ヒュウガは大あくびをしながら横庭の日の当たるところで寝っ転がっていた。
そんな彼に対してカスミがじっと見つめていた。
「なんだ?」
ヒュウガは気になったので話しかけた。
「……べつに」
カスミはじっと眺めたままそう答えていた……なんかもんくあるのなら言えと思ったヒュウガ。
じゃあなんなんだよ、ヒュウガはそう思いながら座り直して訊いた。
「あのさ、完全にあの女の影響を受けているよな」
もちろんリリアリスのことである。
カスミは意地悪そうなところと妙に変なところなど、彼女にそっくりなところがあった。
「そんなことない、私は私、それ以外の何者でもない」
「それもあの女が言うようなセリフな」
それに対してカスミは改まって言った。
「ちっ、バレたか」
ヒュウガは頭を抱えていた。
「あのな、あんたまで俺を揶揄いたいのか?」
カスミはヒュウガの隣に座って話をし始めた。
「ヒー様、なんだかお姉様に似てる。変なの」
俺があの女に似ているだって!? ヒュウガは驚きながらそう言って聞き返した。
「不思議。まるで親戚、お姉様、男にしたら多分ヒー様、親近感沸く」
そう言われると、ヒュウガは頭を掻いていた。
「そう言われるとそんな感じがするんだよな。
考えるほど変な感じなんだが、初めてあの女に会った時から赤の他人って感じがしないんだよな。
そのせいだろうか、あの女とは妙にシンクロするんだよな――」
そう言ったヒュウガだったが、はっと気が付いて付け加えた。
「あっ、いや、別にあの女とアリエーラさんみたいに意思を共有しているとかいうレベルの変なシンクロじゃないぞ。
単に波長が合うとか、そういう類のシンクロだ。
だからむしろ、同じ血が流れてんじゃないかとか、そんな気がするんだよな」
それに対してカスミが意地悪く言う。
「リリアお姉ちゃんとアリお姉ちゃんが変とか即行言いつけ案件」
は!? ヒュウガは焦っていた。
「頼むからあの女から変な影響受けるのはやめてくれ――」
「またリリアお姉ちゃん変言う酌量余地皆無」
ヒュウガは項垂れていた。
「仕方ない、デートしたら許してやろう」
なんでデート……ヒュウガは困惑していた。
「死刑とデート、好きなほう選ぶ」
ヒュウガは降参した。
「一緒に出掛けたいんだろ、わかったよ!」
カスミはニヤっとしていた。
「ったく、なんでデート……」
「美味しいものたくさん食べる♪」
それが狙いか――ヒュウガは再び頭を抱えていた。
そんな中、アリエーラとリリアリスは大忙し、テラスで数多の書類を眺めていた。
「エミーリアが決められない案件はこれだけあるのね――」
「それについては仕方がありません、決められる人が考えてあげるしかないですからね――」
「まったく、これじゃあ本当に誰がクラウディアスの真の支配者なのかわからないわね。」
「いえいえ、もちろん最後はエミーリアさんから最終判を押していただきますからね!
それに――私でも決められなければリリアさんに決めてもらおうと思いますし!」
すると、アリエーラはリリアリスの前にいくつかの書類を置いた。
「何よ、本当にあるの!?」
「ありますよ! 量は少ないですがどれも内容が重めの案件です!」
内容重めって――リリアリスは困惑していた。
「仕方がないわね、アリのためクラウディアスのため、一肌脱いであげようじゃないのよ。」
リリアリスは得意げだった。
リリアリスとアリエーラが書類を見ながら苦闘している中へ、
フラウディアとフロレンティーナ、そしてラミキュリアの3人がやってきた。
「あなたたち、いつもここにいるのね」
フロレンティーナがそう言うとアリエーラが書類に目を通しながら得意げに答えた。
「そうなんですよー、ここは私たちお気に入りの場所ですからねー。」
そして、アリエーラはすべての書類をまとめ終えると一息つき、傍らにあるコップの中のお茶を飲みほしていた。
そこへ――
「そういえばあなたの顔、なーんかどっかで見たことがあると思ったらこれね――」
フロレンティーナは過去の新聞記事を出した、そこには――
「えぇーっ!? 私、まだ言われ続けるんですかぁー!?」
と、アリエーラは頭を悩ませながらそう言った。
そう、その新聞記事は何を隠そう例の”美しすぎる女教授の歴史的大発表”と書かれた記事であり、
そこには美しい女神の姿――アリエーラの姿が堂々と写されていた。
アリエーラはその記事を手に取り、まじまじと見つめていた。
「だけど、まだこんなのがあったのですね、懐かしい――」
アリエーラはにっこりと見つめていた。
「やっぱり、アリエーラさんってすごい人だったんですね! 世紀の大発見をしただなんて!
それで、クラウディアスに来たからには目的のものは見つけたのですか?」
それについてはある程度説明したアリエーラ、
だが、それより――
「それよりもどうされたんですか、リリアさん?」
ラミキュリアは彼女にそう訊いた、リリアリスは何をやっているのだろうか、
彼女は右手でつかんでいる書類をじっと凝視しており、難しい顔をしていた。
「あっ、そういえばリリアさん、いかがです? すべてに目を通していただけましたか?」
アリエーラはそう訊いた。すると、リリアリスはその場で背伸びをし、態度を改めて話をした。
「ねえアリ、これってディスタードに関連した話よね?」
リリアリスはアリエーラにその書類を手渡して確認してもらった。
「アクアレア・ゲート先行法? あれ、こんなもの誰が――」
アリエーラはそう言いつつ、その書類に判を押した人の名前を確認していた。
「どうしたんです?」
フラウディアも気になって2人の後ろから内容を確認していた。
「アクアレア・ゲート先行法? 有事の際はクラウディアス民が一丸となってディスタード軍を撃退するための徴兵制度――」
するとリリアリス、さらに続けざまに話をした。
「それに見てよ、これ。
アリからもらった紙、ほとんどがアクアレア・ゲートにおける有事の際の内容ばかりよ。
しかも、いずれも全部同じ人の判が押してあるわね。
名前はレンドワール、少し前に私とアリとで呼び出した人よ。」