3人は話を続けていた。
「……困ったことになったわね、まさかスレアが――」
フロレンティーナは言う。
「どうやらエステリトスも拘束具で縛られているのか、あいつら――」
リリアリスはさらに状況を確認しつつ言うと、落胆しているフラウディアに対してリリアリスが――
「フラウディア! あなたのせいじゃないから! 大丈夫、何とかするから!」
と言うが、それでもフラウディアは落ち込んでいた。
「もとはといえば私のせいです、私が、本土軍の職務に忠実だったから――」
それに対してフロレンティーナが言った。
「そんなこと言わないの! あなたはもう本土軍の犬じゃない!
私たちは自由なの! そう、自由なのよ!」
自由――そうだ、自分はもう自由なんだ、
ムチにも本土軍にも縛られない自由となった身なんだ――フラウディアは改めてそう考えた。
「そうよフラウディア、あなたは自由なのよ、
これからの将来のことを考えることだってできるのよ、それを忘れないで――」
リリアリスは念を押すようにそう言った。
フラウディアは意を決したかのように言った。
「ありがとうリリア姉様、ありがとうフローラ姉様。
でも、私は――その過去と決着をつけなければいけません。
ですからお姉様、私にもあいつらを撃退するためのお手伝いをさせてください!」
フラウディアの決意を胸に、3人はさらに話を続けていた。
忙しいリリアリスは一旦席を外すと、
そこへユーシェリアが加わり、その3人で作戦を練る中、ユーシェリアが妙案を思いついた。
「そうだ! ガレアの時の作戦が使えません!?」
ガレアの時の作戦――そう、壮大な茶番劇である。
その内容の詳細は別の話にて……今回の茶番劇についてはユーシェリアが考えたものである。
「スレアさんが捕まっているこの輸送船の司令官はネルザールです、本土軍にいたころの私よりもはるかに格下ですね。
それを考えれば――うまくいけば騙せるかもしれないです!」
と、フラウディアが言った。
「だけど、そうなるとフラウディアがまた夢魔妖女をやることになるんじゃない?
フラウディア、また夢魔妖女やるの? それとも私がやる?」
フロレンティーナはそう訊くとフラウディアは力強く頷いた。
「私は何がどうあっても夢魔妖女フラウディアなんです。
でも、その夢魔妖女フラウディアが、今後はクラウディアスの守り手となったことを証明したいのです!
そうであれば別に、私は夢魔妖女フラウディアであっても普通のフラウディアであっても構いません!
大事なのは私が何者なのかではなく、私自身がどうしたいのか! それだけなのです! それならスレアさんだって!」
それにはフロレンティーナもにっこりとしていた。
「そっか、それならフラウディアを応援しないとね。
それならネルザールたちを信じ込ませるためにいろいろと策を練らないといけないわねぇ――」
リリアリスが戻ってくると、3人から茶番劇の内容を訊いた。
「そっか、そうなんだ――」
そんなリリアリスは元気がなさそうだった。
「どうかしたのですか?」
フラウディアは訊くと、リリアリスは片手で頭を抑えながら――
「レンドワールに頭来ててさ――本当に参ったわ、あいつ。
クラウディアス民がキライだったらクラウディアスから出ていけばいいのにさ!」
完全にブチ切れていた、余程のことがあったのだろう――3人は察していた。
「レンドワール――グラエスタの貴族の人たち?」
フロレンティーナはそう訊くと、リリアリスは頷いた。
「いっそのこと、ディスタード本土軍の力であいつら全員やっつけてもらえればいいんだけど。
皮肉にも、その方がクラウディアスのためだったりするんだけどな――」
そんな都合のいいことが起きれば訳ないのだが。だが、リリアリスは妙案を思いつくのである。
「ん? 今の作戦って、フラウディアとフロレンティーナが2人でやるわけ?」
3人で考えた作戦ではそのようになっている手はずだった。そこでフロレンティーナが気が付いた。
「ん? でも――言われてみればそれもそうね、別に1人のほうがいいかもしれないわね、
だって、男を手玉に取る魔女の役なんだから女王様は1人の方がいろいろと都合がよさそうでしょ?」
すると、リリアリスが底意地悪そうに言った。
「じゃあさ、フロレンティーナにしてもらおうかな、グラエスタから貴族共を追い出す本土軍の魔女の役を♪」
それにより、グラエスタでの一件も解決しようと目論んだのだった――もはやリリアリスも魔女である。
「ですが、これでスレアさんが本当に助け出せるかが問題ですね――」
フラウディアが心配そうに言うとリリアリスが言った。
「それなら、もう少し徹底的にやってみるのもいいんじゃない?
それこそクラウディアスのシステムをダウンさせてみるというのもいいかもしれないわね。
それに、どうせスレアが敵の手に渡っているんだったら彼を誘惑してさ、私を殺す気で戦わせるとかさ。」
実際にシステムをダウンさせたのだが、実行したのは再起動であった。
つまり、システムはすぐさま復旧……結局、茶番を演じた後はディスタード軍は手も足も出ぬままの状態が続くことになった。
「もう、クラウディアスは私のものよ的な感じで言っちゃおうよ!
新生・クラウディアス女帝っていう筋書きが既にできているつもりでさあ!
ってかさ、フラウディアだったらクラウディアスなんて目じゃないよね!
すべての男は私のものよって感じでいこうよ!
スレアのお父さんはあんなだった、息子もやっぱり同じような男かしら……ってな感じでさ!
これだったら絶対に敵も騙しきれるよねえ! お姉様!」
と、ユーシェリアはもはやノリノリだった、地味にエグイこと言ってる……その発想はお前の案かよ。
「あははっ! またフラウディアのキレッキレの悪女っぷりが見れるんだね! 私、スッゴク楽しみ!」
ユーシェリアはさらに興奮しながら言うと、フラウディアは首をかしげていた。
「わ、私の悪女っぷりって――そんなに人気なんです?」
「だって、こういうのってなんだかワクワクしない?」
ユーシェリアはそう言いリリアリスも期待していると、フロレンティーナも楽しそうだった。
「まったく、リリアといいリリアの下で育ったっていうユーシィといい――敵に同情したくなること簡単に考えるわね。
もっとも、私もそういうのは大好きだけどさ♪」
ごもっともです。敵ってなんなのだろう。
後日――
「変装術?」
リリアリスの話にフロレンティーナは反応した。
「一芝居打ってもらう上でそれぐらい使えたほうがいいかなと思ってさ。」
フロレンティーナは頷いた。
「そういえばフラウディアも使えるのよね?」
フラウディアは頷いた。
「私の場合は衣装チェンジするだけです。
もっとも、それだけでも結構な技術なんですが――これ、結構面白いんですよ♪」
フラウディアは自分の服装をいろいろと変えて見せていた、
リファリウスに作ってもらった普段の控えめなお嬢様のような服装からルーティスのセーラー服姿、
いつかのルシルメアで購入した可愛らしい洋服姿に18禁のセーラー服姿まで……
「確かに面白いわね! 私も使ってみたい!」
フロレンティーナが期待しながら言うと、リリアリスは頷いた。
「一応、私の能力でフォローしてあげるから、ちょっと大掛かりなものを注文してもいいかしら?」