エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第5章 最強の女流剣士

第119節 連合国への足掛かり

 話はだいぶ前にさかのぼるが、クラウディアスから出発する前――
「これから会議を始めるわよ。」
 クラウディアス城内にあるA会議室という広い部屋においてリリアリスがそう言うと、 会議に参加しているクラウディアスの重鎮たちが一堂に会し、酷く緊張感をもって望んでいた。 そんな中リリアリスは――
「まあまあ、そんなに堅くならずに。みんな私の話なんかリラックスして聞いて頂戴よ。」
 この人の性質上、次第に緊張が解けていくような話題の進め方をするはずである、妙な話術使いだ。
 そんなことはさておき、会議を進めることにした。 その議題はリリアリスが端末の映像をプロジェクタを使ってモニタに映していた、その内容とは――
「ディスタード帝国本土軍攻略計画!?」
 そう声を上げて驚いていたのはクラウディアスの騎士団長であるラシルだった。 彼だけではない、何人かがとても驚いていた。
「なかなかインパクトのでかい計画かもしれないけれども、 ここ最近のディスタード本土軍の行動には目に余るものがあるからね、 各地で勢力的に活動していてガレアも連中にやられたし、 クラウディアスにもここ最近は進撃を繰り返しているじゃない?  アルディアスやルシルメアでも謀略を企てていたし、 それこそセラフィック・ランド発クラウディアス着の定期連絡船も直に襲撃されているし――」
「てか、ガレアと同盟結んでいるルーティスがクラウディアス側についたことで焦りを感じ始めた結果なんじゃないか?  でも、そのおかげか連中の動きも目に見えてはっきりとわかるようになったから結果オーライって感じだけどな」
 スレアはそう言った、確かにそれも一理あるし、 そもそもリリアリスが睨んでいたことでもあるためか、まさに彼女が言った通りの展開となってきたようである。
 それはともかく、いろいろと挙げるときりがないほどの謀略を企てているディスタード本土軍、 そいつらに対していよいよ鉄槌をくだすことを決めようというのが今回の会議の趣旨なのだという、リリアリスは話を続けた。
「で、いきなり国単独でやろうにもクラウディアス的には連中に対抗するほどの軍備がないから――それこそ、 防衛用にはいくらでもあるけれども攻撃用のものについてはさっぱりだから、直接攻撃するのは難しいよね?  それに――ちゃんとした軍事力を保有している国であってもディスタードには敵わないから二進も三進も行かないという国も多いハズ。 だから私がやりたいのは――」
 リリアリスは端末を操作すると、モニタの内容が切り替わった。
「つまり、みんなでディスタードを倒しましょうっていうことよ。」
 モニタの内容は”クラウディアス連合軍の結成”と書かれていた。
「みんなったって、”クラウディアス連合軍”ってのは具体的にどんなものなんだ?  大昔に同盟を結んだグレート・グランドとセ・ランド、そしてアルディアスとルーティスでやるってのか?」
 スレアはそう訊くとリリアリスは答えた。
「クラウディアスが働きかければ他の国もそれに応じて動いてくれる――そう信じてこの名前にしたワケよ。 つまるところ、”ディスタード、お前らいい加減にしろ!”っていう国を集めて連中に鉄槌をくだすための包囲網を作ろうというのが今回の作戦のコアってワケよ。」
 その話に重鎮たちは舌を巻いていた。
「国レベルで攻める以前にまずは連合国を結成しての包囲網か――ずいぶんと大掛かりなことになりそうだな」
 スレアも驚いていた。

 それから数日後、最初の会議で決まった内容をもとに各国へ働きかけると、 クラウディアスとの国交の正常化が以前に比べてどんどん加速し、相互に大使館を設置したいという動きも加速する。 また、ディスタードを包囲する目的はもちろんだが、国同士の交流を深めていくという目的が先行するようになっていた。
 それによってようやく本格的なクラウディアス連合軍の結成へと至り、 ディスタード本土軍を撃退するという目的が現実味を帯びるようになってきたのである。
「問題は”どうやって”やつらを撃退するかだ。 今やディスタードは強大な軍事国家、本土軍とは対立構造を取っているガレアの働きかけはあるかもしれないけれども、 ディスタード・カーストで言えばガレアなんて最下位、実力行使で本土軍に太刀打ちできるはずもないんだろう?」
 その日の会議において、ティルアからやってきたクラフォードはそんなことを口にした。 リリアリスは答えた。
「もちろん、正面から攻めるのは自殺行為ね。 それに、ディスタード・カーストで言えばガレアなんて最下位……ではあるけれども、 それでも一応本土軍を押しのけている実績もあるから、あっちもそれなりに警戒はしているハズね。 それに……そういう連中だけれども、一つだけ大きな弱点があるのよ、それは――」
 ディスタード帝国の最大の弱点、それは資源に限りがあること、 地の利を得て設置されている帝国の拠点ではあるが、
「兵糧攻めにはすこぶる弱いということか、島国最大の弱点だな」
 そう、ディスタードは島国なのである。 元々は現ヘルメイズ領に拠点を置く大陸王国国家だったのだが帝国となることで大陸から離れ、島の上へと拠点を遷したのである。 そして自国の資源の乏しさを補うため、元々もっている強大な軍事力を駆使して周辺諸国を植民地化、自国を強大化していったのだ。
 それについてはリリアリスが話した。
「だから、まずは連中の力を削ぐため、その周辺諸国からじわじわと削ぎ落していくのはどうかなと思って。 もちろん今言ったように正面から堂々とやるのは難しいから水面下からこっそりと仕掛けていくことにするよ。 そういう作戦だったら、ここには腕に覚えのある猛者たちがたくさんいるわけだからできそうだと思えない?」
 シェトランドを代表して同席していたディスティアが答えた。
「なるほど――連中は数ばかりが多いが個の力についてはたかが知れているディストラード人種、 私らシェトランド人に比べれば赤子の手をひねるような存在ですが――まさしくそれを利用する作戦ってわけですね?」
 リリアリスは頷いた。
「まさにそれよ。 第一、腕に覚えのある猛者たちがたくさんいるって言った私自身もそのうちの一人、 このまま連中を野放しにしておくわけにはいかないのは私とて一緒、だから今回の作戦を考えることにしたってワケ。」
「あんた、何者だか知らないが、クラウディアスの重鎮やってみたり、いろいろと忙しいな」
 クラフォードはリリアリスにそう言った。