その2人とは――
「えっ、私!?」
リリアリスとフラウディアの2人は声をそろえて言った。
「そうですよ。お2人とも、あなた方こそがまさにそれなんじゃないかと思います。
まずはフラウディアさん、あなたはこれまでのディスタード本土軍としての行いを償うべく、
ガレア軍に鞍替えし、そして私たちクラウディアスと共に戦う道を選択してくださいましたよね?
もちろんリリアさん、あなたもですよ。
リリアさんはディスタードのいいところと悪いところをちゃんと把握しています。
ディスタードがやってきた悪い部分を償うため、あえて自らディスタードに身をゆだね、
そしてディスタード民が暮らしやすいよう、彼らのためによい行いをしようと奮闘しています。」
アリエーラはさらに続けた。
「そう、お2人ともこれまで行ってきたことを償うべく、行動していることが共通しています。
現にそれが成果として出始めていますよね? もちろんまだまだ至らない部分はあると思います。
ですが、それはまだ始まったばかり――そう、まだ始まったばかりなんですよ!
だからここで諦めたらいけないんです! 立ち止まってはいけないんです!
自分のこれからの行いは行動で示し、そしてこれこそが真の自分の姿なんだと頑張っているではありませんか?」
そう言われたフラウディア、まさに自分が言われているように思っていた。
そしてリリアリスもアリエーラの言葉が直接突き刺さっていた。
最後に、アリエーラはフロレンティーナに対して言葉を締めた。
「というわけですからフロレンティーナさんも、この2人を見習って行動すればいいのではないでしょうか、
あくまで私の個人的な意見ですけれどもね!」
フロレンティーナはこのアリエーラという人物に対して呆気に取られていた、
まさかそんなふうに言われるだなんて――。
彼女は心の中では既に割り切っていたのだけれども、アリエーラの言い分も正解ともいえる内容だった。
しかし行動で示すべきか――そこまで考えてはいなかったため、その点については深く反省していた。
フラウディアもそうだった、そうか、自分がこれからしようとしている行いは決して間違っていなかったんだ。
今回はたまたま至らなかった部分による問題だったが、このまま続けていればいずれかはきっと――
解決しないこともあるかもしれない、自分は今までそれだけのことをしてきたのだから。
でも、もし”あのフラウディアって人、すごくいい人だよね!”って言ってくれる人が増えるのなら――
そう、自分はそのためにガレア側に、クラウディアス側に鞍替えしたのだから――その気持ちをすっかり忘れていたことを反省していた。
そしてリリアリスも――以前、さる御仁がこんなことを言っていたことがあった。
「まあ、帝国は非難されても仕方が無いという考えはあってもいいと思うよ、
反面教師というか、教訓にしてもらってもいいかもしれないね。」
何を隠そう、あのアール将軍のセリフである、帝国の将軍とは思えないセリフとしても一部では有名な話である。
そう、帝国は悪いものなのだ、だがその悪いものの中には悪くないハズのディスタード民がいるのだ、
彼らのことを考えればディスタードをこのまま悪いまま放っておくわけにもいかない。
最初は帝国を利用するなんて言うだけのただの通過点でしか過ぎなかったのに、
不思議なもので今やディスタード民だけでなく、各国の連携も大事にしつつ世界全体を考えるようにもなり、
すっかりその気になってしまっている、世の中何があるかわからないものである。
そうだ、そうだった――私としたことが――過去に捕らわれてばかりで大事なことを忘れていたようだ。
そう、いざというときに頼るべきは大切な友人だということを――
アリエーラが言っていたことを忘れていてしっかりと反省していた。
フラウディアは立ち上がった。
「アリエーラお姉様! 私、大事なことを忘れていたみたいです!
そう、私――これからはクラウディアスのために戦うことに決めたんです!
だから、その――えっと――」
言葉に詰まったフラウディアに対してアリエーラは優しい眼差しで答えた。
「フラウディアさん! これからもよろしくお願いいたしますね!」
そう言われてフラウディアも――
「こちらこそ! よろしくお願いいたしますね、アリエーラお姉様!」
そしてフロレンティーナも――
「アリ――」
「はい! なんでしょうか、フロレンティーナさん♪」
「そうね、確かに――ディスタード本土軍も許せないし、
そいつらに追随する連中も見過ごしておけないわね。だから私も――」
「はい! フロレンティーナさん、一緒に頑張りましょうね!」
「ええ! 頑張りましょう!」
簡単に打ち解けたのである。
そしてリリアリスもまた――
「まったく、やっぱり持つべきは友って言うけれども――」
「ですね! このことですね、リリアさん!」
「ほんと、私、アリが友達でよかったわよ。」
「私もです! リリアさんが友達でよかったと思っています!」
「ふふっ、わかったわよ。だったらこれからもアリにはたくさん心配かけさせてあげるから安心してよね。」
「はい! リリアさん! でも、できればそういうのはほどほどにしてくださいね!」
改めて結束を強めたようである。
「まったくもう――アリってば、この3人を簡単に言いくるめてしまうだなんて流石ね。
こんなことができるのは伝説の女神しかいないのよ? わかる?」
リリアリスがそう言うと――
「いえいえ、私はただ自分が思ったことを言っただけですので別にこれが正解だと思っていませんよ。
ただ――それでもみなさんの励みになったのなら――嬉しいですね!」
この人、本物の女神様だ――まさに伝説の女神様そのものだ――
アリエーラのルックスも含め、彼女のことをそう思わざるを得なかった3人である。
それからというもの、フラウディアとは改めて打ち解けていた。
フラウディアとアリエーラは例のテラスで2人で話をしていた。
「夢魔妖女フラウディア!? すごいですね! 男の人はみんなフラウディアさんにメロメロなんですね!」
アリエーラはフラウディアを絶賛していた。
「引かないんですか?」
「どうしてです? だって、女の子じゃないですか!
それにこんなに綺麗で可愛くて――私には到底マネできない芸当です!
フラウディアさんの特権だと思いますね!
フラウディアさんだったら男の人たちがそうなってしまうのは無理ないですし、仕方がないと思いますね!」
「でも、私――元々は女では――それに国を――」
「それは……もういいです。
すべては過去のこと、もう水に流してしまいましょう。
今は今、今のフラウディアさんを生きることにしましょう。
過去に捕らわれていてはいつまで経っても前に進むことはできませんからね!
だからあなたはこちら側に着いたのではないですか?
それに――フラウディアさんは女の子ですよ?」
2人が話をしている中にリリアリスがやってきて言った。
「ふふっ、どお? フラウディア、アリに話をしてよかったでしょ?」
「はい! リリアさん! アリエーラさんって本当に素敵な方ですね! なんでも話せてしまいます!」
フラウディアは満面の笑顔でそう答えた。アリエーラの包容力は偉大すぎた。
「でもごめんね、クラウディアスに来てこんなことになってしまうなんてさ――」
リリアリスはそう言うがフラウディアは首を振っていた。
「いいえ、そんなことはありませんよ。
こうしてアリエーラさんといろんなお話ができるのですから、私は嬉しいです!」
「はい! いつでも私を頼ってください!
私もフラウディアさんやリリアさんに会うのが一番楽しみです!
だからいつでもいらしてください!」
アリエーラは目をキラキラと輝かせていた。
「アリ、あなたにはかなわないわね――」
そんな2人の様子を見て、フラウディアはにこにこしていた。
そこへ一旦退席していたフロレンティーナが再びやってきた。
「ほんと、あんたたちには2人にはかなわないわね、まったく。
でも、私たちだって負けないわよ? ねえ、フラウディア――」
「フローラ姉さん――」
「アリとリリアがシンクロしているっていうことならそれこそ、私とフラウディアも負けなくってよ。
ねえ、フラウディア?」
「……うん!」
その後、2人はにっこりとしながらその場で抱き合っていた。
すると、フロレンティーナが出し抜けに言った。
「ああそうそう、あんたたち2人に言いたかったことがあるのよ、
さっき、ティレックスがあんたたちのことを呼んでいたわね――」
呼んでいた? そういうことなら早速行かないと。
「さっきは1階の横庭にいたわね」
とにかく、2人は言われたままにそこへ向かうことにした。