輸送車が再び出発すると、女性陣6人はなんだか楽しそうに会話している最中、
男2人は隅っこで話をしていた。
「あれ? そういえば、あんたも一緒なのか?
あの女性陣に無理やり連れてこられてきたようだったが――」
それに対し、寝っ転がっていたヒュウガは起き上がりながら言った。
「ん? ああ、そういえば今回の目的はまだ知らされていないんだっけな。
これから要するに――まあ、そう言うわけだ」
と、ヒュウガはこっそりと説明した。
「あ、そう言えばあのフラウディアさんって人、そう言えばそうだったな。
つまりはサプライズ?」
ティレックスは考えながらそう言うと、ヒュウガは答えた。
「イエス、そう言うことだ。
俺もご無沙汰気味なんでな、あんなところにいたって息が詰まるだけだ、
昔に比べればだいぶ環境もよくなったけれどもな。
お前もたまには羽を伸ばしてみるのもいいんじゃないか?」
「というかそう言えば、最近は定期的に戦ったりしてそれなりに羽伸ばしたりしている気が――」
一方で、女性陣6人は話をしていた。
リリアリスの胸の中には2人、ユーシェリアとフラウディアがぺったりとくっついて甘えていた。
「わぁい! リリアリスお姉様!」
「リリアリスお姉様! 私、だーい好き!」
「まったく、しょうがない娘たちね、本当に可愛いんだから、もう♪」
リリアリスは得意げにそう言うと、フロレンティーナが言った。
「うふふっ、でも本当によかったわ、私たちのことをガレアで引き取ってくれるだなんて――」
それに対してリリアリスは2人の甘えん坊の頭を撫でながら答えた。
「いいのいいの、気にしなくてもいいのよ。
このガレアでは本土軍やマウナ軍の被害者だった女性兵士を集めているんだからさ。
んで、この管轄でガールズ・パワーを見せつけて世に知ら締めてやればいいのよ。」
そして、ラミキュリアが言った。
「それにしても――本土軍で女性が活躍できない理由が単に男尊女卑という理由だけでなく、
ベイダ・ゲナ個人の問題だっただなんて――」
ベイダ・ゲナは女嫌い、そういう理由だった。それに対し、リリアリスは――
「あれ、そういえばユーシェリアとシェルシェルって、
ベイダ・ゲナがどういう人物だったかって知らなかったっけ?」
ラミキュリアが言った。
「私も詳しくは存じておりませんが、確か、男性の方ですよね? それだけは知っています」
すると、フラウディアとフロレンティーナはため息をついていた。
「えっ、お二方、どうかされました?」
ユーシェリアは疑問に思っていた。それに対し、リリアリスは――
「まあ、男と言えば男なんだけれどもね――」
苦笑いしながらそう言った。
そう言うと、シェルシェルもユーシェリアもさらに疑問に思っており、首をかしげていた。
そこへ、フロレンティーナが言った。
「まあ、簡単に言うと――ほんの一部では”オカマ将軍”と言われていることもあるようなヤツよ。
つまりはそう言うことね――」
そして冷酷で残忍、非常に質の悪そうな性悪な人物だということが脳裏に過ぎったシェルシェルとユーシェリアの2人だった。
そして、それに加え――ラミキュリアが説明した。
「私もお目にかかったことはありませんが、以前にあの方の衣装だけを拝見させていただきました――」
ただ、そのサイズがキングサイズ――ということはつまり、ある程度は想像に難くないだろう。
そして、その話を聞いていたティレックスも驚いていた。
「えっ!? なあヒュウガ、今の話、マジか!?」
「マジだ。初見でもびっくりするぐらいの派手好きでインパクト抜群であること請け合いだ。
その上男好きだが女は極度に嫌っている、虐待を行ったこともあるぐらいな。
当然、直属の部下たちもそれについてはかなり深刻な問題と考えていて、常に肝を冷やしているほどだ。
だからあそこで女は絶対に出世できない仕組みになっているんだ」
そのヒュウガの話が聞こえていたラミキュリアとシェルシェルとユーシェリアは絶句した。
「な、なんだかいやなところだなぁ、本土軍って――」
甘えていたユーシェリアは体勢を整えながらそう言うと、
「ど、同感ですわ――」
ラミキュリアもそう言ってそれぞれため息をついていた。
「わ、私はアール将軍様一筋だから――」
シェルシェルは慌て気味に言った。
「それでフラウディアたちは男でいなければいけなかったんだ――」
ユーシェリアはそう言うと、フラウディアも体勢を整えながら言った。
「ええ――だけど、このガレアではそれが自由だということで、私はとても嬉しく思います!」
その話に対し、ティレックスは再びヒュウガに訊いた。
「にしても、プリズム族式性別適合術?
リファリウスからも聞いたけど、ほぼ本物の女性になれるようなすごい効果があるんだな、
フロレンティーナさんもフラウディアさんはまさにその恩恵を得ているって感じだ。
しかも、あのラミキュリアさんまでもがそうだっただなんて、俺全然わからなかったよ。
だから本当にすごいんだなって!」
ヒュウガは言った。
「フロレンティーナさんはラミア族だが――まあ、起きている現象は一緒だからこの際いいか。
ともかく、それはあんまり他言するなよ、本人たちは別に気にしちゃいないけれども、
それでも、人間ってのは弱い部分があって、その違いに対して優劣をつけたがる、それが実に面倒を生む部分だ。
あの騒動の後もその場に居合わせたほとんどの男共はフラウディアの誘惑魔法が効いているせいか、
彼女が女であるって信じて疑わない状態になっている、だから、あれはあのままにしておくべきだ」
そこへリリアリスが釘をさすように付け加えた。
「ふふっ、ヒー様ってば、いいこと言うじゃない、確かに、その通りよね。
さらに言うと、プリズム族式性別適合術ってのは元々プリズム族がプリズム族に対してやっていることであって、
他種族にやるのが目的でやっていることじゃないのよ。」
リリアリスの説明はさらに続いた。
そもそも論として、プリズム族式性別適合術をやった暁には基本的にはプリズム族になるわけだが、
つまるところ、自然の摂理に反している方法でプリズム族を増やす行為になるわけである。
だからこそ、プリズム族としても、他種族への手術については慎重な議論を重ねたうえで実施しているのである。
当然、それについてはラミア族も同様である。
「でも――私は、その上でプリズム族に選ばれたことをとてもありがたく思います」
「私もです、私も、”選ばれし者”だなんて言われ、光栄に思います。
彼女らのために、私は日々精進することを忘れません!」
「私もよ! 私もロミアンの命を粗末にしないため、彼女の分まで精いっぱい生きるわ!」
ラミキュリア、フラウディア、そして、フロレンティーナの3人はそれぞれ胸に手を当てながらそう言った。
「……なんか、俺、そういうつもりで言ったわけじゃなかったんだけど――」
「……俺も、こういう話になってくるとは思わなかった」
ティレックスとヒュウガは3人の決意を前にして圧倒されながらそれぞれそう言っていた。
「何よ、当人たちがいる目の前なんだからそれぐらい頭に入れときなさいよ。」
リリアリスがトドメに得意げな調子でそう言った、結果論でしかないが、確かにそうだったのかもしれない?