再びアクアレア東――
「うふふっ、さあ……どうするのかしらぁん?
この男を殺すのかしら? それとも国をアタシにくれるのかしらぁん?
アタシは別にどっちだっていいのよぉん?
なんたってこの世に男なんてたくさんいるのだから1人や2人死んだところでねぇん?
そう思うでしょ、スレアちゃん?」
「はい、すべては女神フラウディア様の意のままに――」
女神・夢魔妖女フラウディア様は邪悪な面持ちでそう言うとスレアは虚ろな目をしながら答えた。
「それに……アンタたち、せっかくここまで一緒に連れ添った仲間なわけだしぃー、殺すのもちょっと惜しいわよねぇ?
だったらアタシの美しさの下僕にしてあげるのも面白そうねぇん♪
ね、どう? ネルザール、そういうのはどぉかしらぁん?」
女神・夢魔妖女フラウディア様はそう言うと、ネルザールは女神・夢魔妖女フラウディア様に跪きながら部下に命じた!
「エステリトスを放せ! 主人の命に従わせるのだ!」
兵隊たちはエステリトスを放した。
「うふふっ、いいわねぇん♪ さぁて、そう言うことだから……ちゃんとアタシの言うことを聞くのよ、スレアちゃぁん♪」
女神・夢魔妖女フラウディア様はスレアに身体をしっかりと密着させながら耳元でささやいた。
「さあ、この美しくて麗しい女神フラウディア様のためにしっかりと働きなさぁい♪
そうしたらこのアタシがとぉってもイイコトをしてア・ゲ・ル……うっふぅん♥」
「俺は――美しくて麗しい女神フラウディア様のためなら何でも――」
女神・夢魔妖女フラウディア様の虜となったスレアがエストリテスの力を用いてリリアリスたちに襲い掛かる!
スレアは思いっきり剣を振りかぶると、そのままリリアリスに切りかかってきた!
「死ね! 美しくて麗しい女神フラウディア様のために死ぬのだ!」
リリアリスはなんとか剣を交わしていた。
「ふふっ、流石お姉様、このぐらいの攻撃なんてびくともしないわよねぇん?
だ・け・ど♪ そのまま防戦一方じゃあ絶対に勝てなくってよ?
だぁってぇー、そいつったら私のためなら死ぬまで戦ってくれるっていうんだもの、ねぇ、アタシの下僕♪」
スレアは美しくて麗しい女神フラウディア様のためなら何なりとというセリフだけを繰り返しながら、
リリアリスに攻撃を加え続けて行った。
「お姉様!」
ユーシェリアは心配しているが、リリアリスは――
「近づいたらダメ! スレアは今や完全にフラウディアに操られている!
下手したらみんな巻き沿いを喰らうことになる!
ここは私が引き受けるからみんなは戻って! クラウディアスの危機を知らせて頂戴!」
そう言うと女神・夢魔妖女フラウディア様が言った。
「あらぁん? 誰がここから逃げ出していいって言ったのかしらぁん?
残念だけどぉー、だーれも逃がしはしないわよぉん?
そうでしょぉん? アタシのし・も・べ・さ・ん♥」
いつの間にか背後には帝国兵が陣取っており、輸送船の搭乗口を完全に塞いで剣を突き付けていた。
「ウフフっ、今なら銃の効力も戻っているみたいだしぃ、アンタたちは袋のネズミよねぇん♪」
女神・夢魔妖女フラウディア様は邪悪な笑顔でそう言った。すると、スレアは攻撃をやめた。
「ウフフっ、どぉかしらぁん? アタシの力、思い知ったかしらぁん?
そろそろトドメを刺してあげてもいいんだけどぉ、
やっぱり今までせっかく仲良くしてくれたアンタたちをここで殺してしまうのも名残惜しいわねぇ――」
女神・夢魔妖女フラウディア様は続けた。
「なら、こうしたらどうかしらぁん?
お姉様とユーシェリアはアタシの美しさのために貢献してくれたんだからぁ、
アタシのために引き続き尽くしてくれればそれでいいわよぉん?
その印としてそこのオトコ3人をアタシに差し出しなさぁい♪ それで手を打ちましょぉん♪」
すると、女神・夢魔妖女フラウディア様はそれまでの邪悪な表情とは一転して、
いつもの可愛らしい表情でウインクした。
それに対してリリアリスは――
「男3人ですって!? ダメに決まってるでしょ! 差し出せるのは1人だけ!
だって、2人は既にもらうべき嫁が決まっているんだから!」
それについて心当たりのある約2名はこんな状況下で何を言っているんだと考えた。
しかし、その答えには女神・夢魔妖女フラウディア様も――
「あははっ! 確かにそれもそうだったわねぇ!
だったらいいわ、アタシに尽くすカップルが2組もいてくれれば私の王国も繁栄すること間違いなしね!
そういうのもいいじゃない! アンタたち、とっても気に入ったわ!」
と、答える……それにはリリアリスも得意げに言った。
「交渉成立ね。
ささ、そう言うわけだからティレックス! あんたは早速この場でユーシィに告白しなさい!」
なんでだよ! ティレックスは呆れつつ叫んでいた。が、それには女神・夢魔妖女フラウディア様も――
「告白しなさいよ! ユーシィのことが好きなんでしょ! 早速仲がいいところをみせてよ!」
えぇ……どうして……ティレックスは困惑していた。
そんな様子に対してネルザールがなんだか変な方向に行っているような気がしてきたためか、
女神・夢魔妖女フラウディア様に訊いてきた。
「あ、あの、フラウディア様……一体何を――」
だがしかし、ネルザールをはじめ、帝国の兵隊たちは突然半身が凍り付き、苦しそうにしていた。
その様子にラシルとヴァドスは驚いており、顔を見合わせていた。
「え、なんだ? なんなんだ!?」
「あれ? どうしていきなり敵が!?」
すると、ティレックスは頭を抱えながら言った。
「嫁の件から薄々勘付いていたんだけど、こうまでして茶番を演じるとは思わなかった――」
これが茶番!? 嘘だろ!? ラシルとヴァドスはもはや理解を超えていた。
「じゃあ、目を瞑って――」
リリアリスにそう言われるがままにフラウディアは目を瞑った、すると――
「えっ、これは――まさか!」
フラウディアの周りにはうっすらと輸送船の光景が現れたのだった。
「アクアレア・ゲートとリンクして、ゲートが傍受している情報をもとに像が見えるようにしているのよ。
スマホからでもその映像が見えるようになっているわよ。
トークンを使用している元が特定できればこういうことだってできるのよ。」
なかなか進んだ技術だなぁ――フラウディアとフロレンティーナはそう思いながら舌を巻いていた、
ディスタード本土軍はこんな相手を敵に回しているのか……。
すると、フラウディアは後ろの気配に気が付いた!
「きゃっ!? 誰!?」
リリアリスが言った。
「多分、そいつのトークンを流用しているからじゃあないかしら、あなたがいる座標にね。
でも、意識を集中して――行きたい方向へ念じれば――」
リリアリスに言われた通りに念じていると、フラウディアは動き出した。
「ね、さっきは甲板だったけど、今は船室の中に入って行ったでしょ?
認証者の元から大きく離れられることはできないけれど、
それでもこうやって、敵の情報を事前に調べることができるってワケよ。」
フラウディアの場所についてはスマートフォンにも座標が表示されていた、
本人の神経にも作用するとは恐るべき技術だった、今のエンブリアとしてはあからさまにオーバーテクノロジーである。
するとその時、フラウディアは何やらとても驚いていた――
「どうしたの!?」
フロレンティーナが心配そうに聞くと――
「……輸送船の中に――スレアさんが捕らわれているようです」
フラウディアはそう伝えた、問題の艦の中を見れているということはつまりはそういうことである。
「なんですって!?」
リリアリスも大変驚いていた。