エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

エクスフォス・ストーリー 第3部 決着へ 第5章 深みへ

第62節 ラストバトル

 フェレアは拳を使い、ロバールの剣”魔剣グリフォン・ハート”をかわしながらロバールに攻撃を繰り出していた。 ほかの面々も、それをフォローするように加勢していたが、ロバールには歯が立たなかった。
「くくっ、弱い、弱すぎるぞ! これが忌むべきエクスフォスの力だというのか? 笑わせるな、エクスフォスの力は――」
 すると、ロバールは剣を振りかぶった。
「こういうものを言うのだ!」
 ロバールはその力を解放した。ロバールの媒剣術は複合属性系で、それを一度に放出するタイプだ。 一度に複数の力が襲い掛かり、すべてを一度に吹き飛ばした!
「この虫けら共が! その程度の技でこの私を倒せると思ってか! 身の程を知れ!」
 ロバールはさらに連射した!
「くっ、なんという力だ! あれだけの技を喰らったら!」
 ラスナはそう言いつつ、急いで防御魔法を展開した。 しかし、相手はあのロバール、どれだけ時間を稼げるのだろうか、非常に厳しい状況に追い込まれていた。
「ティレックス! ”あれ”を使うんだ!」
 ラークスが思い付き、ティレックスにそう言った。”あれ”とは、月読式破壊魔剣のことらしい。しかし――
「ムリだ、打点が小さすぎる!  命中点を正確にコントロールできないから、あの動き回る筐体で”あれ”を使うのは無理だ!」
 確かに、使うにはリスクが大きすぎるし、失敗した時点でティレックスが犠牲になるのは必至である。
「どうした! 切り札と訊いてあきれるぞ! それで切り札と言えるのか!?」
 ロバールはラスナの防御魔法をものともせず、さらに立て続けに技を放ち、 一行に攻撃をし続けていた。このままではマズイ――

 ラスナの魔法の効果が切れそうになったところで、ロバールは攻撃をやめた。
「ちっ、どうやらマトモに相手をするほどでもなさそうだ、 今までやってきた連中の中では最も弱いと来たもんだ、 威勢だけはよいようだが――雑魚にもほどがあるだろう」
 くっ、こいつ、言わせておけば――アーシェリスはよろけながらそう思っていた、 防御魔法越しではあるが、それなりに攻撃を受けて体力を奪われていた。
「ラスナ――先生? フェレアさんが切り札って、どういうことなんだ? 今のじゃあよくわからなかったんだけど――」
 ティレックスは息を切らしながらラスナにそう言った。ラスナも息を切らしていた。
「具体的なことは訊いてないんだが、恐らく、複合属性の線だろう。 ”魔剣グリフォン・ハート”は属性の力を増幅する効果を持っている、 だから、複合属性を持つ技をあの剣で使用することで、非常に強力なパワーを引き出せるようになるらしい、 というのがアールの所見だ」
 複合属性には複合属性で対抗することで、相手の技に対抗できるハズ、 幸い、フェレアさんは氷・土・闇と、複合属性の使い手である。 だから、複合されている属性の技を受け流すことはたやすいが――
「でも、それってじり貧じゃありませんか?」
 と、ティレックスはさらに追及した。 確かに、それでは受け手にしかならない気がする。 そもそも、属性の数で言えば、相手のほうが扱う属性が5種類と多く、 それ以上に増幅されて発する以上は向こうのほうに分があるようにしか思えない。
 すると、ティレックスは考え直し、妙案を思いついた。
「いや、待てよ!? まさか――」
 どうする気だろうか?
「なるほど、切り札、なんとなく意味が分かった気がする。 アールの性格上、こうなることは想定通りだったということだろうな――」
 アール将軍の性格上って――つまり、あいつの言葉のとおりではないということになりそうである。

「なんだ貴様は。確か、ルダトーラとか言っていたようだが」
 今度はティレックスがロバールの前に立ちはだかった。
「ああ、そうだ。今度はこの俺が相手だ」
「素直に引き下がっておればいいものを、こいつらに加勢したばかりに命を落とすことになろうとは――」
「勝手に殺すな。悪いが、俺はここで死ぬつもりはない、やることが山ほどあるからな」
「くははははは! そうかっ! ならば、その手間も省いてやろう!」
 ロバールは再度、自らの技を放った!
「どうだ! 手も足も出ないだろう!」
 すると――
「ああ、確かに、手も足もでないな!」
 なんと、ティレックスは、自らの武器を盾に、その攻撃をいともたやすく受け止めていた!
「なっ、何故だ!? どうなっているんだ!?」
 ロバールは驚いていた。
「くっ、かくなるうえは! これでどうだ!」
 ロバールはさらに力を増幅してきた! これは流石にまずい!
「なんの、これしき!」
 しかし、ティレックスはそのまま攻撃を受け止めていた! あれだけの攻撃に耐えるだなんて――
「おい! 見てみろ! ロバールの攻撃が、ティレックス君の単属性技だけですべて受け流されているぞ!?」
 ラスナは驚きながらそう言った。 しかし、ロバールは複合属性であるのに対し、 ティレックスは単属性の技を用いて受け止めていたことについては不思議以外の何物でもなかった、 さっき話をしていたこととは違うようだが?
 しかし、それの解となることについて、ユーシェリアが気が付いた。
「武器だよ! 見てあの武器、お姉様製だよ! お兄様製かな?」
 リリアリス製かリファリウス製かはこの際どっちでもよかった。 確かに、ティレックスが使っている武器は、リリアリスから譲り受けたものであったが、それがどういうことかというと、
「お姉様が作った武器だから、お姉様の能力上、魔法剣が馴染みやすいんだよ!  だから、たとえ単属性でも、威力を発揮できるんだよ!」
 属性の数など関係がない、つまり、そもそも出力の問題だったということである。であれば――
「私の剣じゃあダメかな、もうちょっと、出力高められる剣じゃあないと――」
 ユーシェリアは自分の剣を確認しながら言っていた。 ロバールの攻撃はティレックスが受け止めている、 だからどこかにもう1本ぐらい、そういう都合のいい剣がどこかにあれば――
 誰もがそう思ったその時だった、そういえば――
「お姉様! 私の剣を使って、ロバールを倒して!」
 クレンスが自分の剣を、フェレアに差し出した! そうだあの剣、リファリウスが作った得物だったハズだ。
 ティレックスの言う通り、あいつはこうなることを見越してクレンスに同じ性質の剣を――まさか、 まさかそんなことは流石にないよな? いや、どうだろうか――

 クレンスはその剣をフェレアに委ねると、フェレアはその剣を振るい、媒剣の極意を発揮した。そして――
「ぐっ! なんだ、今のは一体――」
 ロバールはフェレアの剣の極意をまともに喰らっていた。
「よし、これならいけるぞ!」
 アーシェリスはそう叫んだ。
「姉貴のやつ、なんか滅茶苦茶なことする予感が――」
 フェリオースはそう言った。アーシェリスらはそういう人がほかにもいることを知っていた、 それは頭に”リ”がつくおねーさんだ、恐らく、フェレアよりも滅茶苦茶なんじゃないかと思われるけれども、 彼女も彼女でかなりの使い手であることを知っている面々は、知らない面々に対して注意を促していた。
 それに対し、ラスナとトキアは力を合わせ、慌てて防御魔法をティレックスに対して展開した、 ティレックスがそのままロバールの攻撃を剣で受け止めているからである。 そして、ティレックスの背後に他のメンツは慌てて引き下がり、戦いの経過を見守っていた。
「なっ、この私の剣が――この俺の剣が通じないだと!? そんなばかな!  伝説の”魔剣グリフォン・ハート”ではなかったのか!?」
 フェレアはさらに闇から生まれた極寒の息吹が鋭い剣を放ち、ロバールの極意と共に左肩を貫いた。
「ぐはっ! なんの、なんの――これしき!」
 ロバールは攻撃を一旦やめ、力をため、技を再び展開した!
「ちっ、これで終わりにしてやる!」
 しかし、フェレアの技が発揮されるほうが早かった。
「なっ、その技は、まさか――」
 フェレアは宙へと跳び上がり、周囲を巻き込むような驚異の渦でロバールを引き込み、 そして、とてつもない力と共にすべてを解放! 建物の壁ごと一気に木っ端みじんにした!
「こっ、この技は”ラウンド・ディザスター”――マスターしていたとは――」
 その極意はエネアルド島にあるすべてを一夜にして滅ぼしたといわれている伝説の技だった。 それにより、ロバールの身が無事に原型をとどめることはなかった。