一方で――
「ねえティレックス♪ 可愛いでしょコレ♪」
ユーシェリアのツインテールもミスリル繊維の赤いリボンで結わえており、女子力を高めていた。
「そうだな、可愛いな。でもなんでわざわざそんなのにミスリルなんか使うんだ?」
そんな彼に対してユーシェリアは頭突きをした。
「痛ってー!!」
ティレックスは頭を押さえながら悶えていた。
「なっ、なんだよ、一体なんなんだよ!?」
ユーシェリアは嬉しそうに答えた。
「私、これのおかげで結構戦場を駆け抜けてこれたんだよ♪」
「こ、これのおかげってどういう意味だよ――」
「お姉様に言わせると、これで頭の防御力だけは完璧だから、ちょっとやそっとの攻撃を受けても平気みたい」
そ、そういうことか――理解したティレックスだった、それっていうのはつまり――
「さっきのおねーさんのファッションの話の延長線上にある話――」
頭部は防御フィールドに覆われ、まるで甲冑の兜のような強度を保つようになっているのだという。
「顔は女の子の命みたいなもんだからね♪」
なんでもいいが、女子の話ばかりでだんだん飽きていたティレックスだった。
そのためか、ヒュウガは既に机の上に突っ伏し眠っていた。
入室可能時間が過ぎると参加者が次々と戻り始め、
おねーさんの周りには女子の人だかりが。
何やら話をしているようだったが、当然、男性陣にはほぼどうでもいい話ばかりである。
でもまあ、これはこれで彼女の人気具合がよくわかるというもの、
それはそれでなんとなく理解できているティレックスとヒュウガだった。
「リリアさん――どこに行っても女子にすごい人気だなぁ……」
ティレックスは唖然としていた。
「ある意味、男みたいな女だからな。
性別女だがカテゴリ男、見た目女だが中身イケメンとは結構ネタになっていることだな」
ヒュウガに言われるとティレックスは共感していた。
というか、以前にリリアリスと話をしていたことでもあった。
「で、反対に女みたいな男がリファリウス――」
ティレックスはそう言うが、ヒュウガは否定した。
「あいつが? そうか?」
ヒュウガはそう思わないのか?
ティレックスは改めてそう言うとヒュウガは話を続けた。
「お前にはそう見えるってことか、
まあ――それはそれで一つの見方だからそう思うのならそれでいいんじゃないのか?」
なんだか釈然としない言い方、だったらお前はどうなんだ? ティレックスはそう訊いた。
「あの女が男みたいな女だったら、あいつも男みたいな女だな」
えっ、どういうことだ!? つまりはリファリウスも女ってことに――ティレックスはそう訊き返した。
「要はあの2人は本質的に同じやつだってことが言いたいだけだ。
だから、片方が男みたいな女だったらもう片方も男みたいな女だし、
片方がその逆ならもう片方も同じく逆と、それだけのことだ」
言われてみれば確かにその通りだった、どちらも性別が違うだけで似たようなキャラ……いや、本質的に同じキャラ――
そう言われてみればしっくりと来るところがあった。
そして、中休み後の待ちに待った2本目のPVとその後の件、その内容が何人かの者に改めて奇跡を見せつけるのである。
ルーティスでの一件を終えた一同、何気に予定が結構カツカツらしく、
講義を終えると寄り道することなく真っすぐ船へと戻り、舵を切った。
そして、その行き先は――フラウディアとフロレンティーナの2人はとてつもなくワクワクしていた。
「どうしよう、本当に楽しみ――」
「ホント、楽しみね! どんなところなのかしら――」
そう、2人はルーティスで滞在した際、これからどこに行くのか、その本当の目的地を知ってしまったのだ。
講義の中でも目的地について何度か触れられてはいたのだが、
次にどこに向かうのか聞いたのは講義が終わった直後のことだった。
あまりのインパクト故、2人は言葉を失い、改めてどこへ行くのか訊き直したぐらいである。
「あら? そういえばラミキュリアも初めてだったっけ?」
リリアリスはそう訊くとラミキュリアは答えた。
「ええ、私も何度か現地の方々と遠距離でお話をしたことはございますが、
行くのはこれが初めてとなりますね、実際にはどんなところなのでしょう――」
彼女もなんだか楽しみにしていたようだった。
なお、ラミキュリアはどこに行くのか最初から知らされていたようだ。
「多分、知らない人にとってはとても驚く場所だぞ。
俺としてもディスタードとあそこ、どっち取るかって言われたら間違いなくそっちのほうだな。
たとえガレアと言われてもな」
と、ヒュウガが言った。
その意見に対してティレックスとユーシェリア、そしてシェルシェルとリリアリスも同感だったらしく、頷いていた。
そんな4人の様子に対し、知らない3人はさらに期待を膨らませていた。
そして目的地に着くまでの間、8人はプレイ・ルームで時間を潰していた。
頃合いを見計らって抜け出したリリアリスはその目的地に近づくと手動に切り替え、
7人に到着を促した。
「もうじき着くよ。」
目的地に大きな期待を寄せていた3人は慌ててプレイ・ルームから飛び出し、海の向こうを眺め始めた。
その後ろからそれ以外の4人がゆっくりと出てきて同じように海の向こうを眺めていた。
そう、目的地は前回のティレックスとの船旅同様、例の場所である。
海の向こうには”夢にまで見た桃源郷”がある大陸があり、その玄関港がはっきりと見えてきた。
リリアリスは巧みな操舵技術を駆使し、
その大陸の港にあるドッグ内へと進入、”夢にまで見た桃源郷”のある地に到着した。
リリアリスが先んじてロープを持ちながら岸壁側に跳び上がって上陸すると、ビットと呼ばれるところに縄を括り付けた。
そして、再び船に戻ると、操舵ユニット内で何かを操作して全員に促した。
「さあ、着いたわよ。」
どうやら、船のタラップの展開と海に沈めたアンカーのワイヤーの巻き出しを止めたようである。