それから少し経ち、アリエーラとラシル、そしてラトラの3人がクラウディアスのとある一室で端末を広げていた。
そして、そこにリリアリスとヒュウガ、さらにラミキュリアがそれぞれ立ち会っていた。
そのほかのメンバーはその様子を見ながら固唾をのんで見守っていた。
「な、なんだか緊張しますね――」
「そ、そうですね――」
「うまくできるだろうか――」
アリエーラ、ラシル、ラトラがそれぞれそう言うと、リリアリス、ヒュウガ、ラミキュリアがそれぞれ言った。
「大丈夫よ、そんなに緊張しなくたって。」
「そうそう、そもそも今回用意した”クラウディアス・フィールド・システム”はあんたらが使えないことには意味がないわけだしな」
「大丈夫ですよ、私でも操作できたぐらいですからみなさんならきっとうまくできるハズです!」
なんと、各ゲートのコンソールをリモートからの操作を可能にしてクラウディアスの中枢から操作ができるようにしてしまったらしい。
「何と言ってもこの中で一番コンピュータに強いのはラトラだからね、
あんたが一番ちゃんとしてないといけないんだから絶対に覚えなさいよね。」
「そ、そんな、いきなりプレッシャーをかけないでくださいよ――」
リリアリスからの圧に対してラトラはビビっていた。
「とりあえず、さっさと始めましょう。
まずはその”クラウディアス・フィールド・システム”って書いてあるアプリを起動して。」
3人はそれぞれ言われた通りにした。
「そして次、注意すべき点は全フィールド・システムが正常かどうかね。
正常なのはStatusの所に緑色で”Clear”と書いてあるはずよ。」
そこへアリエーラが即反応した。
「あの、先生!
そのStatusのところに赤く”Failed”とあるものと、グレーで”Offline”とあるもの、
青く”No Attach”とあるものがあります!」
リリアリスが答えた。
「流石はアリ、いい質問ね!
そう、まずはシステムが動かないことにはシステムがちゃんと動いていないことになるわけだから、
その確認から始める必要があるわけね、最初に確認すべきところはそれよ。
これはクラウディアスの防衛に関わることでもあるから、それこそ一日の最初の日課と言ってもいいぐらいね。
そうね、こういう役目はやっぱりクラウディアスの防衛を担うラシルとコンピュータ担当のラトラ、
あんたたちがすべきと思うからちゃんと気にしておくように。」
それに対して2人は「はい!」をしっかりと答えた。ヒュウガが説明を続けた。
「で、”Clear”以外は何かしらの問題が発生しているということだから、
原因を調べて対処して”Claer”にしなければいけないわけだ。
そのためにはまず、それぞれ何が”Claer”になっていて、何が”Claer”になっていないかを確認するんだ。」
そこへ、ここでもいち早くアリエーラが発言した。
「あら? ”No Attach”になっているのは”セレスティアル・クラウン”ですね?
確かそれって設置していないハズ――」
やっぱりリリアリスが答えた。
「流石はアリ、鋭いわね!
そう、つまり”セレスティアル・クラウン”は設置していないから”No Attach”、
要するにこれは”ありません!”って意味なのよ。
これについては知っての通り今はどうしようもないから、
気になるかもしれないけれども無視して進めていくことにするわね。
もちろん、”セレスティアル・クラウン”設置後――いえ、
ほかのものでも設置してあるハズなのに”No Attach”だったら何か問題が発生している可能性があるから、
みんなはその時はまずラトラに言ってね。
もちろん、エイジや私やリファ、後はヒュウガやもちろんヒー様でもいいけれどもね。」
なんで俺3回入っているんだ――ヒュウガは突っ込まずにはいられなかった。
「じゃあ、次は”Offline”の説明ね。多分ラシルならすぐに気が付くんじゃないかな?」
えっ、どういうことだ? ラシルは少し考えたがすぐに気が付いた。
「あれ? ボクたちが設置した”アルディアス・ニアリー”が”Offline”ですね――
というかリリアさん、あれは起動しないままにしておいてほしいって言ってませんでしたっけ?」
リリアリスは得意げに答えた。
「流石は次期国王様、ちゃんと言った通りにしといてくれたのね。
そう、つまり”アルディアス・ニアリー”が”Offline”となっているのは簡単な話、
”アルディアス・ニアリー”の電源が付いてないからなのよ。
ということは当然電源をつけないといけないわけだけど――」
リリアリスは”次期国王様”と言われたラシルの反応を他所にモニタに指をさして言った。
「ウェイク・オン・ランの仕組み……要するに直接現地に行かなくてもここにパワースイッチがあるから、
ここからでも起動することができるわね。」
ヒュウガとラミキュリアの2人も他の2人のモニタでスイッチを示していた。
他2人もそれを見ながら頷いていた。
「というわけでラシル、そのスイッチを押して見て頂戴。」
ラシルはリリアリスに言われた通りにすると、
”アルディアス・ニアリー”のStatusが”Waiting”に変わったのを確認した。
「”Waiting”は”待っててね”って意味、要するに起動中だから待っててねってことね。
しばらくするとStatusが変わるから、最終的に”Clear”になったことまで確認すればOKよ。
もちろん、”Clear”にならなかったらやっぱり何か異常があるってことだから、その時はヒー様にお願いね。」
だからなんで俺ばかりなんだよとヒュウガは思った。
”アルディアス・ニアリー”が”Clear”になったところで最後のStatusについて。
「次は”Failed”ね。
”Failed”は本当の意味での”異常”を示しているから、ちゃんと対処法を考えていかないとダメなものよ、
これがある意味一番深刻なStatusだから、見逃さないようにして頂戴ね。」
それに対し、ラシルは気を引き締めて望んだが、他の2人は顔色換えずに望んでいた、
国の防衛という意味では重要なことだけれども、
それ以前に各人がどれだけコンピュータに強いかどうかがわかるような一幕だった。
「もう今更だけど、”Failed”になっているのは”グラエスタ・シールド”ね。
解決方法についてはさまざまにあるけれども、一番手っ取り早いのは”グラエスタ・シールド”の再起動ね。」
それに対し、やっぱりアリエーラが気が付いた。
「でも、再起動ということは、システムを一旦落とす――つまり電源を一度切るということですよね?
電源を切っている間に敵が攻めてきたりなんかしたら、それこそ問題になりません?」
すると、リリアリスは言った。
「流石はアリ、ちゃっかりしているわね。
当然、敵が絶対にいないことを見越してのことだったらいいけれども、世の中そう甘くはないからね――」
それに対し、ラシルは訊いた。
「でも、”Failed”が異常ということなら、やっぱり再起動しないと正常に動かないんじゃあ――
正常に動いてなければ仕方がない気がするのですが――」
リリアリスが言った。
「確かに、そういう考え方もあるけれどもね、
だけど、このシステムはそういうことも考えてある程度異常な状態でもちゃんと機能するようになっているから、
異常だからと言ってすぐさま再起動を決断するのは早計よ。」
あっ、そうなんだ、ラシルはそう思った。
「それに、中には再起動でも直らない問題もあるからな、
だから、原因がわからないうちはいきなり再起動なんかしてもダメだから、
そこのところ、ちゃんと考えておくようにな」
と、ヒュウガは釘を刺していた。それに対し、ラトラは同意するように頷いていた。
「だけど、今回の異常は既に判明していて――Statusの”グラエスタ・シールド”の行をクリックしてみな」
3人はヒュウガの言った通りにすると、何かメッセージが表示された。
「あれ? ”システムが正しくセットアップされていません”って書いてあるけど?」
ラシルがそう言うと、ラトラがすぐに気が付いた。
「そうか、ヒュウガさん、今回のために再起動してないんですね!」
ヒュウガは頷いた。どういうことなんだろうか、わからない人たちは悩んでいた。
それに対し、リリアリスが説明した。
「単純なことよ、要は組み立てて設置してセットアップしないといけないんだけれども、
その際に最後は必ずシステムの再起動がいるのよ。
で、”グラエスタ・シールド”はそれをしてないから”Failed”になっているだけ。
つまり、これは何をどうしても再起動が必要なケースということね。
実際にはちゃんと動いている機能もあるんだけれども、機能の大部分はちゃんと動いていないから注意してほしいわね。」
さらにヒュウガは続けた。
「ついでを言うと、システムに機能を加えるといったような変更を加えたり、
”フィックス”っていうバグがあった場合の対処としてアップデートが必要になるケースがある。
その場合も当然再起動が必要になるからな。だから、アップデートをするタイミングには注意した方がいいぞ。」
しかし、それについては主にラトラに対して言っていたヒュウガだった。
「そうですね、アップデートが必要な場合はみなさんと協議した方がいいですね」
ラトラはそう言った、このことから、このシステムは彼に任せておけば安泰であることは明白だった。
「そのあたりが分かったところで。
とりあえずラトラ、そこにリスタートボタンもあるからお願いね。」
リリアリスに言われたラトラはその通りに実行した。
”グラエスタ・シールド”も最終的に”Claer”になったところまでみんなで確認していた。
「さてと、それじゃあ今度はシステムの使い方をレクチャーしていくわね。」
今度は”クラウディアス・フィールド・システム”の使い方編となる。
全員知っているべきであり、みんなできちんと教えてもらっていた。