エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第5章 最強の女流剣士

第106節 ディスタードのもう一つの良心

 6人はヘルメイズ領方面へと進むと、そこには帝国兵が監視しているゲートが見えてきた。
「そういえば帝国領だから見張りがいるんだっけ、どうする気?」
 フィリスがそう訊くとリリアリスは答えた。
「大丈夫よへーきへーき、既に手は打ってあるから、ちょっとウザイけどね――」
 そう言えばこの旅の冒頭にもリリアリスは”話は通せるがちょっと面倒”と言っていたのを思い出したアリエーラ、 一体、どういうことだろうか?
 すると――
「そこの! ここから先はディスタード・ヘルメイズ領だ!」
 と、帝国兵が拡声器を使って警告してきた。 するとリリアリスは風魔法による手段を用いて拡声器さながらのメガ・ホーンで答えた。
「大丈夫! とりあえず”メイローザ”を呼んで頂戴!」
 それに対して帝国兵たちが狼狽えていた。
「えっ、メイローザってまさか――」
 フラウディアをはじめ、フロレンティーナ、そしてユーシェリアが驚いていた。 一方でアリエーラとフィリスはなんのこっちゃという感じだった。
 すると、リリアリス指定の”メイローザ”というのがその場に現れた、 4人いるようだがいずれも服装が少々派手目で王国貴族を思わせるような印象だった。 その中でも赤いバラのようなスーツを身にまとった男がリリアリスの目の前へと軽やかな足取りで接近、そして何故か跪いた。
「これはこれは麗しきリリアリス嬢、貴女のようなとても美しいお方にこうして再び会える日を何度夢にまで見たことか――」
 それに対してリリアリスは――
「ベルメイア、そろそろいい加減にしないとぶん殴るわよ。」
 リリアリスは半ばキレ気味にそう言った。 ベルメイアはこのメイローザ隊と呼ばれるこの4人衆のリーダーなんだそうだ。 ベルメイアは狼狽えながら答えた。
「あっ、いえ――そんな滅相もございません! 私はただ――」
「そういうのはいいからさっさと私らをディアティラの町まで案内しなさいな。」
 リリアリスは高圧的に言うとベルメイアは態度を改め、5人のほうに向き直って案内しようとした、すると――
「なっ、う、美しい――」
 リリアリスはそのリアクションに対して頭を抱えながら呆れていた。
「なんとお美しい――貴女は女神、姫君、姫君に女神ときて、貴女は――なんと神々しいのだろうか――」
 ベルメイアはフロレンティーナ、フラウディア、ユーシェリア、フィリス、 そしてアリエーラに対してそれぞれその様なリアクションを取った。
「えっ!? そんな、やめてください――」
 アリエーラは非常に恥ずかしそうにしていた。それに対してフィリスが――
「えっと、あんたベルメイアって言ったっけ?」
「さようでございます女神様、何とお美しい――」
 フィリスもキレ気味に答えた。
「はいはい、わかったからさっさと案内してくれない? でなければ――」
 フィリスは腕の関節をぽきぽき鳴らした。彼女もまたリリアリスさながらの恐ろしい女神様だった。
「は、はい! そうですね! で、ではこのぐらいにしておきましょう!」
 ベルメイアは激しい殺気を感じ慌てて立ち上がると、 女性陣から数メートル離れそのまま直立したまま微動だにしなかった。
「ったく、これがなければヘルメイズに来るのも躊躇わないんだけれどもねぇ――」
 リリアリスがウザイ・ちょっと面倒と言っていた理由、女性陣はすぐさま理解した。 確かに、これはちょっと面倒だった。
「シルビーヌ、あんたの兄貴何とかならないかしら?」
 リリアリスはメイローザ隊の紅一点、つまり唯一の女性であるその人に訊いた。 彼女は白銀のドレス調の服装に身を包んでいた。ドレス調だがそれでも立派な制服である。 そして、彼女はベルメイアの妹でもある。
「どうにもなりませんね、根っからこういう人ですので――後できつーくお仕置きしておきますね♪」
 そしてドMのようだ。だが、兄貴と違って案外普通な人のようなので安心できた。
「まあ、うちのリーダーといえば、相手が女性ときたら見境ないのが特徴見たいなもんですからね、 仕方がないんじゃないんですかね?」
 と、もう一人の団員が言った。そいつは黒の服装に身を包んでいる男だった。 案外普通に見えるのだが、それでもクセのある人物なのだとか。それもそのハズ――
「相手が女性ときたら見境ないのはオルファス、アンタも一緒でしょ?」
 リリアリスは得意げに言うとオルファスは答えた。
「はははっ、いいではないですか。 それはあくまで女性に対する礼儀ですよ、受け入れられない人にとっては仕方がありませんが――」
 とはいえ、ベルメイアみたいにあからさま過ぎるよりはまだマシだった。
「あの、それよりも早くディアティラに行きません?」
 と、残りの1人の団員がそう言った。 彼は右側半分がセルリアン・ブルーのドレス調というような服装で身を包んでいた。 そして何よりベルメイアとオルファスと違って女性にはそこまで過剰な興味を示さないという特殊な人物だった、 そこまで――ということは全く興味がないわけでもなく、 ユーシェリア的にはティレックスに似ているタイプだと直ぐに感じ、なんとなく親近感がわいていた。
「ほら、アルファイドが困っているからさっさと行くわよ、ガッツリとムッツリの2人とも!」
 シルビーヌがそう言うとガッツリとムッツリの2人――ベルメイアとオルファスはすぐさま反応した。
「そ、そうですね、それではディアティラに案内しましょうか――」
 ベルメイアは慌ててそう言うと6人についてくるよう促した。
「……ガッツリとムッツリでいいのか」
 フィリスはぼそっとそう呟いた、各々自覚しているのだろう。