スレアはフラウディアを連れ、そのまま別の塔へとやってきた、
そこはクラウディアスの町の南東部、”アルディアス・ニアリー”ゲートの近くにある塔だった。
2人はそのまま塔の最上階へと赴くと、南の海を眺めながら話をし始めた。
「こんなところにも塔があるんですね!
それに、こっちのほうが海に近いから海の広さを体感できますね!」
フラウディアは感動していた。その彼女の様を見ていたスレアも嬉しそうだった。
「気に入ってもらえただろうか? 今日はもうこの塔には他に誰も来ないからな、ゆっくりとしているといい」
そうなんだ、フラウディアはそう思った。それと同時にフラウディアは気が付いた。
「あ、でも、見張り塔ですよね一応。ということはつまり、今から私たちがここの見張りということですか?」
フラウディアはそう訊くとスレアは頷いた。
「そういうことだな。
言ってもあと3時間ぐらいで日没時、それまでの間だけだな――」
すると、スレアは一度塔を降りることを言い残してその場を去っていった。
雄大な景色を前にフラウディアはただただ感動し、ずっと海を眺めていた。
「いいなあ、いつの間にかクラウディアスに住むことになっちゃって、私幸せだなあ――」
フラウディアはうっとりしていた。
スレアが戻ってきたのは夕日が沈む直前のことだった。
「あっ、スレアさん! お疲れ様です!」
フラウディアは元気よくそう言うとスレアは返事した。
「よう、お疲れ。悪い悪い、ここに誘っておきながら自分はフェラントの見回りに行くなんてな――」
スレアは少し息を切らしていた。
「でも、フェラントだって広い町でしょう? それこそ塔の上でじっとしているよりは大変ではないですか?」
フラウディアは心配そうに訊いた。
「まあな。でも、じっとしているのも、それはそれで大変だっただろ? たとえ3時間でも……休憩は取ったのか?」
スレアは訊いた。
「休憩――というより、この景色こそが私にとってのご褒美みたいなものですから、まったく気にしていませんでした!」
フラウディアは楽しそうに言うと2人は笑っていた。
「そっか、それはよかった、そうだな――」
すると、フラウディアは海のほうに目をやると、夕日が沈みゆくさまを眺めようと身を乗り出し気味に言った。
「あっそうだ! ほら! ちょうど日が沈むところだったんですよ!
こんな場所から素敵なサンセットが眺められるだなんて!」
そう言われたスレアはフラウディアの隣に来て一緒に夕日を眺めていた。
「素敵な眺めですよね! でも、スレアさんは何度もこの光景を見ていますよね?」
「ああ。でも、いつ見てもいい眺めだしな、もちろん城の上から町が夕日に照らされている光景もいい感じだ。
これ以上の場所を知っているっていう人もいるみたいだが、どうなんだろうな――」
スレアは感傷にふけていた。
「これ以上の場所――私も見てみたいです――」
フラウディアは同調していた。そして、いよいよスレアはいよいよ本題を切り出してきた。
「そうだな、見てみたいな。それに、どうせ見るのなら――誰かと一緒のほうがいいよな――」
それを聞いたフラウディアはスレアのほうに向き直った。
「確かに、1人よりは誰かと一緒のほうがいいですよね。
余計なお世話かもしれませんが、スレアさんは誰と一緒に見たいです?」
スレアは答えた。
「余計なお世話――というのは言い過ぎかもしれないが、
なんといってもやっぱり仲間と一緒に見るのがいいに決まっている、まずはそれだな――」
フラウディアはがっかりしたような感じで言った。
「そ、そうですよね――やっぱり、親しい友人とかと一緒のほうがいいですよね――」
そして――スレアは意を決して話の真髄に迫る話題を切り出した。
「後はそうだな――好きな人とかだな」
好きな人? フラウディアはワクワクしながらスレアに訊いた。
「スレアさんって好きな女の人とかいるんですか?」
「もちろんだ、何といってもこの国の女性陣には大体お世話になっているし、それにみんな優しい。
たまーにスパルタだけど面倒見がよく、
かなり変わっ……ちょっとだけ変わった思考回路を備えている気の強いお姉さんとかいるけれども、
それでもみんないい人だ」
「それってリリア姉様のこと?」
スレアは頷いた。
「あとはそのお姉さんといつも仲の良い人とかな。
誰もが認めるぐらいの美女って言われているけれども、
性格もそれに違わぬような伝説の美女っぷり、俺も確かにそう思うな――」
「アリエーラお姉様はすごく素敵な人ですよね! 私も大好きです!
もちろんリリアお姉様も――いえ、みんなすごくよくしてくれますから、みんな大好きです!」
スレアは頷き、さらに話を続けた。
「ああ、みんな好きだけど――俺としては1人だけ、
どーしてもどーしても気になって気になって仕方がない人がいるんだ。
その女の人が好きかって訊かれたら――照れくさくて答えたくない感じだな――」
スレアの硬派なイメージにしては意外過ぎたフラウディアだった。
「悪いな、こんな話に付き合ってもらって。
でも、不思議とフラウディアさん相手なら話せそうと思って、
わざわざ誰もいないこんなところに呼び出したんだ」
そうだったのか、フラウディアは納得した、どおりでこんなところでそんな話を――だけど、
どうして私なのだろうか、フラウディアは訊いた。
「歳も近いだろ? それにこんな話、男相手に話したって仕方がないし、
新しいフラウディアさんのためにと思えばこのぐらいの話もありかと思ってな」
スレアは得意げに言った、リリアリスばりの得意げな表情だった。
ただ、やせ我慢しているようにも見えた。
でも、スレアが本当に好きな女性ってどんな人なんだろうか、
それはそれで気になっているフラウディアはスレアに訊いてみた。
「では、スレアさんの意中の女性ってどんな人なんです?」
「多分、どんな人か当てるのは難しいかもしれないが、そうだな――」
どんな人なんだろう、知りたかったフラウディアはスレアに迫った。
「わかった、そこまで言うのならどんな人なのか教えてやろう。
その人はな――今、俺の隣にいる女性だ」
フラウディアはとても驚いた。