その後、彼女らはそこの稽古場でそれぞれ思い思いに過ごしていた。
そんな中、リリアリスとアリエーラは外にある柵にもたれながら立って話をしていた。
「フェラルさんってば本気で挑んでくるんだもの、
流石は白銀の貴公子って言われるだけあってかなりの使い手ね、私も骨が折れたわ――」
リリアリスがそう言うとアリエーラは楽しそうに答えた。
「だけど、リリアさんもなんだか楽しそうでしたよ?
特にフォース・マスターの能力を使っているときですね――」
話はさらに続いた。
「それにしても驚きました、ブレイド・マスターらしき能力はリリアさんのことですのでなんとなく想像していましたが、
まさかフォース・マスターの極意だなんて――」
「ね、私も驚いた、今の今まで忘れてたわね――」
「忘れてしまうようなものなのですか?」
「ホント、なんでだろう――フェラルさんに追及されるまで完全に忘れてたわ。
多分だけど、私らの記憶がはっきりしていないのと一緒なのかもしれない。
特にフォース・マスターといえば代名詞ともいえる”フォース・テラ・ブレイク”が使えてこそだけど、
それが使えないあたり、フォース・マスターとしてもまだまだ未熟なんだと思う、
だから記憶からもすっぽりと消えてしまうのかもしれないわね――」
そう言われるとアリエーラとしてもなんだか気になるものがあった。
「ということはつまり――私たちにはまだまだ隠された能力があるということなのでしょうか?」
アリエーラはそう言いながらずいぶん前にスクエアのハンターズ・ギルドで発行してもらったライセンス・バッジをまじまじと見つめていた。
自分の中でもあまり聞きなれないようなクラスが記載されていて、自分自身になんだか不安を覚えていた。
「大丈夫よ、たとえ何があっても力の使い方を見誤らなければいいのよ。
確かに、力を持っているっていうことはそれなりの責任を伴うものだけれども、
まさに今の自分たちがそれを証明しているわけじゃない?」
確かに――だからこそクラウディアスの重鎮の一人として頼られる存在となっているのも事実だった。
リリアリスに言われたことでアリエーラは考え直した。
2人はそのまま緑の上に寝そべり、エスハイネの丘から見える光景を眺めていた。
「それにしても、いい景色ね――」
「風がとても心地よいです――」
リリアリスとアリエーラはそれぞれ海のほうからやってくる風を感じていた。
風は森林帯に差し掛かることで潮風が洗われると、ちょうどよい涼しい風がやってくるのである。
「とにかく、いろいろと忘れている気がするわね、
この景色にしてもさっきのフォース・マスターの件にしても。」
リリアリスはそう言いながら話を続けた。
「さっきの私の師匠の話だけれども、
彼女はとても厳しい人だったけれどもとっても優しくて、いつもいつも私と一緒だった。
それで確か――彼女のために武器を作ってあげたっけ、それも覚えているなぁ――」
リリアリスはなんだか懐かしそうに言うとアリエーラは何か思い出した。
「言われてみれば確かに、リリアさんと一緒に素敵な女の人がいましたね。
私もお世話になったことがあった気がします。
私もあんなふうになりたいななんて思ったこともありましたね――」
しかし、それが具体的にどういう人物なのかが全く思い出せない――2人は葛藤していた。
「なーにしているのかな?」
そこへ後ろからフィリスが話しかけてきた。
「フィリス――」
リリアリスがそう言うとフィリスは話を続けた。
「フェラルさんってなかなか強いわね、初めて強敵にあったって感じがする」
リリアリスは勝敗について訊ねると――
「まあ、とりあえず勝てたけれどもね。
しかしどうしてなんだろ、白銀の貴公子って二つ名があるような人なんでしょ?
そんな人を負かせちゃっていいのかな?」
リリアリスとアリエーラが難しい顔をしていたが、アリエーラが答えた。
「大丈夫ですよ、フェラルさんのことですからそういうことを気にせず楽しんでいるのだと思いますよ?
最近誰も来なくなって寂しくなってしまったエスハイネの丘に活気を取り戻せたこと、
彼女としてはそれで十分なんだと思いますね――」
3人はフェラルの様子を眺めていると、そこには3人の女性に対して楽しそうに剣術指南しているフェラルの姿があった。
「いいですか? こういう場合はですね――」
その様子をほのぼのと眺めているリリアリスとアリエーラ、そしてフィリスだった。