エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第4章 夢と希望と現実と絶望と

第76節 空虚

 リリアリスとアリエーラは指定された場所へと向かった。
「あ、いたいた。で、私らのことを呼んでいるって?」
 ティレックスどころか、何人かがそこに集結していた。
「えっ? 俺が呼んだって? いや、俺は別に――」
 あれ? リリアリスは得意げに訊いた。
「何よ、呼びつけておいて別に――って。」
「だから、本当に呼んでないって――」
 リリアリスは「ふーん。」と言って頭を掻いていた。 リリアリスは何か思いついて話を切り出した。
「ねえ、ところでみんなでこんなところで集まって、何かあったの?」
 すると、その声に反応したラシルが慌てて2人のもとへと駆け寄って話をしてきた。
「あっ、リリアさんとアリエーラさん! ちょうどいいところに! 実はその――」
 どうしたんだろう、リリアリスは改めて訊くとシェルシェルが横から口をはさんできた。
「スレア君がいなくなっちゃったんです!」
 それにはアリエーラが反応した。
「なんですって!?」

 ヴァドスがフェラントの港でのことを話した。
「なんだか改まってフェラントの港からお城のほうを眺めているもんだからどうしたもんかと思って聞いたら、 俺はこの国を出る、みんなに元気でって伝えておけって言われて。 もちろん止めたんだけどな、だけど気が付いた時にはあいつの姿はなくなっていた、 その後結構探したし、連絡船の乗船名簿も見たし、出港時の記録も判明しているんだが、 気が付いた時には既に手遅れだった――」
 ラシルは悩んでいた。
「みんなに元気でって――そういえばさっき様子がおかしかったよね、何かあったのかな?」
 何も知らない一同は何がどうしたのか悩んでいた。そんな中リリアリスは――
「アリ、ちょっといいかな?」
「はい、リリアさん――」
 リリアリスとアリエーラ、そしてカスミとラミキュリアは横庭の隅っこでひっそりと話をしていた。
「やっぱり、屋上での件でしょうか――」
 ラミキュリアがそう言うとリリアリスは頷いた。
「ええ、恐らくね。 私もフラウディアの前には二度と出て来ない方がいいって言ったしさ。 クラウディアス内でこんな関係を作ったままを維持するのはほぼ無理だろうし――」
「スレア、いたたまれなくなる、自分から身引く、そんな感じ――」
 そしてカスミが冷静にそう言うとアリエーラが頷いた。
「やっぱりそういうことですかね――。 どうしたらいいのでしょうか――」
 その話を聞いていたラミキュリアが言った。
「それを――フラウディアさんが知ったらどうなることでしょうか、 幸いこの場にはいないみたいですが――」
 それに対してリリアリスが言った。
「フローラが聞かせないようにしているのよ。 スレアがいないことをここで知って、彼女には知らせないように上で2人きりで話でもしているのね。」
 そう、彼女はそれでリリアリスとアリエーラの2人にも事の次第を伝えるため、 呼んでもいないハズのティレックスが呼んでいることにしたのだという―― 彼女もまたなかなかの策士だったようだ、それをすぐに把握したリリアリスも同類だが。
「ま、そういうわけだから、スレアの話はフラウディアにはナイショにしておいてね」
 ラシルが訊いた。
「えっ、フラウディアさんと――スレアって何かあったんですか?」
「世の中知らなくてもいいことだってたくさんあるんだ、 それを覚えておかないといつまでたってもみんなから頼りないって言われ続けるんだぞ」
 ヒュウガがそう言った。
「そんな、酷い――」

 その日のうちに行方不明になったスレアの捜索が開始された。 ルート的に海外に出たのは間違いないが、いくつかの港を経由しているようで捜索は難航していた。
 それから数日後――
「スレア君、見つからないね――」
 エミーリアは周囲にフラウディアがいないことを確認しつつレミーネアと話をしていた。
「そんなに簡単には見つからないよ、外の世界は広いんだし、 あのスレアだもの、失踪する気ならそう簡単には足跡をたどりにくくしているハズよ――」
 レミーネアはため息をつきながら答えた。
「そう、だよね……」
 エミーリアは元気なく言った。

 ラシルはスレアの身を案じていた。
「スレア、どこ行ったんだよ、一体何があったんだ――」
 それを見ていたシェルシェルがユーシェリアに話しかけた。
「気の毒だね――」
「そうだね、仲良しだったのに急にいなくなっちゃったらねぇ……」
 そこへティレックスが現れた。
「ラシル、しっかりしろ――」
「ティレックスさん、スレアに何があったんでしょうか――」
 元気なさそうにそう言う彼に対してティレックスがため息をつくと、改まって話をした。
「横庭に行くぞ、嫌なことは忘れる、それに尽きるからな」
「はい、ティレックスさん――よろしくお願いします……」
 ラシルは落ち込んだままだった。それにしても横庭? ユーシェリアは首をかしげていた。
「剣の稽古?」
「男の子には男の子なりのやり方があるんだよ」
「そっか、そうだよね、それならティレックスに任せておこうか――」
 シェルシェルに言われ、ユーシェリアもまたスレアがいなくなったことで今後のクラウディアスの人々のことを案じていた。