リリアリスは巧みな操舵テクを使用し、ルダトーラへと乗り込んだ。
「なんだよ、どうしたんだ?」
そこはルダトーラ・トルーパーズのアジトだった、
リリアリスはティレックスがいるそこへとやってきたのだった。
「ヒー様に訊いたらここにいるって聞いて。
しかも、なんだか面白いメンツがそろってるじゃないの♪」
リリアリスはアジトの奥に目をやると、
そこにはティレックスに連れられてきたスレアがいた。
スレアはディスタードの本土軍の動向を探るために自ら率先してやってきていたのだという。
そして、そのほかにはエクスフォス組のアーシェリスとフェリオースに、まさかのイールアーズがそこにいた。
「なんであんたがいるのよ、なんだか珍しいじゃん。」
イールアーズは「いたら悪いか?」と言おうと考えたが、
思いとどまって質問に対する答えを素直に言うことにした、
流石に自分の存在がここにあるのは珍しいと自覚していたからだった。
「リオーンとワイズの差し金だ、面倒なことを押し付けられたもんだ。
ちょっと前にガレア”締め出し法”とやらがあったろ?
そんで様子を見て来いって言われたんだが――具体的に何をすればいいのかわからんからここにいるだけだ」
それを言うならガレア”排斥法”である、大体合っているが。
イールアーズは当然、最初はそんな話には乗り気ではなかったが、
ここにきて一転して態度を改めることになったという、イールアーズは話を続けた。
「最初は締め出し法とやらをやったルシルメアのほうが近いからそっちに行こうと考えたんだが、
あっちはあっちで何かとごたごたしているからな、面倒くさそうだったから面白半分でこっちで探りを入れに来ただけだ。
その途中で都合よくエクスフォス共と遭遇してな――」
その際にイールアーズとしては聞き逃せない話を訊いたのだという、
それは別に新たな情報でも何でもなく、ディスタード本土軍が動いているというだけのことだった。
それに対してリリアリスがさらに興味を引く話をした。
「なーるほど、だったらちょうどいい話があるんだけどさ、
ディスタードの本土軍に一泡吹かせてやりたくない?」
そう、いよいよディスタードの本土軍に仕掛ける作戦に打って出ることにしたのである。
それに対してそこにいたメンツはその話にすぐさま食いついた。
リリアリスはマダム・ダルジャンに飛び乗るとタラップを降ろし、男性陣を船の中へ招き入れた。
今まで女の園だった貴婦人号は男性陣を引き連れて出港した。
男性陣としては女性陣の中でも見慣れない顔があり、少し戸惑っていたようだ。
「早速これからのことを詳しく話すわね。
これからリジアル島とリオメイラ島の同時攻略をしようと考えているのよ。
まずはリオメイラだけど、あの島は小さい割に何かと複雑なところだから、
知っている人に行ってもらいたいと思ってる。」
それに対してイールアーズは――
「リオメイラといえば夢魔妖女フラウディアが支配している国だ。
あの女がかつてのリオメイラの女王に成り代わり、下々の者を使役している。
俺は以前、とある国の傭兵としてあの国の開放に向かったんだが、
夢魔妖女フラウディアの下僕ってのがとにかく多くてな、
作戦はことごとく失敗、仕方なしに撤退を余儀なくされたってワケだ。
まあ、言ってもその時に一緒に作戦にあたった俺以外のメンバーがろくなやつじゃなかったというのがそもそもの問題だが――
あの国は確かに、何かと面倒が多いな」
そう言うとリリアリスは得意げに言った。
「なーるほど、リオメイラには行ったことがあると、だったらあんたが適任ね。」
イールアーズは得意げに「ふん」と言って答えた、だが――
「そうね、そんなイールと一緒に行くのはやっぱりフラウディアしかいないわね!」
リリアリスはなおも得意げにそう言うと、一瞬間が開いたのち、イールアーズは耳を疑っていた。
「はい! 私にお任せください!」
そしてフラウディア本人がそう言うとイールアーズはびっくりし、彼女を二度見三度見していた。
フラウディアはにっこりとしながら答えた。
「私がその夢魔妖女フラウディアでございます!」
そこへスレアが間髪を入れずに言った。
「今の彼女はかつての夢魔妖女フラウディアとは違う、
クラウディアスの騎士団としてなくてはならない存在となったんだ。
フラウディアが行くのなら俺も行くぞ」
フラウディアは再びにっこりとしながら答えた。
「うん、一緒に頑張ろうね、スレア♪」
そのやり取りにイールアーズは舌を巻いていた。
そんなイールアーズとは対照的に、アーシェリスとフェリオースは話についてこれていなかった。
「夢魔妖女フラウディア? どういう意味だ?」
「さあな――」
しかし、話をしているうちにイールアーズの驚きはそれだけにとどまらなかった。
「あと誰かにリオメイラを任せたら、残りはリジアル島攻略メンバーにするわね。
あの島にある秘密工場は広いから手分けするにしても、具体的なメンバー編成は現地で考えることにしましょう、
先にヒー様たちが上陸しているハズだしね。」
具体的に誰がいるのかは聞いていないようだ。
それはともかく、イールアーズはフラウディアをじっと睨めつけるように見ていた。
フラウディアはニコニコとした表情で2人の女性と話をしていた。
「なんだよ、なんかダメか?」
イールアーズの様子に対してスレアが反応した。さらに話を続けた。
「気持ちはわからんでもない、俺も最初は似たような反応だったからな。
でも今は違う、俺は彼女を信じることにしたんだ、直ぐに信じろってのが無理な話かもしれんが、
とりあえず黙って見といてくんないか?」
それに対してフラウディアはスレアににっこりとした表情で「スレア――」と呟いていた。
彼女とスレアの態度を察したティレックスはなんだか違和感を覚えていた、
それについてリリアリスに訊いた。
「なによ、どうしたのよ?」
「思えば最初に会ったときって最悪だったなって。
で、その後和解したのはわかるんだけれども、なんだかやたらと距離が近い気がしてな――」
リリアリスは得意げに茶化すように言った。
「えっ? まるでアンタとユーシィみたいって?」
ティレックスはムキになって反論した。
「ちょっ! どうしてそういう話になるのかな!」
リリアリスは意地悪そうに笑っていた。アリエーラも苦笑いしていた。
「あははっ、まあまあ、それはまた別の機会にでも――」
別の機会にでもじゃねぇとティレックスは思っていた、頼むからやめてくれと願うティレックス。
リリアリスはさらに続けた。
「当人たちは別に隠しているつもりじゃあないからこの際言うけれども――つまりそういうことよ。
スレア=スタイアルにフラウディア=エスハイネ、どちらも王国の要職についていた親族を持つ子供同士で、
その末裔同士もまさかの王国の要職についているっていう共通点、
その縁が巡り巡って2人は出会った感じがしなくもないし、それになかなかお似合いの2人だと思わない?」
その話を聞いてティレックスは呆気に取られていた、まさか2人の関係がそこまで発展しているとは。
それに、フラウディアはそういうお家柄だったのかと、ティレックスはさらに呆気に取られていた。
だが、それを訊いて反応したのはまさかのイールアーズだった。
「おい、今、フラウディア=エスハイネの親族は王国の要職についていたって言ったか?」
リリアリスは「言ったよ。」と一言だけで返した。
「まさか夢魔妖女フラウディアはフェラル=エスハイネの末裔とか言わないだろうな――」
そのまさかだった、そう言ったイールアーズに対して当の本人が反応した。
「はいはい、私に何か用ですか?」
そう、フラウディアと一緒に話をしていた女性だった。
その女性は少し綺麗目の服装を身にまとっており、優しそうな顔をして訊いてきた。
そんな彼女にイールアーズはなんだか悩んでいた。
「あんたがあのフェラル=エスハイネだとでもいうのか?
でも、そいつの異名は”白銀の貴公子”……つまり男のハズなんだが?」
イールアーズがそう言うと、フェラルはにっこりとした表情ですぐさま答えた。
「確かに私は”白銀の貴公子”と呼ばれていました、今でもそう呼ぶ人はいますが――」
イールアーズは頭がこんがらがっていた。リリアリスが言った。
「あんたまさか、白銀の貴公子が本当は女だって話、知らないの?」
そう言われたイールアーズは驚いていた、ダメだこいつ――
「なーるほどね、確かにあんた、噂通り自分と戦いと妹以外はどうでもいいやつってワケね。」
リリアリスはそう言い捨てると、イールアーズはムキになって言い返した。
「悪かったな! どうせ自分と戦いと妹以外はどうでもいいやつだよ!」
「あらら、拗ねちゃったわね。」
そのやり取りにアリエーラとフラウディアとフェラルは苦笑いをし、
リリアリスとフロレンティーナは鼻で笑っていたが、男性陣とフィリスは思いっきり笑っていた。