ということで、妖魔4人組もセーラー服姿へと変貌していた。
「わぁー♪ これがルーティス学園のセーラー服なんですねー♪ カワイイ!」
「これがセーラー服というものなんですね! すっごくカワイイ!」
フラウディアとシェルシェルはその場でくるくる回りながら嬉々として喜んでいた。
「2人ともカワイイわね! 気に入ってくれたかしら?」
リリアリスは得意げに言うと、フラウディアとシェルシェルは嬉しそうな笑顔で応えた。
「でも、年甲斐もなくこんな姿をするのって――ちょっと気が引けますね――」
ラミキュリアはそう言うが、リリアリスは楽しそうに言った。
「何よ、プリズム族なんだから余裕じゃない。
どこからどう見ても背徳感満載、犯罪の香りしかしないわよ。
ねぇ、ヒー様もそう思うでしょ♪」
「まあ、プリズム族は年齢の取り方は他種族に比べると緩やかで、
特に10代後半あたりから30代前半あたりまでの姿を長らくキープし続けるからな。
だから、十分に似合うんじゃねーのか?」
「もー♪ ヒー様ったら照れてるしー♪」
リリアリスは楽しそうに言うが、ヒュウガは冷めていた。
「でも、似合うのでしたら嬉しいですわ。
だって、私、こんな服が着れる日が来るなんて嬉しいのですもの!
今まで着るようなチャンスなどありませんでしたからね――」
ラミキュリアは嬉しそうだ。
「私も嬉しいわね、本土軍の頃もセーラー服と呼ばれるものは着させられていたけれども、
あんなの本当のセーラー服じゃないわ!」
フロレンティーナも気分上場だった。確かに、あんなものはただのコスプレである。
だがしかし、妖魔女4人組がセーラー服を着ると、それが18禁セーラー服でなくても18禁の香りしかしてこないのもまた事実であった、
確かに背徳感満載で犯罪の香りしかしてこない……。
「元々ルーティスのセーラー服って胸の大きさはあまり気にならないような調整入っているんだけど、
それでも4人とも結構大きいからね、さらに加工して大きさがあまり気にならないようにしてみたのよ。
でも、スカートは短いほうが好みかなと思って詰めてあるんだけど――それでみんな気に入ってくれたんだって言うんだったら私も用意した甲斐があるってもんよ。」
リリアリスは得意げに言った。
「ヒー様もスカートは短いのが好みよね♪」
「さあな、知らんな」
「せっかくだから私の分も用意すればよかったわね。」
「講師として行くハズのお前までそれやったらダメだろう、何考えてんだ――」
ヒュウガは呆れながら言った。
「いいじゃないのよ別に。そうと決まったら早速――」
いや、マジかよ……ってか、そんな時間あるのかよとヒュウガは頭を抱えながらそう思った。
ということで、その日は例によって名物女講師による特別講義が開催されることとなっていた。
もちろん、その名物女講師というのは言うまでもなく――
「みなさんこんにちは! リリアリスです! みんな元気してるー?」
このお姉さんである。学生からの評判も厚い美人のおねーさんは男性陣からももんくなしと定評はあるハズだが、
例によってここでも”残念な美女”の地位を不動のものにしていた。
だが、そんなお姉さんを女バトラーの鑑にしたいという女性陣は依然として絶えることなく、
女性人気では問答無用のナンバーワンをキープしていた。
そんな彼女人気なのだが、使用される会場となる大講堂はルーティス学園内では最も広い部屋であり、
2,000人はくだらないであろう規模の人数が参加しているほどであった、開催するごとに人の数もうなぎ上り……。
そんな様子に最前列に座っていた初参加の妖魔4人組はとても緊張しており、
同じく、最前列で並んでいたヒュウガは呆れ気味、ユーシェリアはリリアリスの話に聞き入っていて、
楽しそうにしていた……ん? あれ? ティレックスは? ……ああそうか、つまりはそういうことだな。
そして、今回のリリアリスと言えばいつものワンピース姿とは打って変わり、チェック柄のスーツ姿に身を包んでいた。
トップスのスーツの丈は少々長めだが胸元にリボンを結んでおり、どことなくセーラー服を思わせるような見た目だった。
そしてボトムスはひざ丈程度でフロントスリットのスカートにパンプスと、エレガントで清楚な装いだった。
そんな姿をしたリリアリスに対して妖魔4人組とユーシェリアは嬉しそうな一方で、
ヒュウガは相変わらず呆れ気味であった、少なくとも悪いという意味ではなさそうだが。
そして、この講堂内においても――
「先生♪ 可愛い♪」
と、一部から黄色い声援が飛んできた、この学校の学生か生徒であることは間違いなさそうである。
「あら♪ ありがとう、みんな♪ 今日は珍しくオシャレしてきちゃった♥
つっても別にこれから彼氏とデートとか、そう言うわけじゃあないんだけどさ。
まあ、そんなわけで男性陣、いつまでも素敵なおねーさんに見惚れていないでさっさと講義を始めるわよ。」
いつもの軽快なトークは続く。
「今日もアシスタントとして義理の弟を連れてきたよ♪」
またしてもティレックスがアシスタントである、やっぱりな。彼は顔が引きつっていた。
「さぁてと、そういうわけだからさっさと始めるよ。
さてティレックス君、あれからどれだけ強くなったのか、おねーさんに教えてごらんなさいな♪」
やっぱり、そうだよな――ティレックスは頭を抱えて悩んでいた。
開始8分程度、特別な話をすることなく簡単な話から導入した後、
面倒を省くためか、リリアリスLv.29は魔法剣を使ってティレックスを秒殺。
リリアリスLv.29には全く歯が立たないティレックス――
「うん、まあ、よかったんじゃないの。
ということで、多分、共通の認識があっていない部分もあると思うから、
今のデモンストレーションに関して、とりあえず聞きたいことがあったらドーゾ♪ まずは質問ターイム♪
尚、今回の講義の内容についてはいつもの通り、アシスタントや学園関係者に対して話を通していないから、
アシスタントも含めて、聴きたいことがあったら遠慮なくドーゾ♪」
どこが良かったんだよ、笑い声だけが飛び交っている中、ティレックスはダウンしたままそう思っていた。
「あっ、そうそう、今のデモの被害者たるティレックス君のクレームについては一切受け付けないので、そのつもりでお願いしますね♪」
クレームを考えている暇すら与えられないのでそれはどうでもよかったティレックス。
やはり笑い声だけが飛び交っている中、ティレックスは起き上がりつつも、特に何も言わずに近くにある椅子へと座っていた。
質問は流石に人数が多いことから、例によって各々の端末からの入力で、
リリアリスはモニタ越しに確認している形式である。すると、
「おいおいおい、講義に関係する質問しろよ。なんだよこれ、今回も懲りずにハレンチな質問か?」
その質問内容一覧が、教壇上にあるスクリーンに映し出されると、笑いがどっと押し寄せてきた。
「あのさぁ、魔法剣に関する質問が4%って何よ。前回と同じ値をキープしてるじゃんか、おかしくね?
せめてもう少しぐらい増えなさいよ、一応魔法剣の講義のハズでしょ?」
会場の笑いは止まなかった。
「てか、残り96%全部が私のプライベートに関する質問って、
そんなにお姉さんのことが知りたい子が大勢いるのかしら?
まあ、そーゆーコトならいいケド、イケメンの素敵な大人になったらおねーさん、考えてあげてもいいわよ♥」
会場の笑いはさらにこみ上げてきた。さらにそのお姉さんのプライベートな質問について、
男女別で見てみると、女性は89%、男性に至っては94%がそうだった、この学園、相変わらずどうなっているのだろうか。
「冗談はさておき、知りたがりの子たちのためにおねーさんのこと、少しぐらい教えてあげるわね。」
また笑いが出てきた。先ほどよりも大きくはないけれども。それにしても――
「なっ、なんだろ、この流れは……デジャヴ?」
ティレックスは以前にも見たこの流れとこの光景について奇妙な感覚にとらわれていた。