エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第5章 最強の女流剣士

第115節 本土軍の再侵攻

 それから数日後、リリアリスたちは慌てて船に乗ってクラウディアスへと戻ろうとしていた、それもそのハズ――
「見ろよ、ディスタード本土軍の軍艦だぞ」
 というヒュウガの声が、リリアリスのスマートフォンから、船のスピーカーを通じて発せられていた。 クラウディアスの例のシステムが映し出している映像がこの船にも映し出されており、 その船の様子がリリアリスらにも確認できていた。しかもその船の位置は――
「マーリッド諸島……アルディアスの領海内に入っているわね。 今回はこの間の天の裁きを打たせまいとして他所の国の近くに来たってわけか、汚いわね。 でもまさか、そんなところからクラウディアスに攻撃を? 届くのかしら?」
 ヒュウガが答えた。
「それがな、船に積んでる兵器がなかなかエグイやつでな、見てくれよ――」
 ヒュウガはそう言うとモニタに別の内容のものを映し出した、 それはどこかで見たことのあったミサイルである。
「これ……フローナス製の!? まさか――」
「そのまさかだ。ずいぶん前にテレフ・テリトリって無国籍小隊がいたろ?  やつら、フローナス製のミサイルを解析して独自のミサイルの設計図を作っていたらしい。 というのも、そもそもディスタード本土軍がその無国籍小隊を支援していたようでな、 支援してもらった見返りに無国籍小隊が知りえた技術をすべて提供してもらっていた、ということらしい――」
 リリアリスは右手の甲を左頬に当て、悩んだまま微動だにしなかった。
「フローナス製のそのミサイルってことは、クラウディアスに――」
 しかし、ヒュウガは裏のほうで何か話をしているようで、返答はなかった。 改めてどうしたのか訊くリリアリス、するとヒュウガは返答をした。
「朗報だ、その船に積まれているミサイルの発射台なんだが、どうもうまく動作しないようなんだ。 で、今は発射台を新しくリジアル島から運ぼうとしている最中らしいな」
 なるほどとリリアリスは相槌を打つと、ヒュウガはさらに続けた。
「ミサイルは恐らく試作品で、現地では発射台の替えがないということらしい。 となると、最短でも発射台をそろえるまでにまだ数週間かかるって見積になりそうだとさ。 俺が試算したわけではないんだが、ちょいと気になることがあるんだよな」
 気になる? リリアリスは追及した。
「今回、クラウディアスのシステム改良のために一旦ガレアに戻って来たわけなんだが、 一旦ルーティスを経由した際に連中の船を見つけられたんだ、そうでなければ発見が遅れていた可能性が高い。 何が言いたいかっていうと、俺らの包囲網を潜り抜けて本土軍がいつの間にかクラウディアス側の海へと入り込んでいたってことだな。 それがどうしてなんだろうかと思って気になっているんだが――」
 それに対してリリアリスが何やら考えながら言った。
「なーんか引っかかるわね、キツネにつままれたよう。 まだまだ私らにも把握できていないことだらけって感じ。 それこそ、例のクラウディアス行きの連絡船の時からずっと引っかかっていたものがあるんだけどさ――」
 そう言われたヒュウガは思い出した。
「例のエナジー・ストーン?」
 リリアリスは頷き「そうそう、それそれ。」と言った。
「あれはまだきちんとは調べ切れていないんだがな、ちゃんと調べるにはもう少し本格的にしないといけないんだよな」
 ヒュウガが言うとリリアリスは追及した。
「出所まではわからなかったけれど、あれには相当の力が含まれているって、 あれを使えば何かしらのことができるのかもしれないって言ってなかったっけ?」
 問題はその何かなんだが。 とはいえ、言わんとしていることはわからなくもない、今回の敵の配置を考えるとまさかとは思うが……。
 さらにそのエナジー・ストーンの出所だが――
「今のところ考えられるのはこの2か所のうちのどちらか。 1つは本土軍の秘密工場のあるリジアル島、もうひとつは今でも帝国軍が駐留しているリオメイラ島、 そのどちらかということになりそうね。」
「ユーラルって線はないのか?」
「一応考えたんだけれども、 あったら最初からユーラル大陸側の陣営が既に実用化していて本土軍に抵抗していてもおかしくはないハズだからね、 まあ……可能性はゼロとは言い切れないけれども。 でも、それを言ったらリジアルもリオメイラも同じじゃん……って言いたいところだけど、 現状は御覧の通り、私らの手元に1つあるのがせいぜいってところね、 開発自体がうまくいっていませんなのか、それとも私らの手元に易々と渡ってしまったから安易なことができないかのいずれかね。 それよりも、出所よりも交易の元を断つために本土軍によって内部からやられていったリオメイラと、 本土軍のパワーリソースであるリジアルを抑えれば現状何とかなりそうかなと思って、 ひとまずはこの2つの島をなんとかすることで考えた方がいいかもしれないわね。」
 なるほどな、ヒュウガはリリアリスの話を聞いて納得していた。 いずれにせよ、行ってみないことにはわからんってことか。
「んで、どうする? クラウディアスを脅かしている船の件に戻るが、 今はミサイル発射台がないにせよ、いずれかはそれも届いてクラウディアスを攻撃する段取りが整う手はずになっちまう、 何とかした方がよくないか?」
 それについてはリリアリスも同意見である。