アクアレア・ゲート監視所にて――
「初期セットアップだっけ?
あの人がやるって言ってた気がするけれども、結局ラミキュリアさんがやってるんだな――」
ティレックスがそう訊くとラミキュリアは話した。
「こういうことなら私でも出来ますからね。
それに、こういう状況下ですから何かしていないと落ち着かないんです――」
そう言われてみればティレックスにも思い当たる節があった、
アクアレア・ゲートまで来ているのもそういった理由である。
「にしてもラミキュリアさんって端末入力早いですね! 昔からそういうことしていたのですか?」
ティレックスはラミキュリアの流れるように早い端末入力操作に見惚れていた。
「私がこの手のものに始めて触ったのはガレアに来てからですね、
最初は全くどうしていいのかさえ分からないぐらいでしたし――」
ティレックスは驚いた。
「そ、そうなんですか!?
なんか、もう随分と前からやっているんだなっていう印象しかないですけど――」
ラミキュリアはなんだか楽しそうな表情で端末を操作しながら言った。
「ふふっ、お褒めいただき、ありがとうございます。
そうですね、元々こういうのに向いていたのかもしれませんね――」
確かに人には向き不向きがある、そう言うことなのだろう――ティレックスは考えた。
「ただ、私が知る限りでは私のタイピング速度は4番目ですからね――」
このラミキュリアさんが4番目だって!? ティレックスは驚いていた。
「1番早いのはやっぱりアール将軍――というかリファリウスなんだろうな」
ティレックスは考えながらそう言うがラミキュリアは否定した。
「いえ、あの人は5番目ですね、もっともリファリウス様はマウスをほとんど使わないので、
本来ならマウス操作を伴ってもおかしくはないような操作も含んだら1番早いことになりますね――」
それはそれで驚きだったティレックス。
「じゃ、じゃあ……リリアさんかな――」
「あ、いえ……すみません、彼女はリファリウス様と同じぐらい――いえ、彼女のほうが早いですかね。
とすると、リファ様が6番目でリリアさんが5番目になりますかね。
そして、彼女もやはりマウスをほとんど使わない方ですので――
つまりは1番早いことになり、リファ様は2番目ということになりますね――」
そ、そうなのか――ティレックスは驚きと同時に呆気に取られていた。
じゃあ、誰なんだろうか――ティレックスは改めて考えていた。
「そうか! ヒュウガだな!」
ラミキュリアは優しそうに答えた。
「ヒュウガさんは3番目ですね、あの人は確かになかなか早いです。
私としてはライバルにあたる人ですね。
ちなみに1番・2番の方はそれこそ本当に神レベルの方ですが――
2番の方は身近にいる方で1番の方はガレアにはいませんが、
恐らくティレックスさんもお知り合いの方だと思いますよ?」
えっ、誰だろう、神と言われるような腕の持ち主は――ティレックスは悩んでいた。
割とどうでもいい話だったんだけれども、こうなったらからには絶対に当てたい――そう思った。
しかし、結局1番も2番も当てられないまま時間を過ごしたティレックス、
外のほうで作業していたヒュウガとユーシェリアが監視所にやってきた。
「ゲート側の調整が終わったぞ。映像はどうだ? なんか不具合出てないか?」
ヒュウガが言うとラミキュリアは答えた。
「異常はなさそうです、感度ほぼ100%をキープしていますし、問題ないかと思われます――」
すると、ラミキュリアは何か思いつき椅子から立ち上がると、ユーシェリアに言った。
「すみませんユーシェリアさん、一つ作業をお願いしてもよろしいでしょうか?」
それに対し、ユーシェリアは得意げに楽しそうに言った。
「いいですよ? その代わり高いですよ♪」
リリアリスに影響されたかのようなセリフだった。
「ええ、それはティレックスさんに請求してくださいね♪」
なんで俺……ラミキュリアさんも案外意地悪な人だな――ティレックスはそう思うと、
ユーシェリアはティレックスを見ながら何か納得したようだった。
「なーるほど、そう言うことかぁ♪
んじゃあ後でティレックスにたぁっくさん奢ってもーらおっと♪」
だからなんでだよ、ティレックスはそう言った。
すると、ユーシェリアはイスに座ると、端末で何やら作業を始めた。
ラミキュリアに言われた通りのことをすると、
彼女はそのまま――作業を継続した、彼女の流れるような操作、まさか――
「そうですよ、2番目は彼女、ユーシェリアさんこそがタイピング神ですね♪」
そうなのか!? ティレックスは驚いていた。
「うふふっ♪ ラミキュリアさんに褒められるなんて嬉しいなー♪
ま、そゆわけだからティレックス、後で奢ってねー♪」
ま、まあいいだろう、そう言うことなら……ティレックスは圧倒されながらもたまにはいいかと思ってそう言った。
「なんだ、タイピングの話をしていたのか。確かに俺もここまでとはいかないからな。
もっとも、別に早くなろう思って早くなったわけではないから――自然に身についたもんだしな。
ちなみに一番早いのは――多分誰もが同じ人を指すだろうな」
ヒュウガはそう言った、ユーシェリアのも十分早いがその人はもっと早いのか。