「すごい、本当に素敵な方――」
フラウディアはアリエーラに見惚れていた。
「どうしましたか?」
アリエーラはにっこりとしながらフラウディアの顔を眺めていた、すると――
「フラウディアさん、でしたっけ!? 綺麗で可愛くて、素敵な方ですね! 私、気に入っちゃいました!」
彼女ほどの人にそんなことを言われたフラウディアはとても照れていた、
そんな――むしろ困惑していた。
「あら! お目が高いわね、アリ!
そうなのよこの娘、私も妹にしたいぐらい可愛いのよ。
ま、そんなこと言ってたら私の妹がどんどん増えすぎて大変なことになっちゃうんだけれども。」
確かにその通りである、リリアリスは少しは自重した方がいいと思われる、あんた何人の妹がいるんだ。
「へえ! しかもセクシーさんですね! 私よりも胸が大きいかもです!
それにフラウディアさんなんて名前もすごく可愛いです!」
フラウディアはまた照れていた。
「わ、私、そんな、別に――」
フラウディアは遠慮しているとアリエーラは続けた。
「私はフラウディアさんのことがすっごく気に入ってしまいました!
だから、フラウディアさんに悩みがあるのなら――私、なんでも相談に乗っちゃいますよ!
解決できるとは限らないですが、それでも――何か力になれるのでしたらすごく嬉しいです!」
えっ、そんな――フラウディアはアリエーラになんだか心が見透かされている気がしていた。
いや、そんなハズはないよね……?
あの後、リリアリスは単独でアリエーラのもとへとやってきていた。
「前はごめんね、わざわざガレアのことを助けてもらったのに、まともに話もせずに帰らせちゃったわよね。」
アリエーラは気さくに答えた。
「いいんですよ全然。
あの時はルダトーラもアルディアスも、それからルシルメアもガレアだってゴタゴタしていたじゃあないですか?
実はクラウディアスも結構大変だったんですよ、ルシルメアとアルディアスのガレア排斥への対応で。
ほら、あの政策の背景って本土軍がクラウディアスを襲撃するための一環だそうじゃないですか、
だから、こっちでも一時的に警戒を強めていましてね、外国との交流を一時的にストップさせたこともあるほどです。」
リリアリスは頷いた。
「へぇ、クラウディアスも大変だったのね、そんなことまでしてたなんて、
流石はクラウディアスの影の大ボスというだけのことはあるわ――」
リリアリスはアリエーラを茶化すように言ったが、
「でも、真の影の大ボスであるリリアさんの思惑通りに事が運んでいますよね?」
アリエーラの仕返しが待っていた。
「あなたにはかなわないわねぇ――」
そしてアリエーラはリリアリスにズバリ話をし始めた。
「ところで、リリアさんたちが来る前にティレックスさんとヒュウガさんが先にいらっしゃいましたよ?」
「まあ――そうだよね。なんか言ってた?」
「いえ、特にこれといった話は。だけど少し様子が変でしたね――」
するとリリアリスが言うよりも先にアリエーラが言った。
「フラウディアさんのことですか?」
リリアリスは口をつぐんでいた。
しかし、伝えたくないということではない、この2人の意思はシンクロしているため、
単に言うことがはばかられるということである。
ということはつまり――
するとアリエーラは何か閃いたようで――
「リリアさん、あの娘は私に任せていただけますか?
リリアさんは何でもかんでも背負い込みすぎていて、自分のことでさえも大変だというのに――」
アリエーラはリリアリスの表情を見つつ、さらに続けた――
「……わかってます、思い出したくもない過去を思い出してしまったんですよね、
今まで涙をずっとこらえていたのはわかっています、スレアさんとの件からですよね?
前にも言ったじゃないですか、私の前では遠慮は要りませんよ?
さあ、たくさん泣きましょう、私も一緒にたくさん泣きますから――」
リリアリスとアリエーラは一緒に涙し、そして、そのままお互いに抱き合っていた。
「えっ、リリアとアリ!? どうして2人共抱き合って泣いているの?」
フロレンティーナは2人のその光景を見ながら不思議に思っていた。
フラウディアとフロレンティーナがその場に来たのでリリアリスは2人を促すと、そのままアリエーラの前に連れてきた。
「それにしてもお2人とも本当に美人で可愛らしい方ですよね!」
アリエーラはフラウディアとフロレンティーナを褒めていると、
フラウディアとフロレンティーナは照れていた。
改めて、アリエーラは他愛のない話……リリアリスとのシンクロの話をすると、フロレンティーナは訊いた。
「リリアとアリがつながっている……?」
やはりその点が気になると言えば気になるのだろう、当然の質問である。アリエーラは答えた。
「言葉の通り、ですね。
私たちもわからないのですが、お互いの意識を一部共有している感じなんです。
だから、お互いに考えることがわかることもあったりするんですよ。」
リリアリスが付け加えた。
「それに、お互いの気持ちもわかるから思いやることもできるわね。」
「そうですね! そんなことが自然にできるのですから私は幸せです!
彼女とつながっているからとっても幸せなんです!」
さらにアリエーラは話を続けた。
「そういうことですので、塔の上での話は私もある程度把握しています。
それは多分、何をどうしても一人で抱え込んでしまう問題だと思うんですよね、
そもそも、個人的な問題なのでそうならざるを得ない点は否めませんが。
それでも――やっぱり一人で抱え込まないで、話をしてほしいですね――」
と、アリエーラはフラウディアに対して優しくそう言った。
だが、彼女は――口をつぐんでいた、当然のごとく言いたくなさそうである。
それを察したアリエーラ、
「いいんですよ別に、言いたくなければそれでも。
気持ちの整理というのは必要なことです、それで解決できればいいのですが、
できなければ――いつでも相談に乗りますよ?」
それに対してしびれを切らしたフロレンティーナが言った。
「じゃあ、せっかくだから私の悩みでも聞いてくれるかしら?」
アリエーラは笑顔でにっこりと返した。
「私、ディスタード帝国の生物兵器として生きてきたのよ。
それで多くの人を殺戮したり、戦争の傷跡を残してきたのよね。
でも、今は改心してる――いや、改心してると思いたいの。
だけど――世の中、やっぱり”お前は生物兵器だ”なんていうレッテルを張られて恨まれたりすることもあるのよ、
本当に困ったわ――」
それはまさにフラウディアの今の心境を代弁していることだった。
いや、スレアの背景を知らないフラウディアに直接刺さるものではなかったが、
少なくとも、フラウディアが今直面している悩みとスレアの背景を知ったフロレンティーナとしては気にしていることと言えば気にしていることである。
だが、フロレンティーナは先ほどの話にもある通りすでに割り切っているため、彼女自身が悩んでいるわけではなかった。
とはいえ、フラウディアはフロレンティーナが切り出したこの話に対してどう思うのだろうか。
「うーん、確かにそれは……難しい問題ですよね、
戦争に従事して母国のために戦ってきたのに逆に恨まれる立場になるなんて――世の中理不尽ですよね。
でも、これって残念ですが、なるようにしかならない問題ですよね――」
やっぱりそうよね、フロレンティーナは頭を抱えながらそう思っていた。
アリエーラはさらに続けた。
「でも――それについてはどうしたらいいのか道を示していらっしゃる方がここに2人いますよね!」
2人!? いや、それだと他はにいないではないか。