ラクシスとクレンスは崩れ行く地下の階段を振り切り、なんとか地上階へと飛び出してきた。
すると、その場には、アーシェリスを前にして膝をついているフェリオースの姿が――
「クレンス!」
アーシェリスが2人の存在に気が付くと、フェリオースもそれに気が付き、首をやった。
すると、そこには――
「姉貴!」
フェリオースはお姉さんのもとへと慌てて歩み寄った。彼女はなんとか無事だったようだ。
ラクシスとクレンスは地下で起こったことについて、特にバディファについて話をした。
「バディファさん――どことなく、影を背負っている感じがしたんだけれども、そんなことがあったのか――」
アーシェリスは神妙な面持ちで、話を聞き、そう言った。
「無事だといいんだけど――」
ラクシスは心配そうにそう言った。
一方で、クレンスはフェリオースと一緒にお姉さんを心配していた。
「ほら、大丈夫か姉貴、水でも飲むか?」
フェリオースはクレンスから渡された水筒の水を渡すと、彼女はそれをゴクゴクと飲み始めた。
「どうだ? 落ち着いたか?」
しかし、彼女の返事は、非常にかすれた声で、何を言っているのかが聞き取れなかった。
「どうしたんだ、姉貴!?」
それに対してクレンスは言った。
「お姉さん、見つけた時から変なの。
なんていうか、まともに声が出ないというか、なんていうか――」
「声が出ないって!?」
彼女の喉には乱暴に包帯が巻かれていた。もしかしたら、喉は酷い状態なのかもしれない――
「くそっ、あいつらめ! アーシェリス、俺にも戦わせてくれ! やつらにはしっかりと借りを返さないといけないからな!」
フェリオースは怒り半分にそういうと、アーシェリスはややうろたえながら答えた。
「わ、わかった。でも、お姉さんはどうする――」
ところが、そのお姉さんはゆっくりと立ち上がり、フェリオースに向かって頷いていた。
「姉貴……わかったよ。姉貴も一緒だ、だからみんな、一緒に行くぞ!」
フェリオース姉のフェレアと共に2階へと駆け上がっていった。
「だ、大丈夫かな――」
クレンスはフェレアを心配そうに見つめていた。
2階に進むと、ルダトーラ組が魔物相手に戦いを展開させていた。
「魔力で操られている魔物だ、気を抜くなよ!」
ティレックスは駆け上がってきたエクスフォス組にそう言って注意を促した。
しかし、戦いはある程度終わっているようで、ほとんど収束に向かっていた。
すると、フェレアは周囲を見渡すと、その時はフェリオースの肩を借りていたのに、ゆっくりと自力で立ち上がった。
「お姉さん、無理しないで!」
クレンスは心配そうにそう言った、しかし、彼女の目は――
「クレンス、姉貴は本気だ。
姉貴は強いのは知っての通りだが、何故拉致されたのかがわからない。
だからここは、姉貴の気が済むようにしてくれないか?」
と、フェリオースは言った。
すると彼女はおもむろに、腕を布切れで巻いた。その状態で媒剣術を? はは、そんなまさか、アーシェリスはそう思った。
ところがそのまさかだった。
敵が出ると、拳に深淵の魔力を込め、そのまま真正面から敵を一撃で氷付けにし、敵を破壊していた。
「お姉さん、強すぎないか!?」
アーシェリスはフェリオースに慌てて聞いた。
「あれが姉貴の実力だ。
敵につかまっていた反動か、無茶苦茶イラついているみたいだから、気が収まるまでやらせといてほしい」
イラついていると無茶苦茶するやつといえばアーシェリスには心当たりがあった。
確かに、怖いな。弟いわく、姉は喧嘩も強かったらしい。
とりあえずフェリオースの言うとおり、気が済むまでやらせておくしかなさそうだ。
「それにしても、あんなにピリピリしているのも珍しいぐらいだな。
拉致されたんだから無理もないと思うけど――」
フェリオース自身も、自分の姉がここまでピリピリしているのは初めて見るようで、
フェレアは残っていた敵を片っ端から木っ端みじんにしていた。
「お姉さん、強いね――」
クレンスは苦笑いしながらそう言った。ルダトーラ組もその様子にあっけに取られていた。