リリアリスが戻ってくると、ユーシェリアとシェルシェルがフラウディアをなだめていた。
それとは別にフロレンティーナとラミキュリアはリリアリスの元へと近づくと、
そのままフラウディアたちのいるところから離れて話をした。
「フラウディアはどう? 元気を取り戻せ――るわけないわよね……」
リリアリスはため息をついていた。
「そうですね、こういうのは時間が解決するのを待つしかないと思いますね――」
「あの娘は自分でこれまでしたことを背負っているからね、だから傷もかなり深いと思うわ――」
ラミキュリアとフロレンティーナはやはりフラウディアを心配していた。
「心っていうか、実際には心身共にってところよね。
そうなると事と次第では――あまりよくない結末になることもあり得るわね、それだけは何とかしないと――」
リリアリスがそう言うと2人はため息をついた。
「ところで、スレアさんはどうでした? リリアさんのことですから話を聞きに行ったんでしょう?」
ラミキュリアがそう言うがフロレンティーナは――
「あいつ、私嫌いだわ。
フラウディアにあんなこと言うなんて!
あんなこと言うやつ、いなくなってしまえばいいのに!」
スレアに対して怒りを感じていた。しかしリリアリスは――
「まあ、そう言わずに聞いて頂戴。
確かに、スレアの言ったことは酷いかもしれないけれども、彼には彼なりの考えがあったのよ――」
リリアリスは2人にその話をした。
「えっ!? フラウディアが親の仇!?」
そう言ったフロレンティーナに対してリリアリスは注意を促した。
「あっ――そうね、フラウディアには聞かれたくないからね。
でも、そう言うことになるとちょっと話が変わってくるわね――」
フロレンティーナはそう言うとさらに暗い表情で話を続けた。
「確かにそういうことになると――私にも覚えがあるわね。
それこそ誰かの仇なんていうことになると、
私だってフラウディアみたいにいつあんなこと言われてもおかしくないからね――」
リリアリスはそのままずっと西の空を眺めていた。ラミキュリアはそんな彼女を心配していた。
「ど、どうかされましたか?」
リリアリスは空を眺めたまま答えた。
「それを言ったら私も同罪よ。私だってこの戦争に手を貸しているんだもの。
もし、不必要に命を奪っていたとしたら――いえ、考えただけでもぞっとする。
そして、いずれかは親の仇なんていう相手が現れたら――
私はそいつのために何ができるんだろう、時々考えることがあるわね。
でも、恐らくだけどできることなんてないのよ。
だって、戦争なんだもの、自分を美化したいわけでもないけれども、
それでも……誰かが何かをやらないことにはずっと戦争なんていう地獄が続くの、
私としてはそっちの方が……つらいよ――」
それに対してフロレンティーナがリリアリスの目を見つめながら言った。
「そうよね、戦争が続いている方がつらい――
私もフラウディアもそんな戦争の道具として生み出された兵器、
兵器として存在しているのはつらかった!
そうなのよ、戦争は終わらせるべきもの、終わらせなければいけないのよ!」
個人ではいつまでも戦争が続くかもしれない、
親しい者を失ったことによりいつまでもつらいことが続くのである。
それでも、ディスタードのような新たな被害者を生むような存在をいつまでも野放しにしておいてはいけないんだ。
「だから――被害者が現れてしまったことについてはどうしようもないけれども、
私たちにできることは新たな被害者を生む前に戦争を終わらせることしかないのよ――」
リリアリスがはっきりとそう言うと、
「そうよ! ディスタードなんて組織、許すことなんてできないわ!
私もフラウディアもラミキュリアもスレアも――こんな被害者、これ以上出すべきではないわ!」
フロレンティーナもそう言い、
「私たちの力、見せつけましょう!
もうこれ以上、本土軍を好き勝手させるわけにはいきません! ですよね? リリアリスさん!」
ラミキュリアがそう言うと、
「ええ、もう勘弁ならないわ。本土軍が来たら容赦なくぶっ飛ばしましょう。
もちろんできるだけ上を狙うのよ、いいわね?」
リリアリスがそう言った、あくまで”ぶっ飛ばす”という点がリリアリスらしいところなのかもしれないが――
フラウディアが落ち込んでから30分が経ったが、彼女はようやく立ち上がった。
「もう大丈夫なの?」
フロレンティーナはそう訊くとフラウディアは答えた。
「ごめんなさい、本当は全然大丈夫じゃあないんです。
でも……いつまでもここでこんなことしている場合ではないですよね、
せっかく楽しみにしていたクラウディアスなのに――」
確かに、楽しみにしていた夢の都でこんな目に合うのはなんとも言い難いことである。
「こういう場合にうってつけの人物がいるのよね、私はいつも助けられている。
フラウディアにとって助けになるかはわからないけれども、会いに行ってみない?」
リリアリスがそう言うとフラウディアは頷いた。
「そうですね、例の方ですよね!
気晴らしって言ったらその人に失礼かもしれませんが、でも――」
フラウディアは悩んでいるとリリアリスは頷いた。
「いいわよ、気晴らしでも。
理由は何でもいいから会いに来てくれたら喜ぶわよ、きっと。」
その人物は5階のテラス――その場所はもはやお馴染みではあるけれども、
そこのベンチに座って本を読んでいた。すると――
「リリアさん! あの時以来ですね!」
その女性はリリアリスに向かってそう言うと、彼女と抱き合っていた。
そう、何を隠そう、彼女こそがクラウディアスに鎮座する伝説の美女その人であった。
「だから伝説の美女っていうのはおやめくださいな! リリアさん!」
「いいじゃないのよ、こうしてリアルな伝説の美女のご尊顔をみんなで見に来たいって言ってるんだからさ。」
リリアリスがそう得意げに言うと、その周りは――
「えっ!? ウソでしょ、本当に世の中にこんな娘がいるの!?」
と、フロレンティーナは口を開け、手で押さえていた。
そう、誰しもがその伝説の美女に見惚れていた……全員女性のハズなんだが。
「こ、この人が、アリエーラさんという方なんですか!?」
フラウディアも伝説の美女の美貌に恐れおののいていた。
「わあー! いつ見てもやっぱり素敵だなー! アリエーラお姉様!
プリズム族でもこんなに綺麗な人、なかなかいないよ!」
既に彼女を知っているシェルシェルはもはやアリエーラという女神を崇拝しているレベルだった。
「だよねー! 私も大好きー! アリエーラお姉様ー♪」
ユーシェリアも興奮していた。
「アリエーラお姉ちゃん……抱っこ――」
カスミもどさくさに紛れて抱っこをせがんでいた。
「すごいです、流石はクラウディアスですね……。
シャナン様に引き続き、こちらの方も話で聞いていた以上の方ですか、まさに不思議王国ですね――」
ラミキュリアもアリエーラの存在にはやはり特別感を抱いていた。
「ま、つまりこういうことよ。そろそろ観念なさい、アリ。」
リリアリスに対してアリエーラは答えた。
「わかりました、それなら望むところです。
ですが、それを言うのならみなさんはそれ以上ということですよ?」
アリエーラはリリアリス張りに得意げになっていった。
「いや、だから、違うんだってば――」
リリアリスは悩んでいた、彼女を伝説の美女と言いくるめるのは無理なようだ、当然だが。