それから数日が経った。
この数日間、ガレアに直接本土軍が侵攻してきたのだ。
最初は本土軍の輸送船の座礁でしかなかったのだが、
次第にガレアが各国から排斥されていく流れとなり、国交が絶たれるように。
それにより、本土軍から存在意義を疑われると、ガレア解体を申し渡されることになった。
だが、それはガレア軍の反撃によって覆されると、本土軍のほとんどの重鎮たちは一斉に討伐され、
ガレア軍は息を吹き返すこととなった。
その流れの詳細についてはまた別のお話。しかし、
それによってガレア軍と本土軍との関係はもともとよくはなかったところからさらに悪化、
戦争の道へと突き進もうとしていた。
ガレア排斥の流れは収束し、
特に法律によってガレア排斥を決めていたアルディアスとルシルメアについては、
排斥法執行の必要性について見直しされることとなった。
アルディアスについてはもともとマウナからの解放に尽力してもらったこと、
そして、排斥法執行の立役者であるエリュラが本土軍の回し者であることなどにより執行停止に、
ルシルメアでは政治的には同盟を結んでいたものの、
それでも、今でも根強く反帝国派が残っており、排斥法執行無期限保留ということでなんとか決着させた。
ルシルメアでの排斥法執行の立役者であるチュリンカこと、フロレンティーナがおり、
彼女の力によって賛成多数で可決させていったのだが、
現行では法案はあえて消さないでいることで反帝国派にも納得させる、
事が起こればいつでも帝国を締め出せるんだぞというアピールをしているわけである。
まあ、それでも反帝国強硬派にはそこまで効果がないのは確かなのだが。
そしてある日のこと――ティレックスはガレアのアールのもとまでやってきていた。
「よくもまあ、うまくガレア排斥の流れを破壊したな」
ティレックスは関心しながらそう言った。
「クラウディアスとティルアにも尽力してもらったからね。
アルディアスはルシルメアよろしくレジスタンスを結成して水面下から頑張ったんだよ、
まあ、キミも知っての通りだけれどもね。」
アルディアスでは具体的にガレア排斥に伴って解体させられたルダトーラ・トルーパーズの団員を集め、
アルディアス解放軍を結成し、水面下で何とか頑張ったのである。
しかし、その中にはティレックスも知らない事実があった。
「青印の話を覚えているかな?」
青印と言えば――そういえば、以前にマウナ軍に買収されたアルディアスの有力者の家の話があり、
赤印がマウナ軍の敵、緑印がマウナ軍買収済、青がどちらかわからないというものがあった、それのことだろうか?
「実はその青印の中に、今回のカギを握る人物がいたんだよね、名をオルザードというんだけれども――」
ティレックスはその人を良く知っていた、というより、
アルディアスの議員の中でも変人で、かなり有名な人だった。
その人がどう変かというと、
「敬虔なエンブリアヌスだろ? それがどう関係するんだ?」
つまり、敬虔なエンブリス信者ということである。
彼の頭はエンブリス神こそが第一であり、アルディアスもディスタードもないのである。
それが何故、エンブリスではなくアルディアスに住み着いているのかがまったくわからないが、
だからこそ、マウナ軍も敵だか味方だか判断に困っていたのだろう。
(もしかしたら敵とみなされる可能性もあったのかもしれないが……)
しかし、それ以外では言っていることは至極真っ当であり、
アルディアスを担う者として問題ないと判断されたため、
マウナ軍から解放後のアルディアスを担う者の一人として抜擢された経緯があった。
「その、敬虔なエンブリアヌスってところを考えて、
つまり、彼にとってはエンブリスこそが絶対であり、他は敵も味方もないっていうことで決着したんだよ。
それなら信用に足るだろう、だからガレア排斥法の廃止のために頑張ってもらうことにしたんだ。」
つまりはその、マウナ軍から解放後のアルディアスを担う者の一人として抜擢された理由と同じかと、ティレックスは考えた。
まあでも、エンブリス教といえばこの世界のある意味中心となる宗教、
どの国もぞんざいに扱うことはできず、どの国にも大体エンブリアヌスがいたっておかしくはない。
そのルートで話をすれば、それに応じてくれる国はあるのだろう、
それによって、ガレア排斥解除の流れは一気に収まったようだ。
「その話に特に乗っかってくれたのがデュロンドって国。
あの国はエンブリス真教国なんだそうだね。」
と、リファリウスは調子よく言うが、ティレックスは疑問を投げかけた。
「で、その話っていつの話?」
「忘れた。」
「おい、忘れんな」