そんな中、フラウディアとフロレンティーナ、そしてユーシェリアの3人はプレイルームの中で話をしていた。
「今更聞くようだけど本当に大丈夫なの? 実家なんて一度も戻ったことがないんでしょ?」
フロレンティーナはフラウディアに心配していた。
「大丈夫だよ、だって今回は家に寄らないし、近くに行くだけだから――」
そう言われたフロレンティーナは頭を掻いていた。
「でもさ、訊いていいのかわからないけれども、
そういえばフローラさんだって同じような境遇だよね、
だから、フロレンティーナさんの場合はどうなのかなって――」
ユーシェリアは恐る恐る言うとフロレンティーナは気さくに答えた。
「あれ? 言ってなかったっけ?
私のお父さんは元々軍の関係者で、私が結果的にこうなったことは知ることになっていたし、再会も果たせたのよ――
もっとも、私がこうなる過程でひどい目にあっていたことを知ると異議申し立てして、その途端に処されて……」
そして、離婚して離れ離れになった母とは少し前にガレアでの会議のヘルメイズ軍とのセッションで再会を喜んだ。
「そっか、両親には今の自分がどうなっているのか報告できたんだね!」
ユーシェリアは納得した。
だが、その一方でフラウディアと言えば、自分が帝国軍のエリート養成機関に入る前には父親が亡くなり、
そして自分がそこにいる間に母親もなくなり、死に目にも会えないどころか亡くなってから実家にも一度も戻ったことがない。
両親以外にも家族はいるが、その人とも再会は果たせていないのだという。
確かに、今の自分はエリート養成機関に入る前とは偉く様変わりしてしまっている、
こんな自分の姿で実家の敷居をまたいでもいいのだろうか抵抗はある。
もちろん、フロレンティーナみたく今の自分の姿をみて家族だとして迎え入れてくれることはあるかもしれないが、
返って心配させてしまうのも嫌だし、何よりそうさせてしまうことで自分がつらくなる、その気持ちはわからなくもない。
今度はフロレンティーナからユーシェリアに訊いてきた。
「そういえばあなたは?
私らとは境遇は違うにしても、それでも帝国軍に拉致されたんでしょ? その後に家族に再会できたの?」
そう言われたユーシェリアは笑顔で答えた。
「うん、私はちゃんと自分が無事であることを言ったよ。
ほら、私ってマウナ軍に拉致されたけど、その後はお父さんと親交があったガレア軍に保護されて無事に過ごせたからね、
だからお父さんとお母さんの墓前で、ガレアの人たちはいい人たちだったことも含めてちゃんと話をしたんだよ」
そう、ユーシェリアは父親がマウナ軍に直接殺され、母親もマウナ軍によって焼き討ちに遭い、既に他界していた。
つまりは彼女は正に天涯孤独の身なのである。
しかし、それを感じさせない彼女のこの素振り、やはりガレアやクラウディアス、
そして当然、ルダトーラにいる親友や仲間という存在が大きいことを感じさせたのである。
そう、今の彼女にとってはそれがほぼ家族も同然な存在なのだから。
「仲間たちが家族?」
フラウディアは訊くと、ユーシェリアは念を押すように言った。
「うん♪ もちろん、フラウディアもフローラさんも家族だからね!」
3人の距離はさらに狭まった。それに対してフロレンティーナが言った。
「だいたい、私とフラウディアの関係ってそもそもそういう関係だったわね。
でも、本当は私が一番寂しかっただけかもしれないわね。
だから、改めてになるけどこんな私で良ければ今後も仲良くしてくれる?」
「もちろんだよ! ね、フラウディアもそうだよね!」
「……うん! ユーシィもフローラ姉さんも改めてよろしくね!」
その後のプレイルームからは何やら楽しそうな声が聞こえてきた。
楽しそうな声に感化された操舵室側の女性3人も話をしていた。
リリアリスもすでに作業を終え、キッチンから3人分のコーヒーを持ってきていた。
「こんな洋上で淹れたてのコーヒーとか優雅よね」
フィリスはコーヒーをすすっていた。さらに続けた。
「唐突で悪いんだけど、”フィルフォンド”っていう場所があったハズなんだけど、どこだったっけ?」
それを言われた2人は顎に手を当てながら考えた。
「はて、”フィルフォンド”? なんか訊いたことがあるような、ないような――」
リリアリスが言うとアリエーラも言った。
「そう言われてみればそうですね、なんだか引っかかる気がします。後で調べておきますね――」
そう言うとリリアリスは端末で”フィルフォンド”を調べていた。だが――
「……これと言って有力な情報は出て来ないわね。」
それにしても、どうして”フィルフォンド”? リリアリスはフィリスに訊いた。
「いや、なんとなく。ふと思い出したんだけど、私ってそこにいたような気がするのよね。
だからもしかしたら何か私の手掛かりが得られるんじゃないかと思って」
自分に対する手がかり――それを言われたリリアリスにも”フィルフォンド”について思い当たるものがあった。
「言われてみれば、私も”フィルフォンド”で何かしていたことがあった気がするわね。
それも、とても重要なことだったハズ。だけどどうしてだろう、何も思い出せないわね――」
それについてはアリエーラも――
「そうですね、私もそこに行った気がします。
そこでは面倒なことに巻き込まれて――確かその時はリリアさんと2人だったハズですが、
あれは何だったのでしょう?」
3人は悩んでいた。そんな中、リリアリスが――
「だけど確かに、自分が知っているハズの地名がこのエンブリアにはない現象といえば思うところがあるわね。」
それに追随してアリエーラも言った。
「確かにそうですね、それに反対に、このエンブリアで自分が全く聞き覚えのない地名だらけというのもなんだか妙な感じです。
それこそ、まるで外国に来たかのような感じです――」
と、その時、船底のほうから何かがぶつかったような打撃音が!
「えっ、何!?」
フィリスが焦っているとリリアリスは慌てて船を止めた。
「ちょっとちょっと!? 今の、すごい音がしたわね! 大丈夫なの!?」
と、そこへフロレンティーナが入ってきた。
プレイルームで話をしていた3人も今の音には流石にビビッて飛び出してきていたのである。
「極稀に出てくる海の魔物のお出ましみたいね。今のぶつかり具合からするとかなりのガタイね。
いずれにせよ、このままだとずっと攻撃を受け続けるハメになるから今のうちに始末しておかないとダメそうね。」
リリアリスは言うと、突然自分に対して空気の膜を張り、そのまま海の中へと飛び込んだ。
「私も手伝います!」
アリエーラも自分に同じように膜を張ると、リリアリスに続いて海の中へと飛び込んだ。
「便利な魔法が使えるのね2人とも。
まあいいや、こんな状況で停まっている船は無防備すぎるから、私らは他の魔物に睨まれないように張っていよっか」
フィリスがそう言うと他の3人は頷いた。