手練ればかりを集めることにしたってワケ。
白銀の貴公子様に声をかけることにしたのはそうした理由もあるのよ。」
なるほど――ディスティアは納得していた。
「それで、残りの2チームはどのような編成です?」
それにはアリエーラが答えた。
「第3チームはフィリスさんとクラフォードさん、そしてフェラルさんですね。
最後に第4チームはフロレンティーナさんとティレックスさん、そして私の3人となります――」
ティレックスがすぐさま指摘した。
「女性陣のほうが多いのは言うまでもないけれども、どの編成にも必ず男が1人ずつ入っているんだな」
リリアリスは偶然だというが、本当にそうなのだろうか、どうでもいいけれども。
「つか、どのチームにも”ネームレス”が1人ずつ含まれていることに注目すべきなんじゃ……」
最後にクラフォードはぼそっとそうつぶやいた、やはりカギは”ネームレス”――。