いよいよディスタード側から動きがあった、
それはディスタード側の輸送船がクラウディアス側に近づいてきている光景だった。
「来たわね! 覚悟はいいかしら?」
リリアリスがそう言うとティレックスとユーシェリア、
そしてラシルとヴァドスは頷いた。だが――
「でも、やっこさん、白旗を掲げてきているんだろ?」
ヴァドスはそう言うとリリアリスは頷いた。
「あくまで今の段階では戦うつもりではないということが言いたいだけなんでしょ。
ということはつまり、いつ何があるかわからないってことよ。
だからここは戦闘慣れしているルダトーラの2人とクラウディアスと外との橋渡し役であるあんた、
そして、この国の守り手の責任者であるラシルを選んだのよ。
あとは万が一に備えてのフォロー役……そういう布陣よ。」
そう言われたヴァドスは納得した。するとその後ろから――
「お姉様! 私も連れて行ってください!」
フラウディアがやってきた。
「あら、フラウディアじゃない、どうして? あなたは後ろに控えていてほしいんだけど――」
フラウディアは言った。
「私は元々本土軍の回し者で、そこではエリートでした。
そんな私が一緒に居たら、彼らも驚いて悩むことだと思います。
もちろんその確証はありませんが――
でも、私はディスタード軍を裏切ってこっちの場についたことを、
あの人たちに知ら締めさせたいんです! だから――」
フラウディアはそう言うとリリアリスは頷いた。
「あなたの気持ち、よくわかったわ。
だったら止めはしない、一緒に行きましょ。」
リリアリスは得意げに答えた。
「はい! それではみなさん、よろしくお願いいたしますね!」
フラウディアはこれまでにないぐらいの笑顔でそう言った。
一行はアクアレアの岸辺へとやってきた。
そこには大きな白旗を掲げたディスタードの本土軍の輸送船が岸辺へと進んできた。
岸辺の海抜はちょうど輸送船と同じぐらいの高さだった。
そして一報のリリアリスは堂々と岸辺の真ん中に立ち、待ち構えていた。
「くっ、来るぞ――」
ラシルが緊張しながら言うと、他の面々も一緒に緊張に包まれていた。
「大丈夫、そんなに気を張り詰めなくたって何とかなるわよ。」
リリアリスは得意げな表情を絶やさず佇んでいた。
本土軍が岸辺にタラップを渡すと、本土軍の兵隊は次々と降りてきた。
「さーて、クラウディアスに何の用かしら?」
リリアリスは得意げに訊くと、本土軍は堂々と言った。
「では率直に言おう。我々に大人しく従うのだ、そうすれば失わずに済む命もあることだろう」
一番偉そうなやつがそう言った。さらに続けた。
「それに――よく見ればお前はフラウディアではないか、
ここでこうしているということはつまり――そういうことか。
今ならお前のその行為も許してやる、お前の力を以て、この国の主をここへ連れてくればな」
フラウディアは答えた。
「私はそう簡単には絆されません。
そう、私は――私のまま自由に生きることにしたので!」
すると再び偉そうなやつが笑いながら言った。
「フハハハハハハ! そう言うことか! であればよい、好きなようにするんだな。
さて、降伏する意思がないということは――やはり現実を見なければわからぬか――」
偉そうなやつは海の向こうを見るように言った。
「クククッ、あれが見えぬわけではあるまい?
いずれもクラウディアスを滅ぼすために特別に作られた戦闘艦でな、
すべてこのクラウディアスを射程圏内に収めている、どうだ、わかったか?
火の雨が落ちぬうちに降伏することを勧めるぞ――」
それに対してリリアリスは笑いながら得意げに答えた。
「あははっ、まさかそれを言うためだけに来たのかしら?
そもそもどうしてクラウディアスが強い国と言われているか知っているのかしら?
そうよ、あんたたちの自慢の兵器が束になっても敵わないからでしょ。
まったく、そんなこともわからなかったのかしら?
早く”おうち”に帰ってクラウディアスとディスタードの歴史から勉強しなおしてくることね。」
偉そうなやつは不敵な笑みを浮かべながら言った。
「フッ、確かにそうだったな、この程度の脅しに屈することもあるまいか。
いいだろう、そこまで言うのなら仕方があるまい。
では、本当の切り札というものを教えてやろう! さあ、来るがよい!」
本当の切り札? すると本土軍の帝国兵たちはリリアリスら一行に船に来るように促した。
「ど、どうするんだ? 何かの罠か?」
ティレックスは困惑しているとリリアリスが言った。
「大丈夫よ、アクアレア・ゲートで対策はしているから一応何があっても、ね――」
そして、リリアリスは先にタラップに足をかけ敵の船へと乗ると、続いて他の面々も乗船していった。
そして――
「流石はクラウディアスと言ったところか、
この何とも言えぬ力で船を押さえつけているようだな。
強力なミサイル・ガードで銃すらも使わせない状況にするとは流石は恐ろしき力を持つ国よ!
確かに――これまで我が軍を蹴散らしてきたことだけはあるな。
だが――これでは手も足も出まい?」
すると、リリアリスたちが立っている輸送船の甲板の中央部分が突然開いた!
「なんだ!?」
ラシルが驚いているとそこから何かが出てきた――
「クククククッ――」
偉そうなやつが不敵な笑みを浮かべていると中央から出てきたのは――
「これは!」
ヴァドスがそう叫ぶと、そこには誰かが磔になっている姿が出てきた!
その磔になっている姿の人物は黒い布で顔を覆い隠されており、
死刑台のようなものの上に立たされていた!
「まさか、人質!?」
ユーシェリアは驚いていた。
「さあ、どうする?
クラウディアスは我々を退けるために人一人の命を犠牲にするのか? どうだ?」
そして、偉そうなやつはその人物の顔を覆っている布を取り外した。
その人物はまさかの――
「さあ、どうする! こいつの命が惜しくば素直に投降するがいい!
そうでなければ抵抗するがいい! クラウディアスよ、好きな方を選ぶのだ!」
その人物はまさかの――ラシルは叫んだ。
「スレア! どうしたんだお前! なんで捕まっているんだよ!」
これまで余裕で得意げな態度だったリリアリスの顔からも険しい表情を見せていた。
そう、まさかスレアがこんなところにいたとは。
スレアはさるぐつわを取り付けられ、一言も発せない状況になっていた。
「この男はな、かつて夢魔妖女と呼ばれた女によって破壊された国に乗り込んできたのだよ。
それにこいつの顔にはあの女の面影があってだなあ、
そう、セディルとかいう女が引き連れていた幻獣エステリトスよ!」
すると、また別のところから何かが甲板の上に現れた。
そこにはエステリトスが後ろ手に縛られてさるぐつわも取り付けられて檻に閉じ込められている光景だった。
「エステリトスまで――檻も拘束具も魔力を抑制するものね――」
リリアリスはそう言った。
「でも、幻獣って返してやれば助かるんじゃないの?」
ユーシェリアは心配しているとリリアリスは言った。
「無理よ。
そもそも使い手であるスレアが魔力を封じられた状態だから返してやるのは無理。
それに、たとえスレアが自由だとしても”獣”があんなにがんじがらめの状態じゃあ返すことができないわね――」
偉そうなやつは楽しそうに答えた。
「その通り。
つまり、我々は2人を人質に取っているということだ!
それを忘れんことだな――フハハハハ!」
全く手も足も出ない状況、どうすれば――