さらに計画は大詰めを迎え、話はある程度収束を迎えていった。
「とりあえず、ディスタード本土軍の物資の流れとして主なルートはリオメイラ島とリジアル島の2拠点が重要なところみたいね。」
リリアリスがそう言うとスレアが訊いた。
「あれ? ルシルメアは違うのか?」
リリアリスは答えた。
「少なからず物資の流れはあるんだけれども違うみたいね。
そもそもディスタードから西の海でなくて東の海のほうからモノが流れ込んでくることが圧倒的だから、
そっちを抑えるべきだと思う。」
シャナンは話を付け加えた。
「ディスタードから西の海といえばまさにこちら側ですね、
つまり、クラウディアスを警戒してのことということですかね。
本土軍は帝国時代初頭より常にクラウディアスを攻めようとしていますから、
現状はクラウディアスとはリアスティン陛下の頃から親交が深いルシルメアとの交流を極力避けようと考えているのでしょう」
リリアリスは頷いた。
「ルシルメアは同じガレアと同盟を組んでいるけど中立国家であるというルーティスとは違って、
クラウディアス側とはまだ関係を結ぶことを保留しているけど――まさにおじ様の言う通り、
地理的にクラウディアス側にある国を警戒しているのだと思う。
最近はクラウディアスの一方的な鎖国体制とガレア排斥法がきっかけとなって本土軍にもスキを見せちゃったけれども、
現行は本土軍もルシルメアは難しいと踏んでいる可能性がありそうね。」
そして後日、リオメイラとリジアルをどう攻めるかの具体的な戦術会議へと話は発展していた。
「今、一番ネックなのは以前に奪取に成功した”エナジー・ストーン”の出所が全く分かっていないことね。
あれにはとてつもないほどのエネルギー量が保有されているから、あれを使ったとんでもない兵器を出されると――かなり心配ね。」
アリエーラが訊いた。
「ですが――あれは制御が難しい代物だったと思います。
だから、そんなもので兵器を作るだなんて自分の身を滅ぼすとしか――」
リリアリスは頷いた。
「そう、それを本土軍だからやりかねないのが困りものなのよ。
末端にばかり危険な目に合わせて上の連中は安全地帯から敵を倒すさまを見届けていればそれでいい。
戦争を仕掛ける者というのは得てしてそういう者ばかりだけれども、本土軍の場合は度が過ぎていると言ってもいいレベル、
それがまさに本土軍のやり方、そんな敵を相手にするんだからこちらとしてもかなり精神的にくるものがあるってわけよ――」
クラフォードは難しい顔をしていた。
「人員家畜主義的な連中としてはそんなこともいとも簡単にやってしまうってわけだ、
まさに絵に描いたような外道のモデルそのものだな。だからこそ真の強敵とも言えるわけだ――」
しかし、そういう国の体制に不満を持っているものも少なからず存在し、
故に、民の一人一人のモチベーションが上がらないのもポテンシャルがイマイチなのもそういった背景があるからこそでもあった。
「でも、そういう国って長続きしませんよね普通。どうしてそんな国が成り立っているのでしょう?」
ルーティスからやってきたナミス市長がそう訊いてきた。
彼女はルーティスを代表してやってきていた。彼女に対してリリアリスが答えた。
「それ、実は私もずっと気になってた。
でも、答えは案外単純、古・ディスタード王国時代からの根強い支持があるみたいで、
それが帝国となってもまだずっと支持され続けている背景があるみたいね。
それこそ後ろ盾という存在がいて表立って出てくることはいないんだけれども、
それとの橋渡し役である人物こそがまさにベイダ・ゲナ本人なのかもしれないわね。
といってもこの話は噂でしかないから、本当かどうかは知らないんだけどさ。」
それに対してナミスは考えていた。
「あら、確かにそんな噂を訊いたことがありますね。
ディスタード帝国の後ろ盾の存在――この際ですからきちんと調べてみる必要がありそうですね。
もしかしたらルーティスの資料室を探せば何か出てくるかもしれません」
リリアリスは任せてもいいか訊くと、彼女は笑顔で答えた。
「ルーティスは以前のような戦場になるような事態は避けなければならないのです。
ですから、学術都市としてできることならなんでもお申し付けください」
ルーティスは本当に中立都市なのだろうかと言いたいところだが、
ルーティスは以前のような戦場になるような事態は避けなければならない……その一言がすべてを物語っていた。
そして、リリアリスたちがマダム・ダルジャンにて出港の日――
「とりあえず段取りはいいかしら?
フラウディアの用事もちょうどいいって言ったらなんだけど、まずはヘルメイズに行くわよ。」
リリアリスが言うとフラウディアは答えた。
「はい、それに――私の用事なんてないです。
私は単にリリアさんたちに素敵な風景を見てもらいたいだけですから――」
「あら、そうだったわね、ごめんごめん。じゃあ、早速出発しようかしら?」
そう、各島へは個人所有の船であるため、敵にも感づかれにくいということを装っての侵入である。