ある日のお昼過ぎ、フラウディアはクラウディアス城の塔の最上階へとやってきた、そこにはスレアがいた。
「やっぱり、ここにいたのですね♪」
フラウディアが楽しそうに言うと、スレアはクラウディアスの南側を眺めたまま答えた。
「まあな、俺はだいたいここにいる、登ってくるのが面倒でなければの話だけどな」
その日の気分にも左右されるようだ。
「ところで、俺に何か用か?」
スレアは改めてフラウディアにそう訊いた。
「いえ、あの、先日のディスタード軍が襲撃してきた際、どうして私にあんなことをしてくれたのかなと思って――」
フラウディアは少し頬を赤らめ、もじもじしながらスレアに訊いた、それは例のお姫様抱っこの件だった。
その話になるとスレアも顔を赤くした。
「い、いや、別に――あれはただの反省だ、フラウディアさんは悪くない――
悪い人ではないし、クラウディアスにとっては俺達と共に守り手となる人だ、
だからそういう人は見捨てられないっていうただの意思表示だ――」
スレアは焦りながらそう答えた。
「じゃあ、なんでこの恰好を似合ってるって言ってくれたのかなー?」
フラウディアは当時と同じ、ルーティス学園のセーラー服を着ており、スレアを問い詰めていた。
「そ、それはだな、例の夢魔妖女フラウディアたらしめるあの服装をするよりは遥かにいいって意味だ、
別に深い理由なんてない――」
スレアはやっぱり焦っていた。するとフラウディアは――
「やっぱり、スレアさんも”この恰好”は酷いと思いますよね――」
えっ、”この恰好”って? ルーティス学園のセーラー服ではないのかと思って振り向いたら、
そこには18禁なセーラー服姿の――スレアは酷く焦っていた。
「私のディスタード本土軍兵士としての制服がこれで、
長らく着こなしていますから今でこそ割と平気で着られていますけれども――
でも、最初にこの服を着させられた時は私もあんまりだと思いました。
ですが、そろそろ卒業したいですね、本土軍兵士としても辞めたことですし――」
すると、フラウディアの服装は徐々に変わっていった、
肌を覆う面積が広がり胴回りの露出が消え、
ルーティス学園のセーラー服になったことで胸元の露出も控え目になった――が、
見えるところは見えるのはリリアリスによる改造であった……
そして、可愛らしいスカートの長さは少し長くなったようだが、
それでも男性目線で目のやり場に困る点はやっぱり変わっていない。
「そういうことで、夢魔妖女フラウディアの服装は今度からこれになりまーす♪」
フラウディアは片足立ちで脇を閉じながら両手を上げ、ウインクをしながらスレアにそう言った。
その服装はリリアリスの提案らしいが、そもそも――スレアには2点ほど気になっていたことがあった。
「”夢魔妖女フラウディアの服装”?」
フラウディアは両手を後ろに組んでぶりっ子気味に可愛らしく答えた。
「やっぱり、誘惑魔法使うってことになると服は生地が薄めで露出も多い方が効果が高いんですよ。
以前の服装は露出高すぎなのでこのぐらいがちょうどいいと思いませんか?
私、普通のセーラー服なんて着たことがないのでとっても嬉しいです、可愛いし――。
リリアお姉様もその点ちゃんと考えてくださってて、ルーティスの制服を参考にこれを考えてくださったのですよ。
ねっ、スレアさんもこの服装、可愛いと思いません?」
変身術によるものであるためか、服装は細部の変更が可能のようだ。
ガードによってフラウディアの大きな胸の谷間が隠れているかと思えば、
いきなりガードが消えて目のやり場に困ったりと、まさにやりたい放題である。
だが、それよりも――スレアは2つ目の気になっていることを訊いた。
「悪いがそれは一旦置いとくことにして、どうしてそれを俺に聞く?」
フラウディアは顎に手を当てつつ首をかしげながら楽しそうに言った。
「どうしてって? スレアさんの好みかなーと思ったからですよ♪」
スレアはその場でこけそうになり、片足を出して踏みとどまった。
「だって、スレアさん、新しい私のために手伝ってくれるんですよね?
リリアお姉様も言ってました、スレアさんがああ言った以上はちゃんとその通りにしてくれるって――」
どうやらリリアリスの入れ知恵であることは間違いなさそうだ、スレアは後悔していた。
「ちなみに、スレアさんはどちらが好きですか?
こっちのお嬢様のスタイルですか? それとも、セーラー服のスタイルですか♪
それとも、こっちのエッチいセーラー服のスタイルのほうが好みだったりしますか♥」
フラウディアはそれぞれの姿をそれぞれ披露してスレアを誘惑していた。
「なあ、ちょっといいか――」
スレアはそう言いながらその場を去ると、そのまま5階のテラスへとやってきた。
その後ろからフラウディアがお嬢様スタイルに戻して付いていく。
「どうしたのよ急に? フラウディア可愛いでしょ。」
リリアリスはベンチで優雅にコーヒーを飲みつつ読書をしながら訊いた。
「あのさ、いくらなんでもそれはちょっと違わないか?」
スレアは悩んでいた。それに対してリリアリスは何食わぬ顔で言い返した。
「えっ!? そうなの!? だって、それでもあんたの意思としては間違いないんでしょ!?
だからてっきりそれでいいのかと思って――」
非常にわざとらしい驚き様にスレアは再び悩んでいた。
「いや――まあいいか、この際――自分で言ったことだしな。
それにむしろ逆に吹っ切れた、いろいろと世話になったな」
スレアは態度を改めてそう言うと、リリアリスは再び本を読みはじめながら言った。
「いいえ、どういたしまして。ちゃんとうまくやるのよ。」
そう言われたスレアはリリアリスに浅めに頭を下げ、その場を去ろうとした。
「えっ、一体何の話?」
フラウディアは首をかしげながら訊くと、スレアはフラウディアに言った。
「こっちの話だ。
それよりも行くぞ、今日から外のほうを案内しよう」
そう言われたフラウディアはスレアに連れられ、お城の外のほうへとやってきた。
今日から外というのは、今まではお城の中のほうを案内されていたということである。