リリアリスは端末を操作していて、そのうち声を上げると何人かが彼女に注目した。
「ふふっ、こんな甘っちょろいセキュリティ施したところで全部無駄だっての。
とにかく、ようやく引き出せたわね、秘密工場の地図。
海からの侵入口は一切なくて、地上側からの侵入口しかないって感じね。」
さらにリリアリスは別のデータファイルを取り出した。
「面白いわね、まさかユーラルでの作戦資料まで取れるなんて。」
ヒュウガが言った。
「タイムスタンプが昨日の日付か、ってことはこれから実行される作戦だったりしないか?」
リリアリスが言った。
「そう言われると気になるわね、秘密工場の地図のほうもどういうわけかタイムスタンプが昨日の日付になっているわよ。
しかも設計図面って感じじゃあないから、もしかしたら最近に拡張工事をした後なのかもしれないわね――」
それってどういう――ティレックスが聞くと、フロレンティーナが地図を見ながら気が付いた。
「この工場……まさか、山の中をくりぬいて作っているのかしら?」
リリアリスは考えた。
「言われてみればそうかもしれないわね。
早い話、工場そのものが鉱物資源の採取場って感じ?
だとしたら――いいことを思いついたわ。」
リリアリスは最後得意げだった。いいことを思いついた、何人かは嫌な予感しかしなかった。
あの後、夜も遅くということで、女性陣と男性陣とで別れて夜を明かすことにしたのである。
「フィリスの髪色って不思議ね?」
フロレンティーナが訊いてきた。
「みんなにそう言われるんだけれども、そんなに珍しい?」
「少なくとも、私はまず見たことがないわね。
染めている赤ってのは見たことあるけれども、地毛でそんな赤い色っていうのはさっぱりよ」
そんなもんなのか、フィリスは思った。
「それにしてもさ、リリアとフィリスってタイプ似ていると思わない?」
フロレンティーナはそう言うとフィリスが言った。
「え? そう? リリアのほうが美人補正かかっている気がするけど?」
リリアリスが突っ込んだ。
「まーたフィリスってば、心にもないことを平気で言うなんてイヂワルね。」
フィリスは舌を出して悪びれたような態度で笑っていた。
この辺りのしぐさもリリアリスのそれと似ているような気がする。
「イヂワル言ったのは確かだけど、心にもないことを言ったつもりはないんだよね」
フィリスはそう言うとアリエーラは2度頷いた。しかしリリアリスは明後日の方向を向いていた。
「それにしても、リリアってばファイターなのによくそんな長いスカート履いて戦えるわねぇ――」
ルーティス学園の時でもそんな話をしていたが、
フロレンティーナは改めてそう思いつつ言うと、ウィーニアも反応した。
「その質問、私も訊かれた」
フロレンティーナはウィーニアを見て言った。
「確かに、あなたも長めのスカート履いているわね」
「私のはリリア姉様へのリスペクトですよ。
女性ならではの素敵な姿をしているのに、それでいて男の人顔負けの能力で戦えるだなんてすごく素敵だと思いません?」
言われてみれば確かにそうかもしれない、フロレンティーナはそう思った。リリアリスは答えた。
「なーに、私の場合は大した理由じゃあないわよ、ルーティスでも言った通りだけどさ。
そもそも論として私の体格を見ればだいたいわかると思うけれども、
背が高いということの背景に脚が長すぎるという問題があるのよ。
それこそ、背丈の半分が脚の長さっていうアンバランスな身体だから、
パンツスタイルだとそのアンバランスが目立って変な感じになるのよ。」
そうそう、それである。あの時はフロレンティーナも驚いていた。
しかし、それにしても戦う姿にしてもこだわりがあるなんて――まあ、
あの時はあの時で理由も述べてはいたが、リリアリスが得意げに答えた。
「それこそウィーニアみたく、私をリスペクトしてくれている人がいるからね、
せっかくならいい恰好したいじゃん?」
その気持ちはわかる気がした。それに対してユーシェリアも話をした。
「やっぱりリリアお姉様は素敵です!
んでもお姉様だけでなく、アリエーラお姉様の脚もとても長くて、とても驚きましたね――」
アリエーラもそうなのか、フロレンティーナはなおも驚いた。
「アンバランスな体格ですから服選びが大変なんですよ。
ハイウエストなスカートが普通ウエストなスカートにしかならないんですよ。」
アリエーラが言うとフロレンティーナは思った、それぞれ何かしらで苦労しているんだな、と。
「でも、確かにオシャレな恰好で戦うっていうのはいいわよね。
私もこの服装で挑戦してみようかしら?」
フロレンティーナはそう言うとアリエーラとユーシェリア、そしてウィーニアが楽しそうに言った。
「ぜひぜひ! フロレンティーナさんならきっと華麗な女ファイターになれますよ!」
「そうそう! フローラ姉さんも超美人だもん! 絶対に似合ってる!」
「てか、絶対にモテそうだし! これで彼氏いないのって絶対に変!」
そんな様子にフィリスがリリアリスに言った。
「リリアへのリスペクト数はホントに半端ないわねぇ」
「確かにやばいわね。
私としては全然そんなつもりじゃあないのに、いつの間にやらとんでもないことになっているわね――」
そこにフェラルとレナシエルが話に加わった。
「あら、いいではないですか?
確かに当人にとっては負担かもしれませんが、あなたの場合はそれをむしろ楽しんでいるのでは?」
「そうそう! リリアさんはいつもどーりハードルを上げていけばいいだけの話なんですよ!」
そう言われたリリアリスはやはり得意げに返した。
「ふふっ、確かにそのとおりね。
第一、私としては基本独自路線を突っ走っているつもりでしかないからなんでもいいんだけどね。」
そういうところは流石リリアリスである。