エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第5章 最強の女流剣士

第117節 リオメイラの現状

 アルディアス大陸からそのまま北北東方面へと舵を切り、リオメイラ島の港がある反対側から上陸した一行、 リオメイラ島には予定通りフラウディアとスレア、そしてイールアーズが降り立った。 それに加えてエクスフォスの2人も一緒に降り立った。
 リオメイラ島はわずかな森の中に荒廃した土地の広がる島だが島の中央に大きな町があり、 そこがリオメイラの中枢なのだそうだ。
「俺らはリオメイラ島ってのは初めてなんだが」
 先行するフラウディアとスレア、それに続いてイールアーズにエクスフォスの2人は島を進んでいる中、 アーシェリスはそうぼやき始めた。
「俺も島の中枢にまでは行ったことはないし、入り組んだ地下道というのがあるらしいが全容までは把握していない。 それこそ、リオメイラ城にまで地下道が伸びているということだがよくわかってないしな。 面倒な土地だから俺が一番詳しいだろうと思って名乗り出たんだが――」
 イールアーズがそう言うと、今度はフラウディアを見ながら言った。
「まさか、それを上回るやつがいるとは予想外だな」
 スレアが言った。
「おい、まさかまだ彼女がかつての夢魔妖女フラウディアだって疑っているんじゃないだろうな――」
 イールアーズは横に首を振りながら「違う、そんなんじゃない」とだけ言った。 イールアーズはエクスフォスの2人の背後に回った。
「なんだ、どうしたんだ?」
 フェリオースがそう訊くと、イールアーズは前を行っている2人には聞こえないぐらいの小さな声で話した。
「この際だからお前らだけに教えておく。 リオメイラは俺が一番詳しいだろうと思って名乗り出たんだが――要するにそう言うことだ」
 早い話、自分よりもはるかに詳しいやつがいて名乗り出たことを後悔していたということらしい。 それを聞いたアーシェリスとフェリオースはその気持ちを察した。
「まあ――別にプライドがあるわけではないけれども、一度手を上げたからには後には引きずらい感じがするよな。 それこそ、リリアさんの前で実は――とか言い始めると、あの人一言余計だからクソミソ言われてもおかしくはないしな」
 フェリオースがそう言うと、アーシェリスは意地悪気味に言った。
「リリアさんならクソミソで済むけれども、 あのリファリウスのヤローだったらもっとヤベーからな、 ヤツは地獄耳だから胸のうちにしまっとくのが正解だぞ!」
 そう言うとイールアーズとアーシェリスはお互いに頷き、フェリオースは苦笑いしていた。
「おい、何やってんだ? さっさと行くぞ!」
 スレアが3人にそう言うと、3人は慌ててフラウディアとスレアの元へと駆け寄った。

 アーシェリスは訊いた。
「なあ、ところでリオメイラ島ってディスタードの本土軍が駐留してるんだろ?  誰もいないようだがどうなっているんだ?」
 スレアが答えた。
「この島は見ての通り、荒廃した土地が広がっているからな、つまり普通は誰もがスルーするような島でしかない。 だから帝国軍もわざわざ見張りをつけたりとかするような場所ではないってことさ」
 スレアはさらに続けた。リオメイラはそもそも物資の乏しい国であり、 帝国軍が拠点として活用するのに必要なものが乏しく、 植民地として統治するにしても十分なリソースが得られないということから、 結局、水面下でディスタード本土軍が裏で糸を引いてリオメイラを動かしていく、というのがせいぜいなところだそうだ。
「交易だけで栄えた国――こんな砂漠の真ん中にあるような国で、 それ以外は資源もなく何もない土地というんじゃあディスタード帝国軍でもどうしようもないのか」
 アーシェリスはそう言った。 しかし、交易が盛んということならディスタード本土軍としては利用する価値があるという。 占領してしまえば他国との交易が制限され、ディスタード帝国の土地ということになれば他国が警戒してしまう。 そう言った要因もあり、本土軍はリオメイラの町の中に駐留しているにとどまっている。 それについてスレアは改めて言った。
「俺がつい最近ここに来た時はたまたま運が悪かったような気もするが、 町の中でちょっと散策してると即行で捕まるぐらいだからな。 場合によっては入ってすぐに尋問されること請け合いだ、 だから直ぐに捕らえられたければ正面から堂々と入ることを勧める。 となると、ここはやっぱり地下道を通るのが正解だが――」
 それに対してフラウディアが言った。
「はい、それについては以前私が本土軍の刺客としてリオメイラ攻略を言い渡された際に使用した道がありますので、 そこから侵入しましょう。 まさにリオメイラ城へと直接入ることもできますので、まずはそこへ行きましょう」
 そう言うと、フェリオースは今更ながら目的を訊いた。
「あのさ、俺が聞いた話だと、エナジー・ストーン? ってやつの出所を調べに行くって事じゃなかったっけ?  まあ、その場合はそもそもどうやってその場所を突き止めるかってことになるわけなんだが――城に入ってどうするんだ?」
 フラウディアが答えた。
「資源の乏しいリオメイラですが、一応資源らしい資源はあります。 ですが、それがエナジー・ストーンと呼ばれるものの出所であるかは私にも知らされていません。 一応、その鉱脈……とでも言えばいいのでしょうか、それらしいものはどこにあるのか知っていますが――」
 そう言われたエクスフォスの2人は驚いたが、イールアーズは淡々と答えた。
「その鉱脈的なものはリオメイラの町のど真ん中にあるし、 直ぐに目につくところにあるからそもそも探すほどのものじゃないんだけどな。 それに――聞くところによると、そのエナジー・ストーンってやつはだいぶ強力なやつで、 近づくだけでも人体に悪影響を及ぼすらしいが――町のど真ん中にあるってことを考えると、 そんな危険なものが町の真ん中にあるとは考えにくいからそれじゃないようには思うんだがな――」
 そんなに簡単に見つかるのか、2人は考え直した。 しかもそれでエナジー・ストーンを作れるほどのものである可能性は薄い、と――
 それにスレアが付け加えた。
「あの鉱脈はどこにでもありそうなただのエーテル鉱石の鉱脈で、 しかも純度もかなり低いから純度の高いものを生成するとなる効率もよくないと思うけどな。 それこそエナジー・ストーン的なものを作るとしたら、あの鉱脈のエーテル鉱石ごと全部必要になるかもしれないな」
 そして、フラウディアがここへ来た本当の目的を言った。
「私たちはディスタード本土軍からリオメイラを解放するためにやってきました。 私たちはあくまで先遣隊ですが、このメンバーでディスタード軍の刺客を討ち倒します。 私たちが潜入している間に他の隊がやってきてリオメイラから帝国軍を排除しに行きます」
 改めてではあるが、いよいよ本土軍と対決するのである。