癒しの妖獣と戯れた後、そのまま癒しの妖獣を連れたまま2階へと赴いた。
その際に先導したのはリリアリスではなく癒しの妖獣ことカスミだった。
「ったく、あそこまで案内しといて階段の場所忘れるってどういうことだよ」
ヒュウガはリリアリスにもんくを言っていた。
「だって、そもそもお城の階段なんて使ってないんだもーん♪」
リリアリスは可愛げにそう言い放った。
それに対してフラウディアは、だったら階段を使わずにどうしているのか、
上の階には行ったことないのか訊いた。
その問いに対してヒュウガが皮肉を言うように答えた。
「この女にはそもそも”階段”が何のために存在しているのかわかってないんだよ。
理由は至って簡単、そもそも高低差なんていうもの自体がこの女にとっては障壁ですらないからな」
高低差が障壁ですらない? しかし、それに対してリリアリスが答えた。
「ヒー様ったらまーたずいぶんなことを言ってくれるじゃん。
まあいいや、せっかくだから実演して見せてあげた方が早いわね。」
するとリリアリス、おもむろに――
「ちょっと身体貸してね。」
フラウディアをお姫様抱っこすると、階段のところにある吹き抜けを利用して一気に跳び上がった!
「えっ!?」
フラウディアは流石にそれには驚いた、まさか人一人抱えて跳び上がれるほどの能力があるなんて、しかも――
「一気に3階まで!?」
リリアリスは得意げに言った。
「本当は5階まで上がりたかったけれども、まずは3階にいる、ある御仁にあいさつしに行かなきゃいけないからね。
ちなみに2階は騎士や兵士たちの宿舎でしかないから、特段見に行く必要はないわよね。」
リリアリスの跳躍力には驚かされた。
「すごいですね! まるでヴァルキリーのようです!」
ヴァルキリー……リリアリスはその言葉に反応した。
言われてみれば確かに、そういう称号を得たことがあった気がする、
それはどうやるんだっけ、リリアリスは考えていた。
「どうかされました?」
フラウディアはリリアリスの表情を見ながら訊くと、リリアリスは我に返った。
「あ、うん、ちょっと考え事。」
やはり”ネームレス”というのはいろいろと抱えている悩みも多いんだなとフラウディアは思った。
そこへ他の7人が駆けつけてきた。
「要するにこういうことな。
だからいつも面倒臭がって部屋の窓から出入りとか平気でするんだこの不良女」
ヒュウガはリリアリスに対してそう皮肉ると、リリアリスは可愛げに「てへぺろ♪」と言っていた。
リリアリスはちょくちょくこの手のしぐさをすることがあるのだが、
言ってもリリアリスがする中でも案外可愛い仕草だったりするので女性陣には受けが良いのだが、
男2人はただため息をついて呆れているだけだった、あくまで受けがいいのは女性陣のみ……。
だけど部屋の窓から出入りとか平気でするといえば――ティレックスにはもう一名ほどそれの心当たりがあった、
弟子は師に似る――悪いところばかり似るのも考え物である。
ということで、次はクラウディアス城内の3階を歩くことに。
3階以降は基本的にお城の臣下などの重鎮たちが使用する部屋などがあるため結構重要な場所である。
「本日はいい日ですね。
こうして晴天にも恵まれ、久しぶりにあなた方に会い、
そして、新たなお客人を招き入れることができるとは私もとてもうれしゅうございますね」
と、その人物は3階のテラスから空を仰ぎながらそう言っていた。
その人物はリリアリスたちのいる方へと向き直りながら態度を改めて言った。
「みなさん、お久しぶりでございます。
リリアリスさん、ティレックスさん、ユーシェリアさんにヒュウガさんとシェルシェルさんまで。
それからご友人の方々、初めまして。
私はクラウディアス255世リアスティンの代より王国騎士団王室特務隊長の任を務めさせていただいております、
シャナン=レックフォードという者でございます、以後、お見知りおきを――」
シャナンは畏まりながらそう言った。
だが、そんなシャナンに対して初見3人組が即行で反応した。
「えっ!?」
「あら!?」
フラウディアとフロレンティーナはその男の名前を聞くとともに、その風貌にとても驚いていた。
「ウソ!? やだ!? 本物!?」
話だけ聞いたことがあったラミキュリアは嬉しそうにしていた。
そんな彼女らの反応に対してリリアリスが得意げに楽しそうに話した。
「シャナン=レックフォード、知っていると思うけれどもまたの名を”蒼眼のシャナン”、
またの名を”ウーマン・キラー・シャナン”とも言うわね♪」
そう言われたシャナンは苦笑いしながらリリアリスに言った。
「……いやだなぁリリアリスさんってば、揶揄わないでくださいよ。
別に私はそう言うつもりでは――」
するとその時、フラウディアが――
「!? ちょちょちょっと!」
リリアリスはいち早く反応し、フラウディアの身体を抱え上げた。
フラウディアは両手を胸の上で組んだまま気を失ってしまった――。
「えっ、どうかされたのですか!?」
シャナンが慌てているとリリアリスが答えた。
「シャナンのこと見つめたまま”イケメン”って言いながら卒倒したわよ。
だから言ったじゃあないの、あなたは”ウーマン・キラー・シャナン”だってね♪」
最後あたりは得意げに言ったリリアリス、フラウディアを抱えていた。
「そっ、そんな、卒倒され――てしまったからにはどう弁明することもできませんね、
本当に申し訳ないです――」
「謝るんならこの娘が目覚めてから言ってあげなさいよ。
それとも王子様の目覚めのキッスでもしてあげる?」
「い、いえ、流石に女性にそんなことできるわけ――」
シャナンとリリアリスはそんな会話をしていた。
ユーシェリアはにこにこしながらティレックスに――
「シャナンさんって本当にイケメンだよね♪」
そう訊くが、彼に言っても当然のごとく、
「まあ、そうだな」
やはり関心を示さず、
「またここで小一時間時間を潰すことになりそうだな――」
ヒュウガもこの状況にはもはやお手上げだった。
「えっ!? 噂に聞く”蒼眼のシャナン”ってこんなイケメン戦士なの!?
やだ、もうちょっとちゃんとした格好してくればよかったわ――」
フロレンティーナは楽しそうにラミキュリアと話をしていた。
「はい♪ どういう方かお話だけなら何度か伺っていますし、
お写真もいただいておりますが、やっぱり本物はもっと素敵ですね♪」
ラミキュリアも楽しそうだった。これによりシャナンのファンクラブ会員が増えたことは確実である。
「シャナン様♪ 今度デートしてくださいね♪」
シェルシェルも楽しそうだ。
「シャナン、イケメン、私も好き。今度抱っこする」
セリフからはわかりづらいが、カスミも興奮していた。